008 サービス開始 ~ 斎藤純也 ~
3月21日(祝) 9時55分
あと5分でサービス開始となる。
「最終チェックはOK?」
「はい、大丈夫ですぅー」
なぜ鈴さんが答えるのだ?
「暇なので、現場リーダーやりまぁーす」
まぁいいか、デザイナーにはやることないし、情報収集は任せておこう。
この緊張感はたまらない。ネットの向こうに20万人のプレイヤーが今か今かと待ち構えてるわけだ。
さぁお前たち、阿鼻叫喚の渦に巻き込まれるがいい。これが、俺たちの本気だ、かかってこい。
どうやら俺も精神崩壊してるようだ。あれだけの辛辣レポートを毎日読んでたら神じゃなく悪魔になってしまう。こいつらをどうしたら黙らせることができるのか、毎日そのことばかり考えてた結果か。
3……2……1……0、10時の時報がなる。さぁ、サービス開始だ。
「ネットワーク班、どうだ?」
「問題ありません」
「サーバー班どうだ?」
「問題ありません」
「ログ解析班は?」
「ただいま接続6万人突破しました、異常ログありません」
βテストに比べ、はるかに負荷がかかるであろうシステムの状況を確認する。
まずは大丈夫なようだ。
「社長のほうは?」
「さすがにこの時間に掲示板には誰もおらんよ」
「公式じゃなく外部の掲示板は?」
「あぁそちらか…………まだこちらも誰もいないようだ」
最初の約30分はキャラクター設定のためのチュートリアルになっている。
ここでまず一つ目の地獄を見てもらおう。
20万人のうち何人脱落することか、楽しみで仕方がない。
ここまでお読み頂きありがとうございます。