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本格的に戦闘を始めましょう

 3体のゴブリンを倒し、得意気な顔をしている美羽を尻目に魔力反響探知に集中する。

 以前、ハルグラトでしたみたいに、魔力反響探知の範囲を歪めて、森に向かった魔物たちを追う。

 魔力反響探知のスキルは失ったが、別にスキルを使わなくとも、やり方さえ覚えていれば可能だ。

 スキルを使うとほぼ自動的に発動や維持をしてくれるため格段に楽になるけど、それに頼っていると、今しているみたいな応用が利かない。

 自分の意思で魔力を扱うことができるから、魔法だってできるかも知れないんだけど、魔法をスキルを使わず行使するための技術も知識も全く伝わっていない。

 スキルというもの自体、何らかの技術を再利用できるようにこの世界を支配するシステムがパッケージングしたものだから、必ず魔法を行使するための基礎となる技術は以前は存在した。

 伝わっていないのは、システムが適用されていない全ての人々を排除したからだ。

 排除というと聞こえは良いけど、実際は虐殺なんだと思う。

 まぁ、そのうち、スキルから技術を復元する人も出てくることを期待しておこう。

 そんな事を考えつつ、魔力反響探知を続けていると、大きな群れを見つけた。

 歪に長く伸ばした魔力範囲のため、群れの全体像は把握できないが、かなり大きな群れだと思う。

「見つけたよ。大きな群れを。」

「数は?」

 美羽が心配そうに聞いてくる。

「まだ全体が見えないから分からないけど、聞いてた数は来てくれないと。」

「いや、一度にそんなに来られても困るから。」

「敵が来るまでの時間は?」

 陽菜が代わりに聞く。

「10分で12体、続く群れは30分ぐらいかな。」

「うん。」

 美羽は緊張で喉が渇くのか、しきりに唾を飲み込んでいたので、水筒代わりの革袋を渡す。

「強化した美羽さんのステータスなら心配することないから。」

 声を掛けたが、無言で水筒を突き返された。

 まだ少し早いと思うけど、一応、ボクも仕込み杖を抜いておく。

 陽菜は念の為、2振りの細剣を近くに突き立て、腰に蓮さんから借りたままになっている剣も差しているけど、どれも抜いてはいない。

 『スケールアップ』スキルを作るために行ったスキルの統合の際、武器強化の魔法を失ってしまったため、武器、特に刀剣類の損耗が激しい。

 だから、陽菜は最悪の事態にならない限り動かないようにしているのだ。

 緊張しながら待つというのは、もどかしくて時間を長く感じてしまう。

 ボクまで少し喉が渇いた気がする。

 革袋から水を口に含みその辺りの岩に腰掛ける。

 美羽も一言も発せず、じっと森を睨みつけていた。



「そろそろかな。」

 ゴブリンたちが森の切れ目に近付こうとしているところで、美羽に声を掛ける。

「この次の数は分かった?」

「ああ、100は超えてる。」

「アレで一割か。」

 既にゴブリンたちは橋にさしかかろうとしている。

「じゃ、強化をかけ直すよ。一撃で決めれない時は脚を狙って。でないと反撃を喰らったり、取り付かれたりするから。」

「うん。」


 先頭のゴブリンは人から奪ったのか、丈夫そうな盾を持っている。

 それを雄叫びを上げながら正面から叩き付けて吹き飛ばし、返して横のゴブリンの顔面を下から掬う。

 飛ばし過ぎて後が辛くなるかも。

 でも、ちゃんと言ったとおりに致命傷に届かない場合は脚を狙い、余裕ができれば止めを刺している。

 これなら数十ぐらいまでは加勢しなくても大丈夫と判断して静観する。

 今いる河原は崩した岩のおかげで数体ずつしか通れなくなっているけど、次の群れはかなりの数が押しかけてくる。

 深いところでも膝までしかないので、十分歩いて渡れるような小川なので、そこから渡ってくるヤツも出てくるだろう。

 幸い投げられる石は山ほどある。

 石を投げる足場を確保しつつ、投げるための石を積み上げ始めてみる。

 膝の高さぐらいまで石の山ができたところで、倒れていた最後の一体にとどめを刺すところだった。

「お疲れ様。次の群れまでまだ少しあるから、休んでて。」

 息を乱している美羽に休憩を促す。

 次の群れをしのげるか不安になるけど、まぁ、ボクも加勢すれば何とかなるかな。

 魔力反響探知は襲来を予想できるから、休憩をしっかり取れる。

 もちろん、ボクは無理だけど。

 石積みを終わらせ、緊急避難用として持ってきた小舟から農作業用のフォークを取り出す。

 そのフォークで藁束の様にゴブリンの死体を掬ったり、刺したりしながら脇に退けてゴブリンの通り道を作る。

 思ったより使い勝手が良いけど、これって身体強化してるから出来るんだけどね。

 岩で細くなった通り道の脇に積み上げておいたので、更にゴブリンたちは通りにくくなっている。

 近づくゴブリンの群れを数えようとはしてみるものの、密集したまま移動しているので、結局、正確な数は分からなかったが、やはり100体は超えてそうだ。

「あと、3分ぐらいかな。」

 美羽は無言で立ち上がり、森の端を見つめる。

 しばらくして、森の端から汚らしい緑の集団が姿を見せる。

 かなりの距離を移動してきたため、ひどく密集度にバラツキがあり、先頭は10体程度で、次の集団を引き離している。

 ただ、最も数の多い中央の集団には、半数程度がひしめき合っている。

 とうとう橋を渡り、美羽の正面にゴブリンか来た。

 美羽がハンマーを構える。

 さあ、戦闘開始だ。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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