107 ニーマキの商談
「お待ちしておりました。ご無沙汰しております」
ミミーが出迎えてくれた。武装がまともになったメアリー、そしてもう一人のサブクラマスのショージが居る。
「おぅ、久しぶり。メアリーも綺麗になったな」
リオンがメアリーを見て笑いながら挨拶をする。
そして初対面のプレイヤーが二人。
「こちらはクラン”シリウス”のベガ殿、そちらはクラン”ザ・カラー”のゴールド殿、いずれもクランマスターをされてます」
「クラン”ジュピター”のリオンだ。後ろのはうちのメンバーだ」
それぞれ挨拶を交わす。
もう一人遅れているようだが、クラン”ケミカル”のクランマスター、アルデヒドというのが来るようだ。
ニーマヒで厳ついおっさんが居たが、それがアルデヒドだったらしい。リオンより20分ほど遅れて出発したらしいが、飛ばしているらしくすぐに来るようだ。
「このような場にお越し頂けたこと、誠に感謝いたします」
どうやらこの場はミミーが仕切るようだ。
「うちのメンバーは全員同席しなければならないのか?」
「いえ、主要な方だけで充分なのですが……ホークさんはいらっしゃらないのですか?」
「今は別動隊だからな。そうするとなると……」
話次第だが、こう重鎮ばかりだと迂闊なことも言えない。シラヌイに居てもらったほうがいいか。
五人のところに行き、シラヌイに同席を求めた。
「私が同席ですか?お役に立てるかどうか……」
「いや、形だけでいい。なにかあればホークに聞くことにするから」
「それであれば」
あとの四人はしばらく街の散策に行ってもらおう。スノウは武具屋に走って行った。
「早速ではありますが、議題と申しますか、お願いというのはエリアボスのことなのです」
「それはもう何度も同じことを言ってるはずだが」
リオンがぶっきら棒に答える。
他のパーティでは全く歯が立たない状態で、なぜリオンのパーティだけが討伐できるのか。もう何でもいいから教えてほしいと懇願する二人のクラマス。
その最中にアルデヒドが来た。
「遅れて申し訳ない。拙者がアルデヒドと申す」
挨拶もそこそこに、会議に入ってくる。
どうやって倒すの?魔法を使ってこないのだから、ガツーンとかますだけだ、ってことを何度言っただろう。
もうリオンも勘弁してくれって言わんばかりの疲れた顔をしている。
やむを得ないという感じで、横からシラヌイが提案した。
・エリアボス討伐の動画があるので、それを見せる
・パーティの一名を交代し、そのメンバーでエリアボス討伐を試みる
・ステータスはクランの肝になるので、一切お答えできない
・ここで知りえたスキル等は一切口外しない、した場合にはペナルティ
・攻略法として壁耳組が取りまとめ、適切な情報料で売買する
「シラヌイ、私たちがそこまでしなきゃならんのか?」
「押し問答を何度も繰り返すなら、見てもらうしかないと思いますけどね」
「じゃあミミーとそちらのお三人さんで考えてみてくれ」
もう投げやり状態のリオンだ……解らなくもないけど。
この提案を受け、壁耳組三人と、クラマス三人が集まって相談を始めた。
しばし相談した後、提案内容に対して若干の変更を言ってきた。
・動画は不要、代わりにパーティ参入を二人にしてほしい、アタッカーとヒーラーの二名
・ステータスおよびスキルなど、個人情報及びクラン情報のすべてについて知りえた内容は口外しない
・念書及び、その念書に伴う証文を作成する、ペナルティは、アカウント停止および、全財産とする
・情報料として200万ギニー、これとは別に協力してくれた謝礼として100万ギニーを支払う
・情報の有益無益については一切問題としない、無益情報であってもクレームはしない
・仮に討伐失敗した場合にはメンバーを入れ替え三回までチャレンジをしたい
リオンとシラヌイがこの内容で承諾する。
念のため、ホークにF/Cを飛ばしたが、圏外?みたいなメッセージで連絡が取れなかった。やむを得ず、二人だけの判断で、この条件で交渉成立とすることにした。
急ぎ、ミミーが念書と証文を作る。情報料は成功報酬だが、謝礼は先に手続きすることになった。
その間にF/Cで散策に行った四人を呼び戻す。
簡単に経緯と打ち合わせをする。
「スノウのアレだけは絶対使わないように努めてくれ。回復をこまめによろしく」
「それはいいですけど、後のスキルは?」
「他はやむ得ないと思っている。念書も取り交わしているしな。お前のだけはユニークスキルだから念書があっても見られたくない」
「了解です。死なないように努めます」
「これで300万とは豪気だのぅ。10倍も貰えるとは有り難い話じゃ」
エリゴルは高みの見物で大金が入ってくることに喜んでいる。
加わるメンバーは、アルデヒドとミミーとのこと。代わりにリオン側で外れるメンバーはエリゴルとバンシーになる。
一時的なクラン加入とパーティ編成をし直す。リオンがイライラしながらやっている。
リオン、スノウ、ストラス、シラヌイにアルデヒド、ミミーのパーティが完成した。
「バランス的にはそれほど劣化したわけではないので、大丈夫でしょう」
シラヌイがリオンに言う。
「これで突破できなかったら私は知らんぞ」
「本当にご迷惑おかけします」
ミミーが小さくなって謝っている。
「じゃあ早速行くぞ!」
「ちょっとお待ちください。ポーションなどをお渡ししますので……」
「いらん、そんなもの。ポーションなんぞ使ったことないわ」
リオンのイライラが頂点に近づいている。こりゃ短期決戦で終わりそうかな、とシラヌイが見ている。
総勢十二名で第二フィールド北のエリアボスのところまでくる。
主だったのが十二名ってだけで、それぞれのクランメンバー、というかメンバー予定のプレイヤーがぞろぞろついて来ている。
四クラン分なので百五十人くらいいるだろうか。
「まるで大名行列じゃな」
エリゴルが楽しそうに後ろを眺めている。
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