106 攻略パーティ
≪おめでとうございます。第二フィールド(W) エリアボスモンスター(ビッグ・ブルー・パイソンとビッグ・グリーン・パイソン)が初討伐されました≫
「なんだかツマランな。同じことの繰り返しになってきてるぞ」
「種別が違うだけ、とは言いませんが、確かに楽勝ではありますね」
シラヌイがリオンを宥める。
「バンシーのスキルが強烈だ。回復量が違うな」
リオンが言うと、エリゴルも賛同する。
「うむ、多少のダメージすら気にならないくらい戦いやすいわい」
流石に女性相手にはバシバシはしないらしい。セクハラにもなるし婚約者もいればそこは控えるよね。
「楽勝って言っても、この装備では僕は疲れるんですけど」
未だ新装備を買ってもらえないスノウが愚痴る。二カ所クリアしたから、少なくとも60万ギニーはあるはずなので、買ってくれというおねだりだ。
「うーむ。買ってやりたいのは山々だが、今の状況で問題ないのに買う必要が見当たらない。それより借金に充てたいのだがな」
「それは解りますけど、この軽装備でタンクとか、軽いイジメですよ?」
ストラスが横からサポートする。
「だよな、ストラスもそう思うよな。これは完全にイジメだよな」
スノウがストラスの援護を得て、饒舌になる。
「じゃあホークに聞いてみな。一応あいつからは無駄使い厳禁と言われているから」
「……そういうことですか。じゃあ諦めます」
ホークからの言いつけなら仕方ない。聞いた所でアイツが折れるわけない。そう思うスノウであった。
「その代わり、ちゃんと工面付いたら、いの一番にスノウの装備を最高級で揃えるって言ってたぞ」
ホークからの入れ知恵だが、リオンがそういうとスノウの機嫌がよくなった。
さすがホークだなと思うと同時に、ホークの操縦術には恐れ入るわ、と思うリオンであった。
「まぁそう言うことだから、ここサンマニも通過点に過ぎない。次行くぞ」
馬車を借り、移動する。ナミが食事を共有インベントリに入れておいてくれるからそれを食べながらの移動になる。
「これってナミさんが作っているんですよね。私も習おっかな」
バンシーが食べながらつぶやく。
「シラヌイとバンシーって婚約中じゃったか?それなら料理は出来るに限るぞ。男は胃袋つかまれてると頑張って働きようるからなぁ」
ガハハハと笑いながらエリゴルが言う。
「ストラス君、お母さんってお料理上手?」
「そうですね。全般においしいですし、母の味ってのは解ります」
「そっかー。だからエリゴルさんもいいお父さんなんだねー。私もちゃんと料理したほうがいいよねー」
シラヌイが聞こえないふりをしているが、顔がニヤケている。嬉しいと言わんばかりの笑みが顔に出ている。
「あー私も料理覚えたほうがいいのか。振られまくりの私にも春が来るかもしれないし」
リオンってたまにおかしなこと言い出すよね。
「もうすぐ桜が咲きますよ。春はすぐそこです」
スノウがリオンの独り言に返す。ボケなのかマジメなのかわからない。
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ニーマキの街が見えてきた。
リオンのF/Cが鳴る。どうせまたミミーだろうと顔を顰めながら応答する。
『はい、リオンだが』
『お忙しいところ申し訳ありません。壁耳組のミミーです』
『どうした?』
ぶっきらぼうに答える。もう10回くらい同じこと聞かれているのでぞんざいな扱いになるのもわからなくはない。
『今どちらでしょうか?』
『もうすぐニーマキだな』
『それであれば、一度お会い出来ないでしょうか?』
『なぜ?』
『エリアボスの攻略のことで』
『何度も同じこと言うようだけど、本当に攻略法なんてないぞ』
『それは解っております。その上でお願いがございまして』
『お願い?なんだ?』
それは会ってからの話しますと言うことで、待ち合わせ場所を決めてF/Cを切った。
「また壁耳組とやらか。鬱陶しいのぉ」
エリゴルがリオンに語り掛ける。
「仕方ないわ。私たちだけしかエリアボス倒してないらしいから。藁をもすがる状況なんでしょう」
「そのスノウのことをバラすのか?」
「そんなことはしないわよ。個人のステータスなんて売ることになったら、それこそ数千万ギニーの情報料になるわよ」
「あの異常値だとそうなるわな。原因はわからんが、それを公開すると騒ぎにはなるじゃろ」
スノウが割ってくる。
「えっ、数千万ギニーなら僕はいいですけど。もちろん僕が貰えるんですよね」
「それは止めた方がいいですよ。一つ、今はそんな大金、回収できる見込みがありません。二つ、異常値で祭になって運営に苦情殺到。原因はあるだろうと思いますが、運営が発表するとは思えません」
ストラスがスノウを宥める。
「ま、いずれにしてもミミーとやらのお願いを聞いてから考えよう」
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