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茶吉の日常

ドクターヘリ

作者: 茶吉

茶吉が地元の商店街を歩いていると、トンカツやさんの前でお爺さんが倒れていた。真っ青な顔で呼吸が苦しそうだ。茶吉は携帯で救急車を呼ぶとすぐに救急隊員が来てくれた。すぐにはその場を立ち去り難く、見ていると、通報したのは誰かと聞かれ、茶吉が手をあげた。でも通りがかっただけで見ず知らずの赤の他人ですがと強調したにもかかわらず、一刻を争うとてもあぶない状態ですからともかく一緒にドクターヘリに同乗してください。と言われて、サンダル履きのまま茶吉も乗り込んでドクターヘリで病院に急行した。お爺さんはあれこれ検査のため血を取られ、チューブを何本も繋がれた。医師たちも最終的には4名が呼ばれてきて手を尽くしたが残念ながら助からず、お爺さんは死亡宣告を受けた。

「1万8千円です」という医療費は 茶吉が初めてドクターヘリに乗せてもらえた事だし、香典がわりにと支払った。さて家に帰りたいな。だが、しかし、お爺さんの死体を置き去りにもできないし。本当にこのお爺さん、何か身分証を身につけてはいなかったのだろうか?看護婦さんに頼んでもう一回よく確認をしてもらうが、やはり財布はない。きっと盗まれたのだろう。だが、上着のポケットの奥に携帯電話が見つかったので茶吉が早速連絡すると、相手は心配していた様子ですぐに行きますからお待ちいただきたいと言う。数分で飛んできたのは仕立ての良い上等なスーツのいかにもエリート弁護士ですといった見た目の秘書だった。

「サクラメントス社の会長を看取ってくださったのはあなたですね。私は会長の秘書です。サクラメントスという会社はコカローラのブレンドの特許を持っている会社です。コカローラをブレンドしたのが会長なんです。

会長はいつも「わしを看取ってくれた人にわしの会社と全財産を継がせる」と公言していました。ですから会長の周りにはいつも人がいるのですが、昨日はたまたま、会長の趣味で、「思いつくままロトくじを買いあさる。」というのがありまして、側近をすべて巻いて、お忍びで散策している最中の発作だったのでしょう。さて、会長を看取ってくれた方ですからね、茶吉さんに会社と財産を譲渡する手続きをこの場でするために弁護士を連れてきました。サインをしていただく書類がこちらにあります。とソファーに座らされて弁護士の説明をもう一度受け、茶吉は数枚の書類ににサインをした。では茶吉さんはお帰りになって下さい。とエントランスの車寄せにはキャデラックのリムジンがドアを開けて待っていた。家まで送ってくれると言うので後部座席に滑り込んだ。そこにはメイドさんが居て、お飲み物はシャンパンでよろしいですか?とグラスに注いでくれた。一口飲んでスッキリしたら頭を整理したくなった。そこで、茶吉が会長職を継ぐことになったサクラメントス財団とはどれ位の規模の財団なんでしょうかとメイドさんに聞いてみた。「そうですねえ、ビルゲイシ財団よりは大きいですよ。」との答えだった。そんなの大きすぎてぜんぜん想像がつかないのだが、そんな想像もできない財団での会長職なんて本当に想像もつかない。と、メイドさんに打ち明けると、「我が社は高度にシステム化されていますから、会長が特に何かを求められるという事はありません。社員は全員、ハーバード卒で、システムの中で堅い運営をしています。

ご心配なさっているのは会長としてのお仕事についてだと思います。会長にはサクラメントス財団が投資する人や物を探してもらいます。それだけが唯一の会長の仕事です。

サクラメントス社の年間の純利益は1兆円ありますので、それを社会に還元するのが会長の仕事というわけです。ですから貯金ではいけません。ビルやマンションなどの不動産など固定資産はナシです。流動資産1兆円を還元して回すのです。消耗品を買ってください。買う事が世界経済をまわすことになるようなものに投資してください。その物なり場所なり人を選ぶのが会長の仕事です。という話だった。家に着いてササ美に話すと

これには身を乗り出してきて、「あぶく銭を使うのなら私得意よ。ビンテージワインにキャビアにフォアグラに、珍味を食べ歩いてリゾートを回ってカジノしまくるってことでしょう?まずはスーツケースを買いに行きましょうよ。それから旅行会社を回るわよ」と言う。だがそれは聞いただけで大変そうだ。そんなめんどくさいことしなくても自宅で座っていてできそうなことはないだろうか?今朝、ネコの里親探しをしている友人に「うちにはもう猫がいるから」と断ったのを思い出した。そんなに金があるなら里親になるってのはどうだろう。親がいない子供で、それでも自分を何かに役立てたい貢献したいと思っている子供を。そんな子供を募ろう。まずはインターネット上で交通孤児や天災などで孤児になってしまった子供のためのサイトを作った。そして茶吉が作った教育財団は、協賛してくれる人がどんどん集まってきて、みるみるうちに大きくなっていった。審査基準はとてもゆるいものにして困っている子達をどんどん養子にしていった。勉強したい子供には、どんどん勉強させて、大学を選ぶ際には防衛偉大 防衛医大を勧めた。すると皆優秀で、養子たちは防衛大学にバンバン合格していった。年間、何百人という自衛官が誕生するがそのうちの半数は茶吉の養子ばかりだ。したがって、数年もすると、自衛隊が実質的には茶吉の私軍になった。茶吉は総理大臣からも意見を聞かれるようになってきた。茶吉には特にこうしたいとかこれを変えたいとかいう意見は無かったがそれ首相と話をする機会があるというのはとても刺激的で楽しいものだ。それはサクラメントス社にとっては歓迎すべきことで、社員たちは「さすが初代会長が選んだ人だ」と、今この時代に日本に対してパワーを持つことの重大性を評価し絶賛してくれた。

サクラメントスに取っては日本はアメリカの属国ではなく、サクラメントスの属国になったわけだ。が、アメリカにとってもそれは問題ない。サクラメントス自体がアメリカを牽引しているのだから。

大統領は「サクラメントスは我が国を代表する企業であり、会長は私の友だちです。」とスピーチをする。

ただこの状況に一人、不満なのは妻のササ美で、「まだキャビアもフォアグラも食べてないしワインも飲んでないし、ただ茶吉さんが忙しくなったというだけで何もいいことないじゃない。わたしは、地位や名誉になんか興味がないのよ」と愚痴愚痴文句を言っている。そう言われてみれば、養子ばかり貰っていまでは千人を超える我が子が居るが、その中の誰一人としてよく知っているわけではない。本当の娘にも、何もメリットがない。娘のアサリが万が一にも就職できなかったりしたら、そのときは会長の特権として娘を受付嬢として雇ってもらうことくらいはできるとは思うが、それをアサリが望むかどうかはまた別の話で。だってアサリは英語が苦手だ。

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