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何でも屋は何でもする  作者: 阿須野夢見
1.5章
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第1.5章第三話

「おい小娘。最近妙な噂が立っているが聞いたことがあるか?」

「はぁ、」

「なんでも最近『何でも屋』の質が落ちていて、いつもの社員が来るのなら問題ないんだが最近入った社員がまともに仕事をこなさないアホらしいんだよ。」

「あ、あの…」

「別にお前とは言ってないぞ?ただどこかの何でも屋のどこかの入社1ヶ月半のどこかのJKがそうだって話してんだぞ。結衣君。」

「あの、その、すいません…。でもさぁ無理じゃん!あんた達は頭いいし運動神経もいいけど私普通じゃん⁉︎高校にも通ってないのにビルの設計図書くとか無理だから!てか高校行っても無理だから!」

「は?まぁお前みたいな馬鹿ならそうなのか。じゃあお前この仕事やめろ。」

「へ?」

「それで高校入れ。」

「あ、そういう事ですか。」

 焦ったー!捨てるかと思ったー!

「そんな事しねーよ。誰が好き好んで固有能力保持者を手放すか。」

「素直じゃないですねー私を離したくなかったらそう言えばいいのにー。このツンデレさん。」

「は?」

 あ、これマジトーンだ。ガチで引いてる。やめて、ゴミを見るような目で見ないでー。

「はぁ、まぁいいや。取り敢えず学校に行く物は全て揃えておいた。学校にも掛け合って3日後には入学出来るようにしておいた。良かったな。9月上旬クラスが馴染んできていい感じになったところにお前という異分子投入でクラスが変な空気になるぞ。」

「クズが、死ね。」

「断る。」

 学校か、最後に行ったのは中2だっけ、あれ?私ってもしかしなくても馬鹿?

「え?気づかなかったのか?これだから馬鹿は。でもまぁ気付いたのはいい事だ。と、いう事で今から勉強するぞ。」

「そーですよねー。まぁ分かってましたよ。」

「じゃあ、やろうか。」

 そこからは地獄だった。地下室の何もない部屋に閉じ込められ約2日に渡ってひたすら教えられ続けた。逃げ道などなく、ただひたすらに休みなく頭に知識を入れられ続けた。

 2日後

「おぉ結衣、なんか社長に勉強教えてもらってるんだって?世界一の頭に教えてもらえるなんて良かったなー。」

「3.14159265359…あ、はい、頑張ります。3.14159…」

 彼女は酷くやつれ、目を覆い尽くすほどの熊が出来ていた。その疲労のせいか歩きもおぼつかないまま自分の部屋に戻った。

「おいおい大丈夫か?社長は一体どう教えたんだか。」

「いや、別に変なことは教えてねーよ?ただ人間が2日で覚えられる限界まで教えて頭に詰め込んだだけだ。おかげで進学校の中3レベルには学力が追いついた。全く。これを無料でやる俺カッコいい。流石天才。」

「俺が仕事行ってる間にこんなことになるとは…。でもいいのか?わざわざ自分の新しい武器を一人にさせて。守れなくなることだって増えるだろうに。」

「そんときゃそん時だ。俺さ、思うんだよ。まだあいつは若い。それに今は戦争も無いんだぜ?そんな世の中に俺たちみたいな生活させるのはちょいと酷ってもんじゃねーか?」

「そうだな社長。結衣には辛い思いをさせることになるだろうし、せめて俺たちが出来なかった日常を少しでも味合わせてあげたいからな。」

 才ノ目はおもむろに頷いた。

「…さてと、明日入学のあいつにケーキでも作ってやるかな。」

「頼むよ。あと今度の日曜暇をくれない?少し調べたいことがあるんだ。」

「確認かい?」

「あぁ。」

「そうか、それは俺も気になっていたところだったんだ。分かるのはお前しかいないからな、ぜひ頼むよ。」

 

「祇園精舎の鐘の声ぇ!!…あれ?夢?てか今、夜?…ッイテ!」

時計を見ると午後7時を指す時計。ベッドで寝たというよりは倒れたところがベッドだったっという感じで床についていた下半身が物凄く痺れていた。

「結衣ー?ドア開けていい?」

二階のノック音の後に電さんの声がする。

「はいー今開けまーす。」

 ドアの向こう側には昼間のスーツ姿から一変、いつも一つ結びの髪を下ろし、ジーパンに白ティーというなかなかラフな格好をしている電さんがいた。は?かっこよ。

「そろそろご飯だよ。て、言いに来たんだけど。大丈夫?お腹空いてる?」

「はい!もしお腹が空いてなくても一口で吐きそうな状態でも私は電さんと食べるご飯ならどこへでも行きますしなんだって食べる所存です!」

「そんな無理しなくていいから、、てか何その言い方。」

「残念だったな。」

「その声は…」

 クソゴミ屑天才野郎。

「電はこれから仕事でなぁ。今晩は俺と二人で楽しいディナーだ。あはははは!」

 高らかに笑ってんじゃねーぞこの天才。殺す。絶対殺す。

「私、食欲ないので寝ます。」

 バタン

「あーおいドア閉めんなよ。な?悪かったって、だから機嫌直せよー。」

「本当ですか?」

「?」

「本当に反省してますか?」

「いや微塵も。」

 バタン

 クソッあいつ絶対殺す。

 後ろから聞こえる馬鹿みたいにでかい笑い声がうざかったので私はこの前買った耳栓を嵌めようとしたのだが。

「ざーんねーん。今ドアの向こうで耳栓を取ろうとしたお馬鹿な君?俺がそれをほったらかしにしてる訳がないだろ?お前はせいぜい俺の煽りをこれから防ぐ術なく聞き続けるかここを出て俺と飯を食うかしかないんだよ。あはははは!」

 殺す殺す殺す殺す殺す殺すー!まぁでも、多分あの人のことだ。勉強で疲れた私を少しでも癒そうとしてくれてるのだろう。

「し、仕方なくですよ、仕方なく貴方とご飯を食べてあげますよ。」

 ゆっくりドアを開けて私は言う、が、そこには人なんて誰一人いなかった。あったのは一台のラジオ。

「今そこでツンデレを発動させた。オブァカさん!だーれが手前みたいな世話しづらい馬鹿と飯を食うって⁉︎お断りだよバーカ!あっははははは!あーっははははは!」

 あーやべー、なんかの弾みでこれ壊れてくれねーかな。

 ピシィ!

 あ、ヒビ入った。あ、これもしかして私の能力か。

「意外と便利だな、この能力。」

 私は寝た。

 

「ふむ、無事壊れたと。やはりあいつ能力を使いこなし始めてる。コツをつかんだな。お前はどう思う?電。」

何でも屋屋上。電と俺はビール片手に話を進める。

「あぁ、お前の意見に同意だ。でも社長。いつ分かったんだ?そんな事。」

「いやな?あいつに勉強を教えてる時、ランダムではあるがあの馬鹿が異様に覚えが良くなることがあったんだ。そして終盤あたりはもうそれがずっと続いている状態だった。そこで一つ仮説を立てた。こいつはもしかしたら無自覚に能力発動のコツを掴んでいるのでは?ってな。」

「なるほど、まぁでもそれは普通にあると思うぞ。まだ確定ではないが。あれは結衣の魂だとすれば。その可能性は全然ある。」

「結衣か?」

「あぁ。」

「もう15年か?」

「16だ。」

「あぁそっか。そうだな、そうだったそうだった。」

 

夜風にあたり、ビールを飲む。この苦味は多分。酒の味ではないのだろう。


アタマイタイ

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