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百ある世界の片隅で〜幼馴染みと共に世界を救う物語〜  作者: 若取キエフ
動乱の大監獄編 (コマチルート)
21/72

21話 出発前の後始末


 スティオラの指示により、城門を通る前に再び貧民街へ足を運ぶ。

 そして裏稼業に手を染める者達のアジトへ単身乗り込み、メルをさらった恨みを込めてコマチは大暴れするのだ。


「こ……こいつ、あの時の!」

「なんでまた……ぐあっ!」


 ここにいる者達を打ちのめす事が目的ではない。しかしコマチは感情が高ぶり、向かってくる者を薙ぎ倒し、この職を二度と再起出来ないよう徹底的にアジトを破壊していった。


「やめろお前! これ以上やったら建物自体崩れるだろうが!」


 涙目でコマチに静止の声を飛ばすものの、一心不乱に暴れるコマチを止められる者はもはやここにはいなかった。


 そしてようやく気持ちを落ち着かせたコマチは、以前奴隷商人といたボスとおぼしき男を捕まえ、情報を吐かせる。


「『強欲の巣』に行きたい。ここの代表だったら知ってるよな?」


「なっ……なんでお前みたいなガキが……。女を助ける為なら諦めろ、お前が行って無事でいる可能性なんて皆無だぜ」


 なおもコマチは男の首を絞め、テーブルに叩きつける。


「そんなことはどうでもいいんだよ。お前だったら『空間ゲート』の鍵を持っているんじゃないのか?」


「そ、それは……」


 スティオラから受けた情報により、コマチはアジトのボスを脅してゲートの鍵を奪う手段に出た。


「答えろっ!」


 コマチの怒号に渋る顔をしながら、男は奥の棚を指差す。


「その中に入っている……それがあればもういいだろ、もう帰ってくれ」


 男を掴んでいた手を放し、コマチは棚を確認すると、宝石が埋め込まれたペンダントが入っていた。


「スティオラ、これでいいのか?」


 コマチは自身の肩に乗っている小鳥に確認を取ると。


『間違いありません。それがあれば『空間ゲート』を通ることが出来ます』


 満足気に翼をはためかせ、これが本物だと訴える。

 その様子を見た男は、青ざめたような表情を浮かべた。


「おい……スティオラって……この国に仕える大魔導士スティオラ・メギオか?」


 さすがに有名なだけあり、貧民街にもその名は知れ渡っていた。しかし男が懸念しているのはそれだけではない。


「まさか、どこかでここの様子を見張っているのか?」


 スティオラに知られるということは、国全体にここのアジトが知られるということ。

 つまり、彼らはコマチが暴れなくとも、じきに来る国の兵士によって身柄を確保されるのだ。

 焦る男達を見据え、スティオラは小鳥の瞳を睨ませ言った。


『あなた方のことはすでに王に報告しています。間もなくここに兵が駆け付けるでしょう』


 それは、彼らの悪事が露呈し、裏社会の道が終わる瞬間だった。


 慌てて外へ逃げる男達だが、外はすでに国の兵士によって包囲されていた。


「そんな…………」


 愕然としながら腰を落とす男を横目に、コマチは玄関とは逆の窓から退散する。


「お前らがこれを使う事はもうないだろうから、代わりに俺が活用してやるよ」


 そんな捨て台詞を吐きながら。

 苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべながら去り行くコマチを眺め、そして、男は兵に身柄を拘束された。









 無事目的を果たしたコマチとスティオラは、メヴィカの待つ馬車へ早足で向かうと。


「あ、あの……」


 道中、一人の少女がコマチを呼び止めた。


「……君はたしか、あの時倒れていた……」


 その顔にコマチは見覚えがあった。

 それは以前水を求め、メルが助けようとしていた小さな少女。


 コマチが振り返ると、少女は力強く頭を下げ、謝罪を申し立てた。


「ごめんなさい! お姉ちゃんが連れていかれたの、私のせいなの」


「……え?」


「私がお姉ちゃんの注意を惹きつけて……麻痺毒の針を刺したの。そうしないと、次は私を売り飛ばすって言われて……お父さんも、お母さんも死んじゃったから、あの人達の言う通りにしないと生きていけなくて……本当にごめんなさい!」


 泣きながら謝罪を繰り返す少女を見て、コマチは怒りよりも、情が勝る。

 身寄りのない孤児を利用した男達の悪質な手段も許せないが、貧富の差が激しい現実を知ることもコマチには耐え難かった。


 いかに自分が恵まれた環境にいたかを思い知らされる、弱肉強食の異世界。

 自分もメルもその歯車の一部となり、実際その洗礼を受けたのだと、コマチは酷く痛み入る。


 コマチがふいに手を差し出すと、少女はぶたれると思い身構えた。

 しかし、その手は優しく少女の頭を撫でるのだ。


「もう大丈夫だから。悪い奴らはみんな捕まったから、君はもう自由だ」


 そう言って、なけなしの金が入った小袋を少女に渡した。


「これで美味しいものでも食べて、元気に育ってくれ。住む場所がないなら、俺の知り合いに格安で泊めてくれる宿屋の店主がいるから紹介するよ。なんなら住み込みで雇ってもらえるよう、俺から手紙を送るよ」


 そしてエーテラルの宿屋の場所を教えると、コマチは少女と別れた。







「スティオラ、この国の貧困に苦しむ人達に何か援助は出来ないのか?」


『これでも昔よりは貧民街に物資の支給が行き渡るようになったんです。その問題は僕と王で前々から対策を練っておりますが、数年程度では劇的な変化が見れないのが現状ですね』


「なら、これからもよろしく頼むよ。俺、この国の人間じゃないけど、これ以上人が苦しんでいる様を見たくないんだ」


 成り行きで立ち寄った町だが、もはや他人事では済まないほどにコマチはこの国の行く末を憂いていた。


『あなたは、優しい人ですね』


 そんなコマチを、スティオラは素直に称賛する。





ご覧頂き有難うございます。

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