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103 三日目朝

「鏡原さん、おはようございます」

「おはよう、雅人」


 いつもどおり朝練に来たところ、道場の入り口でばったり出会った。

 同じ道場なので、当たり前といえば当たり前なのだが、ここで話すのはお互い初めてだ。

 先日は時間もなかったので挨拶だけで帰ってしまったのだ。


 大学の剣道部に行かなくてもいいのかと心配する雅人だが、今はリハビリ中だと答える千春。

 ちょっと前に怪我をして、その調整をここでしているとのことだった。

 千春が稽古に誘うが、先日と同様に断る雅人。レベルが違うので雅人としては当然だろう。


 1時間強の稽古も終わり、帰途につく。


「ではまた今日もお願いしますね」

「昼からだっけ。そっちは上手くいってるのか」

「そうですね。今のところ順調ってところでしょうか」

「それならよかった。妹をよろしく頼む」

「その言い方は、周りに誤解を生むのでこういうところでは止めてください」

「別にいいじゃないか。雅人が弟になるのは全然構わんぞ」

「そちらが構わなくても、僕が構うんです」

「ははっ、照れるな照れるな。じゃあまた向こうでな」

「はい。それでは失礼します」


 今のところ思っている方向に進んでいるような回り道をしているような、少し迷う部分はある。

 ただ、いろいろ勉強しなさい、って言われたことがわかってきたように思う。どんなところで材料が採れるのか、基本的なところを全く知らなかった。

 午後のプレイに備えて、図書館に行って調べてみようかという気になっている。それが現実でもきっと役に立つはずだと。


 家に着くと、いい匂いがしてきた。妹の三奈が朝食を作っているようだ。

 向こうでいろいろ作って自信になったのだろうか。母に教えて貰いながら朝食とは思えない量がテーブルに並んでいる。

「お父さんのお弁当もついでに作ってるんだよー」

「ついで、って言ってやるなよ。父さん、落ち込むぞ」

「そうだね。お父さんのために作ってるんだよーって言い直すね」

「もう遅い……」


 :

 :


「おはよう」

 翔が雪之助の部屋に入ってくる。時刻は朝の9時半過ぎだ。


「11時って言ってなかったっけ。えらく早いな」

「あぁ、ちょっと話をしたくてな」

「ゲームのことか?ご熱心なこって」

「自分でもそう思う。頑張るつもりもなかったが、なんだか流れ的にそうなってるから気になって」

「さすが部長気質は抜けてないか」

 笑いながらコーヒーを入れてくれる。


 昨日は時間も遅かったので、互いのパーティというか情報交換ができていなかった。それを少し聞いておきたかったわけだ。

 順調と言えば順調だが、まだまだやることはいっぱいあるなぁと感じる翔だった。


「そう言えば、話変わるけど、雪は四月からどうするんだ?全然聞いてなかったよな」

 翔が雪之助に尋ねる。


 自分から言いたがる雪之助が何も言わなかったので敢えて聞かなかったが、さすがに三月も終わりなので聞いてみた。

「うーん、秘密にしておこうと思ったが聞かれてしまっては仕方がない」

 そう言って一枚の紙を見せてきた。


「えっ、同じ大学じゃん……学部は違うけど」

「へへへー、お前と違って推薦取れなかったからな。その分ちょっと頑張った」

「お前の成績じゃちょっとどころじゃないだろ」

「まぁな。かなり頑張ったと言っておこう」

「それにしても、なんで同じところなんだ?」

「お前と一緒だよ。行きたいところで近いところがたまたま翔と同じだったってだけだ」


 雪之助の父親は会社を経営している。

 兄がいて、会社を継ぐことは決まっているのだが、嫌でなければ兄弟二人でやるのも良し、と言われていたらしい。

 去年に家族会議があり、そうするのであれば、ちゃんと大学で経営学を学んで来いと言われ、大学進学を決めたということだ。

 そういや、あまり遊んでいる姿を見なかったと今更ながら振り返る。


「てことで、四月からも翔と一緒だな」

「学部が違うから、授業が違うだろ」

「え、そうなの?」

「高校じゃないんだから。大学の授業ってのは学部ごとに異なってるんだぞ」

「そうなのか。一緒に通えるとおもったんだがな」

「授業次第だけどな。それも年度が進むとさらに違ってくるはずだ」


 大学も一緒って、腐れ縁になってきそうだなと思う翔であった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

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