013 ほくそ笑む斎藤
始まって20分ほど経つ。
チュートリアルが終わり、プレイフィールドに降り立つものが現れ始める。いきなり崩れるやつが続出してる。
「ふふん、嘘つき野郎がいっぱいいるな」
現在チュートリアル終了が約1万人ほど、うち称号"Liar"が約7割。
最初のキャラ設定でこんなに躓くとはおもわなかった。
「あれほどペナルティーあります、って言ってるのに、なんでバレないと思っちゃったんでしょうねぇー」
鈴さんの顔がニヤけている。
しかし、このデータ処理はすごいわ。まさかここまで役に立つとはおもわなかった。
「副社長が作ったシステムですよね、アレ。すごい処理能力でびっくりしちゃいました」
「いや、うまく活用してくれたよ、もう手放そうかと思ってたのにな」
昔作ったシステムなんだが、何かゲームで使えないかとコツコツ作ってはみたものの、使われずに埃をかぶっていた。
それを今回、開発チームの一人がうまく活用してくれた。キャラ作成でこれ使えますよ、なんて言ってくれた時はちょっとうれしかったな。
リアルの特技、技能、能力、なんでもいいからシステムに入れることにより、個性的なキャラを作ることが可能だ。
しかし、嘘のデータをぶっこんでくる輩が絶対いる。バレる訳がないと、なめてかかってるわけだ。
そりゃそうだ、テスト結果だの学校の成績だの入力させたところで改ざんしていてもわからない。ゲームの中だけに、文書偽造したところで痛くも痒くもないわけだ。
しかし、オールA評価、といってもテストさせればすぐにばれる。サッカーの全国大会出場といっても、5分プレイさせればボロが出る。脳波を直接解析しているわけだから、嘘をついたところですぐわかる。
ただ、それらを判別するためには膨大なデータ処理が必要だったが、それもコレで解決できた。
キャラ作成にそれを組み込んでみたところ、結果7割が嘘つきになった。もうこちらの思うツボでしかない。
サービス開始すぐにチュートリアルに取り掛かったプレイヤーが約19万とでた。
そりゃ初期プレイヤー、開始15分以内にサービスインした場合にボーナスポイント付与って言ってあったしな。
しかも今日は祝日、会社休まなくてもできるプレイヤーは多いはずだし、95%が飛び込んでくるのは想定内だったが……最終的に、どれくらいが嘘つきになるのだろう。
こういう情報は後発組にはすぐバレてしまう。だから開始15分と限定してみたのだが……これだけスタートしてくれれば、最初だけでも楽しめる。
いや、情報が流れたところで、バレない範囲でやってくるプレイヤーもいるだろう。挑戦的なプレイヤーもいるから、イチかバチかで誤魔化してくるはず。
全て看破してやるからかかってくるがいい。
「しかし鈴さんのデザイン、鬼だね」
「そうですかぁー」
「男性プレイヤーは破れたTシャツに短パン、女性プレイヤーに至ってはエロ過ぎだぞ、いろいろ見えないか心配だよ」
「嘘つきにはお似合いですぅー」
これはオフレコだが、誤差の許容範囲は男性プレイヤーと女性プレイヤーで少しだけ異なっている。
鈴さんが言うには、見栄を張りたいのは圧倒的に女性だと。特に身体的特徴に関しては、って熱弁してたから判定を若干緩くしてある。
それで男性プレイヤーが喜ぶなら、それくらいのイツワリは許そうじゃないか。
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