第1章第三話
「結衣ちゃん、そろそろ起きて。」
電さんの声で起きた私は、声のする方を向くが、そこに電さんはいなかった。代わりに才ノ目さんがいた。
「よぉ〜、小娘ぇ。テメェ自分立場が分かっておきながらよくこんな寝てられんな。それにしても不思議そうな顔しやがって、今のは俺が言ったんだよ。電の声に似せて、やつならこう言うだろうって感じで。」
「どちらかというとなんでそんなことが出来るのかが不思議ですよ。」ベットから身を起こしながら私は言うと彼は座っていた椅子から腰を上げてこう言った。
「天才だから。簡単に言うとこの一言で済んじまう。つーかこんなこと話してる暇はあんまないんだ。とりあえず用意しておいたそこの服を着てガレージに来てくれ。場所は一回に降りればわかるから。いいか、俺の計画通りに動いてもらうぞ。俺の頭に失敗はあり得ないんだ。」少し真面目な顔をした。
「はい、分かってます。」そして才ノ目さんが部屋を後にしようと、ドアに手を触れようとした時、彼は唐突に何か思い出したように言った。
「あ、その服の下にあるエアガン。持っていけよ。エネルギーについての知識は心得てるよな。」
「はい、気や魔力などと言われる万人の体内に存在する原理不明のエネルギー。その力を付与すればエアガンも実弾と変わらない代物になる。あれ?でもエアガンって確か法律でアンチエネルギー剤が混ぜられてるから、これ使えないんじゃ。」
「だいじょーぶ。それ、俺の特注。しっかりとエネルギーが伝わるから」
「なるほど。わかりました。ありがとうございます。」
「いえいえ。」
用意された服は完全に今からジョグする人のそれだ。それを着て懐にエアガンを入れると私は一回に降りた。昨日は精神的に焦っていたからあまりわからなかったが、階段の裏側に大きなドアあり、そこには地下へとつながる螺旋階段があった。どうやらガレージにつながっているようだ。下から電さんと才ノ目さんの声がする。
「お、来たか小娘、とりあえずこの車に乗ってくれ。」才ノ目さんはそう言いながら紺色のミニバンを指した。中に入ってみると中はミニバン、というか車ではなかった。座席などはクルマというか戦闘機の椅子?だし、運転席周辺にはハンドルがなく、代わりに大量のボタンやレバーが付いていた。
「すごいでしょ。」トランクが開き、そこから電さんが大きく四角い何かを積みながら言う。
「はい、それは何ですか?」「あぁこれ?これはね、才ノ目の発明品を詰め込んだ箱みたいなやつ、まぁ他にも用途はあるんだけどね。多分使うから、中に入ってるのはその時までのお楽しみだね。」そう言って彼は車の壁に付いている畳まれた椅子を出し、箱の横に座った。
「よしお前ら、準備はできたなー?そろそろ行こうか。」才ノ目さんは運転席に座ると、「63号、準備は出来たな、目的地はこの小娘の親がいるところ、じゃあ発進。」
「え、逃げるんじゃないんですか?」
「は?何で、俺はこの店を離れる気は無いし、そもそも投げたところでどうせ戦うことになるだろ?だったからこっちから手を出させないようにする。大丈夫、殺し屋しないさ。ただちょっとおまえのバックには俺たちがいるぞ、てのを伝えに行くだけだよ。じゃあ進んでくれ、63号。」
『了解』シャッターが開き出した。すると目の前には十数人の男たち父親の手先だろう。
「構うな!目の前にいるやつはもれなく轢き殺せぇ!!」
『了解』急発進した車は人混みを掻き分けこの店があった商店街を抜け、道路に出た。道路と言ってもこの場所自体が世界浮上型高速道路ワールドストリームの下にある土地であり、整備などされてない道である。
「どうするんです!?なんか後ろから沢山来てますよ!」
「問題ねぇ、このままワールドストリームに乗る。シートベルトは閉めたか?」
「え?はい!」
「よし、じゃあ行くぞ、63号、フライト!」
『了解』次の瞬間車体の横から大量のターボと二枚の羽が出てきた。そしてエンジンの爆音とともに車体はワールドストリームに向けて空を飛んだ!
「ギィヤーーーー!」
「イッッケェー!」才ノ目さんは完全に夏休みの自由研究で実験をやっている時の小学生男子の顔になっている。
「着地するぞ!」電さんの声のすぐ後、体にものすごい振動とタイヤのゴムが擦れる音がした。
「よし、これでしばらくは安全だな。」
「ハァ、ハァ死ぬかと思った。」もう空飛びたく無い。
「おい、後ろから来てるぞ。」
「は?あぁなるほど予言水晶か、厄介なアイテム持ってんなー。まぁでもあれが使えんのは一回だけだし、おい電、あそこにいる雑魚どもの処理、任せられるか?」
「了解。」
「処理ってあれ全部ですか?無理ですよ流石に、30人は超えてますよ!」
「おいお嬢様、そんなに信用できないか?だったら見せてやるよ。なぁ電。」
「いいよ、何だったら車止めて見てってよ。それで心配が無くなるならそっちの方がいい。引きずられて失敗されても困るからね。」と言って電は四角い箱を開けた、中には手袋と手のひらサイズの円柱の棒が二本、そして無線機?のようなものが入っていた。そしてそれらを身につけ、彼はトランクのドアを開け、素早く車の上に移動した。ものすごいスムーズに。
一方敵サイド
後輩「おい、ありゃなんだ、人か?人が乗ってんのか?先輩、どうします?撃ちますか?殺っちゃいますか?」
先輩「あぁ、撃っちまえ、親父からも容赦するなと言われてんだ。」
後輩「了解っす」車窓を開け、懐にしまってあったエアガンを取り出し、電に向ける。ちなみにこのエアガンも裏ルートから手に入れた特注品である。
後輩「チャージ完了!オラァ!」電に向けて勢いよく放たれた弾丸は、電の体を勢いよく貫こうとする。が、弾丸は電の体に弾かれる。
後輩「くそっ、体にエネルギー張ってやがる。」
ー電サイドー
「効かねぇーよ。それにしてもすげぇ数、ここまでの数となりゃあまとめる奴がいるはず。そこを叩いた方が早いなこりゃ。『索敵』」
すると電の周りからエネルギーが広がる。
「…見つけた!」
円柱の棒の先端にあるボタンを押すと、それは警棒になった。そして電はそれを勢いよく投げた。
「オラァ!」
投げた警棒は勢いよく後方の車軍の間を走るバイクへ向かうが、バイクのライダーは警棒をキャッチすると、電のいた場所に投げ返そうとした、しかし、そこに電はおらず、慌てて四方を確認すると電は空中にいた。左手に2本目の警棒を持ち、ライダーに向けて振り下ろした。だが、ライダーはそれを手に持っていた解剖でなんとか防ぐ。しかし、バイクはバランスを崩しスリップ、ライダーはなんとか逃げられたものの横で走っていた敵の車は、バイクと衝突し、爆発した。
「っテメェ、やってくれたなぁ、お前らぁ!前の二車以外こいつを囲え!前の二車はあのミニバンを追え!」彼の命令で周りの車は電を囲むように停車し、各車から一人ずつ、小銃を装備し降りると、電とライダー間に一列に並んだ。
「高速道路で停車とは、随分と命知らずな集団だなぁ。」「お前だけには言われたくねぇな。」
「違いない。」電はそう言って少し笑った。
「いいかお前ら、俺が合図したら一斉に撃て。奴は手練れだ。この状況で笑ってられるのは相当の手練れかとち狂った奴くらいだからな。」ライダーはそう言うと手下たちの前に出た。
「お前は俺達の邪魔をするのか?」
「もちろん。」
「そうか、、なら、死ね。」
「断る!」
彼の合図で一斉に打たれた銃弾は、電の身体を貫く。はずだった。だが現実は違う。電に向けられた弾丸は全て彼を避けたのだ。いや、避けたと言うのは違うのだろう。何故ならその全ての弾丸は確実に彼に当たっていた。だが彼はその全てを往なした。指先を、脹脛を、動脈を、静脈を、脳を、そして五臓六腑までもを刀身にした。
「一体何が。」
「三日月流第一の構基礎の型『受け流し』」
「三日月流だと、、いや、それはない。その流派を受け継ぐものはもういないはず。あの戦争以降もう、、、⁉︎」
「そう言うこと。俺はあの戦争に参加している。」
「まて、あれは何十年前の話だと思っている。その形からしてお前は、、まだ少年じゃないか。」
「そうだよ。あの時はまだ十五じゃないかな。全くひどい話だよね。所でいいことを教えてあげるよ、おっさん。」
?
「『受け流し』は防御技だけじゃあない。カウンター技にもなる。ほら、君の取り巻き。」
後ろを振り向く。赤だ、黒だ、嗅ぎ慣れた赤の匂い。何故眠っている。何故お前らは動かない。
「このっ、、よくも、、このっ、」
「いま、怖がったね?」
振り上げた右腕は下ろす前には空を飛んでいた。痛みはない。達人が刀で切れば痛みすらないと聞くが、これがそれなのだろうか。
「それはないよ、確かに俺は腕は立つよ?でもこれはあくまで手刀で刀じゃない。ごめんね。」
二本目の手刀が切られた右肩の切り口から入り込むこれが死か、生きていたいが仕方がない。まだこれほどの痛みで死ねるのならいい方なのかもな。
「あっけないな、一部隊をまとめる長がこのくらいなら、まだ勝てそうだな。」
飛び散る血は池になる、高速道路というのは水捌けが良いように作られているのだが、これでも出来る水溜りというのは、やはり人間水分が70%の水分を持っているということを再確認出来る、もし食べるとしたなら、血抜きに時間がかかり過ぎてしまうのだろう。
あー最近書くことねー