表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何でも屋は何でもする  作者: 阿須野夢見
1章
5/13

第1章最終話

「天津 電。何でも屋だ。」

「何でも屋。か、まさかこちらとの契約を破棄してくるとはな。」

「うちの社長はな、頭がいいんだ。それはとってもな。そしてあいつがさっき俺に、行け。て言ったんだ。結衣を助けろって。あいつの答えはいつも合ってる。だから俺は、それを信じるだけさ。」

「ほう?だがお前、この屋敷には見張りや護衛がいたはずだが?」

「あぁ、倒したよ、大丈夫彼らは殺してない。みんな眠ってるよ。まぁでも途中にいた彼らは、、、悪いね、手加減できなかった。」

「そうか。全員か。面白い。どうせここで戦うのだろう?」

「まぁ結衣を離してくれないなら仕方ないな。」

「うむ。所で一つ、納得いかないことがある。聞いてもいいか。」

「なんだ?」

「何故俺が娘を生かすと考えた。何故すぐ殺さないと考えた。すぐ殺す可能性もあっただろう?」

「お前が欲しいのは結衣の能力だろ?結衣の能力を『奪う』ことがお前の狙いだ。お前は能力者で、お前の能力は『魂喰い(ソウルイーター)』。屍人の魂を喰らうことで、その魂の力を受け継ぐことができる。が、それは月下の元でなければ、そして年が15歳以上でなければ力を移植することが出来ないというなんとも扱いにくい汎用能力だ。だからお前は結婚という手段を用いた。結婚し、子供を持ち。その子供の能力が発生した所で夜中に妻を殺害。そしてその子供は使うだけ使って年がきたら殺すだけ。なんとも計画的なやり方だな。」

「調べたのか?」

「いや、この能力については元から知っていた。そこからは簡単な推理さ。でも一つ不安要素があるとすれば、、やはり結衣の母親の能力か。」

「あぁ、気になるだろ?もうすぐ夜だ。月が昇るまでもう3時間を切った。早朝からのドライブは気持ち良かったか?ならばそれが最後の景色だ。この俺の敵に回ったこと、後悔するといい。」

その言葉と、鼓膜が破れるほどの轟音と共に父は姿を消した。いや、消してなどいなかった。消えていたのは電さんだ。視界の端にいたはずの電さんはおらず、代わりに父親が立っていた。

「え?」

そこに焦点を当てて今気づいた。電さんは消えたんじゃない。吹っ飛ばされたんだ。父に。

「ふむ、こんな物か何でも屋、大したことはないな。ん?」

「爆速」

 再び鳴るもの凄い轟音と共に今度はこちらの壁がぶっ壊れた。またも視認することはできなかったがどうやら今度は電さんが父を吹っ飛ばしたようだ。

「どうだい?俺のタックルは。効くだろ?」

「はん。こんなもの、ハエが止まったと同義よ。」

「その能力、固有能力か?」

「よく気づいたな。ではこの能力がどんなものかは分かるか?…正解はなぁ。『神』だ。」

「神?あぁそういう。道理で強い訳だ。」

「『神成り《かみなり》』俺の妻の能力だ。自らのエネルギー半分を代償にすることで自らを神に近い存在まで押し上げる能力。実質お前は今神を前に戦っているのだ。それをよく理解することだな。」

「はっ、なめんなよオッサン。そんなんは俺の能力と、大して変わらねーんだよ!」

神薙かんなぎ』それは、神の依代になる行為。高天ヶ原より神を呼び寄せ。天津 電は神の力を使い、神の力の一部を手に入れ、神と共に戦う。それが天津 電の能力。『神薙』

「『神薙』、こい、タケミカヅチ。」

 その掛け声が合図。雲の上から大きな雷が起こる。雷は彼を包む。雷が消えるとそこには金髪で、後ろにひとつ結びにしていた髪は解けて全て逆立ち、身体中が雷に帯びた別人がいた。

「またこの髪型だよ。全くよぉ、ドラ○ンボール推してんのかなんだか知らねーけどやめてくれよこの髪型、たけのこみてー。あ、タケミカヅチだからたけのこってか?やめろよつまんねーよそのギャグ直せよ髪型ー。」    

《ネタじゃねー!!ふざけんなよお前さー。いくら10年来の仲だったとしても許さねーぞこのやろー!》

「うわタケミカヅチ、いきなり喋るなよびっくりするだろ?全く、これだからたけのこは。」

《たけのこって言うな!》

「全く、雷神の名が廃るねぇ。」

「あの、電さん。いきなり独り言なんてしてどうしたんですか?」

「ん?あぁすまんすまん。じゃあオッサン。始めようか。」

「なるほど、神の力を一部であるが保有している。それが神薙の力か。」

「雷神の速さは落雷と同等。お前の紛い物の神の速さでついていけると思うなよ。」

 彼が構えると、周りの空気はピリついた、雰囲気とかでは無く。物理的に。

「いくぜ?」

 雷鳴と共に父の後ろに回り込み蹴りを加える、が少しずれたくらいだった。父は素早く後ろを振り向きひと殴り、しようとするがその時には父の背後に回っていた。しかしそれは罠。父の背中から巨大なエネルギーが放たれる。それを交わすことができず電さんは後ろに大きく飛ばされるところを父に足首を掴まれ、床に激しく叩きつけられた。

「ぐはっ、、、やっぱり、技を使わずに戦うのは無理か。しゃあね。三日月流気流の構攻の型。『透弾』」

 高速の拳が父に放たれる。が、余りにも腕との距離は遠く。空打ちで終わった。

「舐めているのか?お前。」

「いや?これは銃。ピストルだな。」

「っ⁉︎」

 父の和服がヘソを中心に螺旋状に回転している。あれは一体、、、!!

「吹っ飛べ。」

 その合図と同時に父は後方に回転しながら吹っ飛んだ。


「っがは!」

 なるほどエネルギー弾か。細長い無数の目に見えないほどの微量なエネルギーを螺旋状に回転させ、スパイクのようにして放ったと。俺の体格が決して大柄ではないからだとしても、まさか少量のエネルギーでここまで飛ぶとは。これは、面白いなぁ。単純なパワー、エネルギー量ではこちらの方が上だが、技術、スピードではあちらが上。武術を極めているからこそできる戦い方か。ならば、こちらがとる行動は一つしかあるまい。

「エネルギーの大半を防御に回したか。確かにこれじゃあ俺だけじゃ絶対に壊さない壁だ。」

「だろうな。紛い物とはいえこれでも神。人間の攻撃如きにやられるわけがないだろう?」

「あぁ、確かにな。だったらここは選手交代だ。神様には神様をってな。」

 落雷が逆流した。でいいのだろうかこれは。いや、そんなものより恐ろしいのはその中だ、先程の覇気とは格が違うな。まさか私が押し負けるとは。

「それがお前の本気か。」

「本気ぃ?テメェ、こいつの事をまるで分かっちゃいねーな。こいつの本気はもっとすげぇよ。神様の俺でも引いちまうほどにな。」

「電さんの口調が、変わった?」

「それはこの天才様が話してやろう。」

 この声、右を向くとクズがいた。

「クズとは失敬な、こっちはお前の身を案じて走って来たんだぞ?」

「裏切った癖に」

「は?何言ってんだお前。裏切ってなんていねーよ。あのジジイの能力は知っていた。だから先にお前を捕まえさせて気を緩めたところを電が叩く。もともとこういう作戦なんだよ。全くこれだから理解の遅いアホは。まぁでもアレだ。電には感謝しろよ。もともとお前を裏切るつもりだったんだ。元々な…。それを電は反対してこの作戦になった。全く優しい奴ってのも考えものだな。」

「電さん…。」

「お?惚の字がお前。まぁいいやそんなんは。取り敢えず話を戻そう。あの状態は電の能力神薙によって召喚された神。武甕槌男神が電と意識を交換した状態だ。電のような技術こそないが雷神としての力は上がっている。まぁ戦いを見てたら分かるだろうよ。」

「いくゼェーー!オラァ!!」

 先ほどまでの繊細で美のある動きとは違い、豪快で、まるで子供がはしゃいでいるような戦いぶりだったが、腕を振るう度雷鳴は鳴り響き、飛び散る放電の後が肌に触れ、ピリつくどころか痛かった。

「これは、、凄いな。流石は雷神。防御にエネルギーを振っているのにそれでも痛むとは。」

「俺が前に出たときは人工の電力、自然の雷すべてが俺のエネルギーだ。お前はここら一体の電力に勝てるかい?」

「容易いことよ。」

「いうなぁ人間。」

休む間も無く放たれる無限の雷神の槍に対し、重力よりも力強い重みのあるエネルギー砲を放つ父。2人のエネルギーは四方に飛び散り、家を壊し、ついには私達のところにまで流れ弾の雷が迫って来た。

「全く。愚かな神どもが。」

どこからとも無く現れた白銀の壁は私たちをドーム状に包み込み、身を護った。

「これは?」

「脳電波操作型フェムト粒子鉄集合解離防御専門システム。なを『α《アルファ》』。まぁ簡単にいうと目視できないほどの鉄の粉を集めて作った盾だよ。防御力は鉄の何億倍とある素材から出来てるけどね。」

「なるほど。それにしても凄い戦いですね。」

「電が戦ってたときは、あいつが周りに気を使って周りの被害を抑えるために受け流せる攻撃も受けてたりしたからな。そりゃ、周りも関係なしで戦えばこうはなる。」

「え?じゃああの時受けた攻撃は全部対応できたと?」

「当たり前だろ?あんな無害そうな顔してあいつ無限大陸も入れた生物界の序列で100本の指に入るくらいには強いからな。ちなみに人類の中では第3位。」

「そんなに凄い人だったんですか⁉︎」

「おうとも。」

 音が止んだからかドームが開けた。するとそこには首を掴まれ、持ち上げられていた。

「小僧ども、、俺は電じゃねーんだよ。クソ、もっとこの神薙が完璧だったら。こんな奴一捻りなのによぉ。」

「はん、所詮は神でも一部か。私の下位互換に過ぎんな。」

 そういうと父は電さんを横に投げ飛ばした。電さんは勢いよくは壁を突き破り隣の蔵まで飛んで行った。


《おい、起きろ、電!!》

「いってー。たけのこお前さぁ、なんつータイミングで変わってるんだよ。負けそうなら変われって。」

《うるせーないけると思ったんだよ。ていうかたけのこって言うな!!》

「ほんっとお前って馬鹿だよな。?なぁたけのこ。」

《たけのこではないがなんだ電。》

「この蔵なんか変なのいないか?」

《妖怪の類だなこりゃ。相当なのが住み着いてる。》

「マジかよ。ならさっさと戻らねーとな。」

《だがどうするよ、はっきり言って昔のお前ならともかく今のお前じゃあれはー》

「大丈夫。勝てなくても負けない方法ならある。」


「死んだか。もう直ぐ夜だ。残りを早々に片付けなくてはな。お前もやるか?」

「ご冗談。俺は人間であってそれ以上にはいけない。大人しく殺されるさ。あー、最後のお願いなんだが。これ、飲んでいいか?」

 そう言ってからが出したのは市販で売られているミント味の錠剤型お菓子だった。いや、あれはお菓子なのか?まぁよくわからないところに位置してるあれだ。

「いいだろ?大好物なんだ。所でなんだが、俺も能力者でな?いや、そんなに構えるほどの能力じゃないんだこれが。なんせ一日に3回しか使えないし、とある一つの行動をしないと発動しない固有能力。内容は。数秒から一日後までの未来を決めることが出来る能力。発動条件は、これを食べ、この能力の名前を言うことだ。」

それを聞き父は腕を振り上げようとしたが、時すでに遅く、どこからとも無く現れた鉄の縄が彼の動きを封じた。

「クソっ!」

勢いよく錠剤を放り込むと。悪戯に笑ってこう言った。

「『天才』…今未来は確定した。『お前は俺たちには勝てない。』そうだろ?電。」

「あぁその通りだよ?才ノ目。負けないさ。」

 彼は父の背中に手を添える。

「三日月流基礎の構攻の型。『覇拳』」

 振り向く動作に合わせて電は背中につき、一撃。部屋の中央に戻された父は直ぐに起き上がろうとするが、持ち前の速さで二発目の覇拳を鳩尾に食らわせた。が、父はそれを左手とエネルギーで防御、右手で反撃に移行する準備をした。畳が舞い散り、床が抜け、地面に激しい亀裂が出来た。

「はあああああ!!」

「舐めるなああああ!」

 2人のエネルギーがぶつかり合う。ほぼ半壊状態の家の屋根歯には大きなヒビが生え、柱は折れかけていた。

「俺は神だぁ!お前らなんぞの未来にぃ!決められる俺ではなあああい!」

 激しい怒号と共に放たれた右手は、見事電の腹に入り、壁に叩きつけられた。

「がはっ。」

激しい吐血と共に電は壁に座り込んだ。

「はぁ、はぁ、互いに満身創痍、もう能力も切れ、エネルギーも限界に来た。だが俺はここに立っている、俺の、勝ちだ。」

「何を、、言ってるんだ?、あんたは。はなから勝つ気なんて無かったさ。、、言ったろ?俺は負けない。、、もう準備は整った。俺があらかた体力を減らせば、人間にさえ戻せば、誰もうちの社長には勝てねーんだよ。」

「え?」

 軽い一撃だった。小学生が漫才師の真似をしてやるような、軽く頭を殴っただけだった。が、結局そこまで体力が限界だったのだろう。死ぬまではしなかったが。気絶した。

「こんなもんか、全く疲れた。今回の仕事は。おい小娘。電を運ぶぞ。早くしろ。」

「あ、はい!!」

 その後、何でも屋に戻った三人は全身骨折に脳震盪と、かなりの重傷をあった電さんを才ノ目さん1人で手術し、無事成功。電さんは2日後の朝に目覚めた。

「ここは、勝てたのか?結衣、俺を看病しててくれたのか?ありがとな。」

「まだだ立ち上がっちゃですよ、傷が開いてしまいます。」

「そうだね、まだ痛む。ありがとうね、寝てないんでしょ?もう休んでいいよ?俺は大丈夫だから。」

「大丈夫です!私はまだ、、げん、き、、、で、、、。」

「寝ちゃったか。結衣、、ありがとう。本当に、、ありがとう。」

 優しい朝日の中、優しく少女を撫でる男の姿が、そこにはあった。



 さぁさぁやっと終わったチュートリアルだ。ここからが君の物語!天津 電!!君のお話の、始まりだ。


次回から1.5章です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ