君は太陽
──指先が触れた。
その瞬間、ほっしー……干野は驚いたような表情を見せる。
「黒さん、手冷たっ!こんなんでよく弓引けるね!?」
「……まあな」
引けている……と言ったら嘘になるかもしれない。それもそのはず、今日は10月にも関わらず朝から真冬並の寒さだ。放課後になってもそれは変わらない。他の部員も急な温度差が原因で、体調不良により学校を早退、或いは部活を欠席する人が後を絶たなかった。普段ならむしろ暑い位の射場。だが放課後になっても太陽が顔を出すことはなく、さらに風が吹いているため、実際に今自分も手がかじかみ、矢をつがえることさえ難しい。
「……寒」
あまりの寒さに俯きつつ、両手を擦り合わせる。すると突然、手が何かによって包み込まれた。それと同時に少しずつ手に温度が戻ってくる。
「どう?僕の手あったかいでしょ?」
顔を上げると、目の前にニコニコしながら俺の手を握っているほっしーが居た。
「ほっしー……?急にどうした?」
「いや、黒さん寒そうだったから、僕があっためてあげようと思って」
俺が驚いていることがわかったのか、より一層口角を上げて笑う。ほっしーはきっと、友達だから、部活仲間だからと思って行動したはずだ。そんな些細なことですら『可愛い』と思ってしまう俺は可笑しいのだろうか。全てが欲しい。そう思うことのできる唯一の相手。
「……さんきゅ」
太陽の様に笑う、そんな君がただ愛おしかった。