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戦いの準備を始めましょう

 夜からの見張りになるため、昼は空くことになる。

 煮込んだ豆と硬いパンの昼食を食べたあと、美羽と二人で森に向かう。

 来ていきなり居なくなるのを見咎めるられるのも嫌なので、陽菜がを留守番で置いておくことにしたのだ。

「えー、ちょっと何するの?」

「ゴブリンを一網打尽にするために、地形を整えるんだよ。」

「ん?」

「うん、この辺かな。」

 着いたのは正確には森の際にある小川だ。

 村の周辺は牧草地になっており、何故か並べられた石で区切られている。

 村の北側にある丘の東側には川を挟んで森が見える。

 森に向かって架かる橋をそのまま北に歩くと少し広場のようになっているが、行き止まりになっている。

「この岩を落としてくれる?」

「え?」

 橋から少しだけ離れた場所に巨大な岩が数個積み重なっている。

 そこから奥の広場になっている場所から奥は大きな岩は見当たらず、丘を押さえる石垣のように石が積まれている。

「なんで?」

「ゴブリンを誘い込んで殲滅するためだよ。」

 積み重なる岩を崩せば通り道を狭めることができそうだからだ。

「ハンマーで石の継ぎ目を叩けば崩れると思う。」

「はぁ?こんな巨大な岩を?」

「身体強化の効果も上がってるから大丈夫だよ。」

 気の進まない顔のまま美羽がハンマーを背から下ろし、構えたところを見計らってスケールアップの魔法を4回重ねがけする。

 これでステータスは約2倍になる。

「ちょっと、優。これって…」

「新しい強化の魔法だよ。」

「やってみる。」

 美羽が大きなモーションながら正確に石の継ぎ目を叩くと、接している部分が崩れ、岩がバランスを崩し始める。

 少しずれ、割れる音をあちらこちらから響かせながら岩が傾き始める。

 少し怖くなって距離を取ると、大きな音とともに巨岩が河原に落ち、2つに割れる。

「できたわね。」

 スケールアップの魔法の効果に驚きを隠せていない。

「さて、これで迎え撃つ準備ができたかな 。」

「迎え撃つって?」

「この岩から向こうにおびき寄せれば、狭くなってるから少しづつ相手にできるようになる。」

「そういえば、同じようなこと前にもしてたよね。っていうか、向こうは行き止まりじゃない!?」

「うん。一気に攻めて来られない地形がないといくらボクらでも厳しいからね。」

「いや、これって文字通りの背水の陣!?」

「そうなるかな?まぁ、良い地形がここしかなかったし。」

「ここにおびき寄せて戦うっていうの!?」

「うん、その積りなんだけど…」

「こんなの無茶に決まってるでしょ!」

「もしものことがあれば、陽菜にも戦ってもらうし。」

「陽菜は戦う気じゃなかったの!?意味分かんない!?」

「そもそも美羽さんのレベル上げをするためでしょ。」

「でも…」

「大丈夫だよ。」

「何なのその自信は?」

「似たようなことやってきたからかな。」

「なんか、大変だったの、かな?」

 少しだけ神妙そうな表情を見せるが、再びいつもどおりに戻る。

「いや、無理。自殺行為でしょ。」

「大丈夫。保険に逃走手段は準備しておくから。」

「逃走手段って何よ?」

「船かそれっぽいの。」

「それっぽいって何よ?」

 そんな話をしながらだと、村に戻るのもあっという間だった。



 逃走手段は船代わりに戸板みたいなもので充分だと思っていたけど、美雨が陽菜を説得して、わざわざ隣の村まで小舟を借りに行くことになった。

 しかも、ボクが強化魔法で強化しながら5時間もかけてだ。

 今のステータスとスケールアップの魔法が無きゃ、絶対に無理だった。

 船探しと交渉にも時間を取られ、おかげで3日も無駄に費やしてしまった。

 そして、到着から5日目の朝、ボクら全員のシフトが空き、早朝から3人で。


「じゃ、いくよ。」

 そう言ってから、ボクは魔力反響探知のための魔力を周囲に拡げてゆく。

「お。いたけど、少ないな。」

 周囲500メートルで探知にかかったのは、2・3体ほどだった。

 それらのゴブリンと思しき魔物は魔力を発する場所であるボクのところに引き寄せられてくる。

 ボクは更に魔力を薄く、遠くに拡げてゆく。

 2キロメートルに届こうかというところで、先程見つけた魔物が視界に入りそうなぐらい近づいてきている。

「美羽さん。左手の森から3体。ボクは動けないんで、頼みます。」

「それぐらいだったら、なんとかできる。」

 腰掛けていた岩から立ち上がり、ハンマーを手にするのを見た。

「見つけた!今度は18っ!」

 魔力反響探知の限界にきそうになったところで、魔物の群れを見つける。

 これもゴブリンであることを願おう。

 俊敏な動物系の魔物の群れは美雨には荷が重い。

 そうこうしている間に、森から伸びる道にある橋にゴブリンの姿が見える。

「まだ数が来るから、もっと前に出て!」

 美羽は頷いて前に駆け出す。

 先頭のゴブリンは頭を横薙にされ、ここまで届く鈍い音とともに数メートルばかり飛ぶ。

 一緒に旅していた頃より少しばかり力も伸びているようだ。

 戦闘から目を離して魔力反響探知に意識を向けると、範囲の端に引っ掛かった群れの一部が、森に戻っていくのを感じる。

 大きな群れを呼んでくれると嬉しいな。

「奥を探るのに集中するから。」

 そう言いながら目を遣ると美羽が這いつくばるゴブリンの頭部に止めを振りかざしているのが見えた。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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