101 スノウのおかげ?
「楽勝でござったな」
「連携がこうも上手くハマるとはな」
「シラヌイどのの指示が的確でござったわ」
エリゴルが言うように、周りがよく見えており、相手の連携を上手く断ち切る形で指示を飛ばす。
前衛の三人が機能しているのが誰にもわかる。後方支援もやりやすく、誰も危機状態にならずに戦闘終了となった。
相手はカエルの集団。普通カエルといえば水魔法を使ってくると思っていたが、ここのエリアボスは魔法は使えなかったようだ。
ただ、飛び跳ねる距離がハンパなく、遠くから一気に間合いを詰められたりはしたが、それをいち早く察知したシラヌイの指示が功を奏した形になった。
「うむ、戦い易かったな。ホークの指示とはまた違い、いい戦いだった」
「そんなに褒めてもらっても何も出ませんよ?」
遠慮気味にシラヌイが照れている。
ドロップが多い。全部のモンスが落としているようだ。大きいのが二つと、小さいのが十個落ちている。
集めようとリオンが動き出したところにF/Cが入った。
『……リオンさん、今よろしいでしょうか?』
『ちょっと待って。今ドロップ品集めてるから!』
壁耳組のミミーからだった。アナウンスが流れたから、その確認だろう。
ここに来るまでに5回くらいF/Cがかかってきている。聞かれることは毎度同じ、第二フィールドのエリアボスのことばかり。
よほど苦戦しているのか、なんでもいいから情報くださいの連呼だ。こちらが何か隠していると思っているのか、50万ギニー出すので情報くださいとまで言ってくる。
別に苦労もしてないし、アイテムもいらないし、普通に戦えよ、って感じでしかないのだが。
いい加減うざったくなってくるというものだ。
そこまで苦戦しているなら、さっさと全部掻っ攫ってしまおう、とスノウが言っている。
全くその通りだ。こちらはのんびりしているのに、他のプレイヤーは何をしてるんだろうとしか思えない。
実はそのスノウがいるからってのが大きいことは、リオンも解っていないのだが。
「さっきから鬱陶しいの、そのミミーってのは情報屋なんじゃろ。なんでわしらのとこばかり聞いてくるんじゃ?」
「他が苦労しているのに、我々がサクサク進んでいるからでしょうね」
「特別なことはしてないはずじゃがな」
「いえ、かなり特殊ですよ、このパーティは」
エリゴルの問いにシラヌイが答えている。
「そんなことないだろ。それほどレベルアップしているわけでもないのに他のパーティと違うとかあるのか?」
リオンが言う。
「そうですね。最大の違いはそこに居るスノウ君ですよ」
「へ、俺?」
急に振られて吃驚するスノウ。
「はっはっは、それはいいな。"Liar"で苦労したスノウがキーマンとでも言うのか?」
リオンがシラヌイに問いかける。
「そうですよ。普通、あれだけのモンス群に盾になれるプレイヤーは今いないはずですよ。装備もそれほどいいの売ってなかったでしょ。それなのにその軽装備で楽々食い止めているのはどう考えてもおかしいんです」
「そう言えばそうですね。まだ始まってレベルは10から15の間。それで今売ってる防具をフルで揃えてもあの大ボスの猛攻を一人で食い止めるってのは少し異次元ですね」
ストラスも首をかしげる。
「あー、スノウって壊れた感じでステが伸びたよな。でもギルドで確認したけど問題ないって」
「そうですね。ビックリしましたけど問題なしでしたね」
リオンとスノウが思い出したように話す。
「差し支えなければですが。HPとVITってどれくらいなんでしょう?」
「えっと、今のでレベルアップしたから、HPが1950でVITが440になったかな」
「「「「えぇっ!!!」」」」
聞いていただけのバンシーも思わず声を出す。
「それ、おかしいですよ?」
シラヌイが改めて言う。
「何をどうやったら、そんな数字になるんでしょう?」
ストラスも聞いてくる。
「俺にはわからん。なぜかこの数字になったってだけで、ギルドでも問題ないって言われたからなぁ。なんでこうなっているのか、俺も知りたいよ」
スノウは自分ではわかっていない。そうプレイヤーは誰もわからないのだ。
「さて、それじゃ次の西に向かうことにするか?」
「そろそろ時間ですね。サンマミの街でサービスアウトしませんか?ホークに連絡しておきますので」
「もうそんな時間なのか。じゃあサンマミに行くか」
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