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百ある世界の片隅で〜幼馴染みと共に世界を救う物語〜  作者: 若取キエフ
動乱の大監獄編 (コマチルート)
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22話 魔物の群れ


 エルマラントを出て半日が過ぎた頃、辺りはすでに夕暮れ時となっていた。


「今日はここで野営をしましょうか?」


 メヴィカの提案により、一行は近くの茂みに馬車を泊めて一晩を明かすことに。

 すると、メヴィカは馬車に積んでいたリュックから風呂敷のようなものを広げ、それは瞬く間に四畳半程のテントとなった。


「なんだこれ? これも異世界のアイテム?」


「私が自作した魔道具ですよ。中でお料理も出来ますし、簡易的な入浴も可能です。ちなみに魔物避けの効果もあるので寝る時も安心して下さい」


 ポカンと口を開けながら、コマチは魔法の力を改めて実感するのだった。









 しばらくテント内でメヴィカの手料理を食していると。


『そうですか、お二人ともどこか雰囲気が変わっていましたのでもしやと思いましたが、本当にこことは別の世界というものが存在するのですね』


 コマチのメヴィカの経緯を聞いたスティオラは関心しながら小鳥の頭で何度も頷く。

 その様子をコマチは不思議に思った。


「その……あまり驚かないんだな。この世界ではわりと知られた事なのか?」


『とんでもない、世界が複数存在する事が公に知れたら世界中大騒ぎですよ。ただ……』


 と、スティオラは濁しながら。


『以前同じようなことを……ある人が言っていたので。本当に実在するとは思いませんでしたけど』


 ある人、という疑問はあれど、二人は追及しなかった。

 表情は見えずとも、声質的に沈んだような雰囲気を二人は察したからだ。


「あ……まあ、というわけで、俺この世界に詳しくないから色々教えてもらえると助かるよ」


 空気を換える為にコマチは話しを逸らし、メヴィカもそれに合わせる。

 そして、夜は更けていった。


 迎えた翌朝、『強欲の巣』の入り口がある谷周辺まで馬車を走らせたところ、ある生物の群れを確認する。


「何あれ? 猛獣?」


 凶悪な牙を持った犬型の魔物を、コマチは双眼鏡で捉えながら身震いした。


『あれはガルム。自身の住処に近づく者を容赦なく食い散らかす番犬です』


「怖いんだけどっ!」


 さらっと獰猛な肉食獣の説明をされた後に再びガルムを見直すと、余計にコマチの恐怖心が駆り立てられる。

 しかもそんな生物が谷の至る所に立ち塞がるのだ。


「早速無理ゲー臭漂って来たけど、他の奴らはどうやってここを乗り越えているんだ?」


『あれを見て下さい』


 コマチが疑問に思っていた時、丁度ゲートから一台の馬車が出て来る姿を発見した。

 その馬車は不思議な事に、ガルムの目の前を通っても一切見向きされず、逆に向こうから引いてゆくのだ。


『あれは特定の魔物を対象とした、魔物避けの護符が張られているのでしょう。おそらく会員限定で配られるものと推測します』


 スティオラの解説に、コマチはふとメヴィカに目を移す。


「魔物避け? メヴィカ、なんかそういうアイテム持ってないか?」


 アイテム係のメヴィカにすがる思いで尋ねるが。


「ごめんなさい。魔物避けの魔道具はありますけど、ガルム限定じゃないから効果はそこまで高くないんです」


 期待した視線を送るコマチに合掌しながら謝罪する。

 しかしもう後には引けないと、コマチはゴクリと唾を飲み、メヴィカに告げる。


「……このまま、突っ切ろうと思う」

「本気で言ってるんですかコマチさん!」


 当然ながらメヴィカは驚きの表情を見せるが、コマチの決断が揺れる事はなかった。


「本気だとも。ここを越えなきゃならないならやるしかねえ。だからメヴィカ、魔物避けのアイテムを貸してくれ。無いよりあったほうがいいだろ」


「そりゃそうですけど……それでも嫌という程ガルムが襲い掛かってきますよ?」


「だろうね、だからメヴィカはここで帰ったほうがいいよ。本当に守りきる自信ないから」


 コマチの発言にムスッと頬を膨らませるメヴィカは「ナメないで下さい」と放ち。


「私だって戦闘経験くらいあるんです。それに、私無しじゃこの先絶対に越えられませんから! スティオラさんも、それでいいですね?」


 半強制的に訴えるメヴィカに、スティオラは苦笑いのようなトーンで返した。


『ええ、どのみちここを抜けられないようでは地下大監獄へ侵入するなど不可能ですから』


 皆の意見が揃ったところで、メヴィカは手綱を大きく叩いた。

 全速前進する馬に運ばれ、一気にガルムの群れを押し通る。


 メヴィカの予想通り、多少離れているガルムは近寄って来ないものの、進行方向にいるガルムが目の色を変えながら狂ったように襲ってくるのだ。


 息を呑むコマチは、アストに植え付けられた絶対的恐怖を振り払い、迫るガルムに向け弓を引く。


「あれはただの猛獣……大丈夫……やらなきゃこっちがやられる……」


 コマチが今まで戦った魔物は食人花とレッサーデビル。どれもコマチの世界では異形のものだった為、ファンタジーと割り切って躊躇なくその矢を放つことが出来た。


 しかし今回はコマチの世界でも馴染みのある四足歩行の獣、狼や猪を合わせたような見た目の大型獣だ。故に、コマチは抵抗があった。けれど――。


「【ペネトレイト・ショット】!」


 アスト戦で足りなかった、命を取り合う覚悟。

 その覚悟を、今ようやく決めたのだ。


「悪いが通らせてもらうぞっ!」




ご覧頂き有難うございます。


私事ですが、訳あって入院しております。

今のところ投稿出来ておりますが、もしかしたら投稿ペースが落ちるかもしれませんし、逆に上がるかもしれません。体調次第ってやつです。

ウスっ、頑張ります!

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