002 卒業式
「先輩、ご卒業おめでとうございます!!」
後輩に囲まれ、高校生活の終わりを漫喫している。
卒業式が終わり、クラスメイトと別れた後、3年間お世話になった部室に顔を出す。活動自体は昨年の夏で終わっていたが、そのあとも暇あれば来ていた。
「第二ボタンはともかく、あとのボタンくださーい」
可愛い女子高生にちやほやされるのも今日までなんだろうなぁ、なんて思いながらボタンを一つはずす。
いつの頃からか、優秀な成績を収めた卒業生が後輩のためにボタンを一つ置いていく、そういう慣習がある。インターハイ準優勝という輝かしい?成績だったので、その慣習に倣って一つ置かなければならないようだ。
「翔、お前の成績だと一つでは足らないだろ、四つ置いていけよ」
そう言ったのは3年間共に汗を流した雪之助だ。
「それで第二ボタンだけで帰るのか?どんなイジメだよ、それ」
「貰ってくれる子はいないのか?じゃあ俺が貰ってやろう」
「断る」
後輩には一つだけで勘弁してもらって、部室を後にすることにした。
「翔は大学行っても続けるのか?」
「どうだろうなぁ、体育会系っていうんだっけ。ああいうところでやるのも大変みたいだし、それに勉強も両立できるかわからないしな」
「しかし、推薦で大学合格したんだろ。それだと、やらないわけにはいかないだろ」
「いや、インハイの成績で推薦貰ったわけじゃないし、やらなきゃいけなくはない。もちろん有利になったとは思うけど」
普段から真面目に勉強もしていただけに、内申点がよく、部活も頑張った。
ちょうど行きたい大学の推薦入試の募集があったから応募しただけだ。
「4月まで暇なのか?」
「バイトの予定だ」
「んーー、バイト代あるならゲームやらない?」
「ゲーム?」
「VR系のゲームなんだけど、リアル特技がそのままゲーム内で有利になるんだよね」
「で?」
「翔の実力ならきっとトッププレイヤーになれる」
インターハイ2位と言っても高校生での話だ、一般も含めりゃ上には上がいる。なにがトッププレイヤーだ。弓道なめんな。
でも、バイトばかりもなんだな、ちょっとやってみてもいいか。
「どういうゲームなんだ?」
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