003 刀鍛冶職人
僕は杠葉雅人。この春から高校生活が始まる。
とはいっても、未だモヤモヤしてる。別に受験に失敗したわけではない。志望校には余裕で合格した。しかし本当は中学卒業でやりたいことがあった。高校には行かず、夢に向けて邁進するつもりだった。
物心がついた時にはすでにノコギリと金槌がその両手に握られていた。
日曜大工、今はDIYと言われるが、それを趣味とする父の影響で小さいころからモノ作りをしていた。
暇あればホームセンターに連れていかれ、工具がおもちゃ替わり。
小学3年生のときに刀鍛冶職人のドキュメンタリーを見て、体中に電撃が走る。前世がそうだったのか、日本刀の申し子なのかわからない、自分の夢はこれだ、って思った。
それ以降、その手の本を買い集め、夏休みになると全国の刀鍛冶職人のもとに行った。自由研究もそれをまとめ、毎年表彰された。
中学での進路相談はもちろん就職だ。職人に弟子入りすることしか考えていなかった。
しかし担任はそのような事例の経験がなく、三者面談では進学を進められた。父や母は好きなように、と言ってくれたが、思うように話が進まない。
中学3年の夏休みにとある刀鍛冶職人の元を訪ね、弟子入りを志願していることを伝えた。全国でも名工として有名な職人だ。
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この業界は若い人がこない。君みたいに意欲ある若い者が来てくれることは非常にうれしい。
しかし今の時代は中学卒業即就職はやめたほうがいい、もっと知識を蓄えるべきだ。
鉄とは何か。日本刀とは何か。昔ならいざ知らず今は一つの工芸品でしかない。
作ったところで喰っていけないと生活はできない。それらをもっと勉強すべきだ。
職人としては定年がない。体が丈夫なら80歳でも刀は作れる。
早い時期から職人を目指すのもいいが、長い人生もっと基礎を固めてからでも遅くはない。
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やんわり断られたのか、それとも言葉通り焦る必要はないということなのか。
大学を卒業した上で、それでも鍛冶職人になりたいと思うなら再度来るようにと言われた。結局大学を見据え、近くの進学校に進むことにした。
入学準備もほぼ終えて、のんびり本を読んでいたら、電話が鳴った。
妹の三奈からだ。
「おにぃ?今友達から聞いたんだけど、おにぃが好きそうなトンデモゲームが今度出るらしいよ!!」
普段おとなしい喋り方の妹が慌ただしく言ってきた。
「ゲーム内で日本刀が作れるんだって、しかもホンモノの職人が教えてくれるらしいよ」
「どういうこと?詳しく!」
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どうやらVR系のゲーム内で日本刀を作る、ということができるそうだ。
設備などは実際のものに近く、教える人も現実の刀鍛冶職人。
VRが流行ってこんなにありがたいと思ったことはなかった。
今まで料理教室なんてものがVRでできるってことは知っていたが、刀鍛冶なんてのはなかった。
それがなぜゲームで?
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