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再び魔物退治に勤しみましょう

 美羽を加えたボクら3人は、ガードニー島のサーンズベイに到着した。

 ボクが視力を失った原因の魔族がいた所だ。

 既に視力は回復してるし、もう一度、あの魔族と戦うことになったとしても、今の陽菜とボクは負けることはないため今は何も思わなくなっているが、陽菜も美羽もボクのことを心配してくれていた。

 ケアールドの冒険者ギルドでレベルアップに相応しい依頼を探してみたところ、かなりの数の魔物の討伐依頼が出されていたのだ。

 前の魔族の侵攻の際の残党がかなり残っていたのが原因らしい。

 それなりの面積はあるもののケアールドのあるブリューニ島に比べて人の住まない場所の多いガードニー島なので、敗走した魔物たちが隠れて力をつけており、辺境ほど大きな被害が出ていた。

 海軍の充実しているカレンでは沿岸部の魔物はかなり討伐が進んだが、内陸部は対応が遅れており、こうして冒険者ギルドにも依頼が来ていたのだ。



 カレン王室との交渉は概ね上手くいった。

 魔石の輸出は魔術師ギルドが取り仕切ることで認めてもらい、鉄道敷設については各領主との交渉の許可を得た。

 ただし、幹部役員に王室の人間が入ることと、国家緊急時には国家命令が優先される仕組みを備えることが条件とされたが、想定内だ。

 ハルグラドへの帰還は、一定のインフラ建築しかできない状況なので、ハルグラドに帰るよりも、外で魔石や魔物の毛皮などの販路を拡大するのを優先するよう言われており人と金が動き出せば呼ぶとのことだ。

 ちゃんと所在を知らせておけば、秋口までは問題ない。

 そんな事情もあって、結局、ボクらは美羽のレベルアップの依頼を受けることにした。

 それも、鉄道敷設の交渉を各地の領主と行いながらという予定だった。

 本来はケアールドのあるブリューニ島のみを周る予定だったのだが、木田から直接捩じ込まれたのだ。



「こっちはゴブリンだっけ?」

「うん。本来は警備の依頼だよ。計数不能だって言ってたから。」

 島の東部にある村からの依頼で、軍の討伐を待つ間の警備の依頼だ。

 ゴブリンが相手なら、頭数さえ揃えばなんとかしのげる。

 だから護衛の依頼になっているのだ。

 近くの街の宿で一泊していたので、まだ日が高くならないうちに村の近くに着いていたので、周囲を見て回り、日が高くなってから村に入ることにした。

 村には急ごしらえの柵が立てられており、移動可能なバリケードを置いてある場所に農作業用のフォークを持った村人と革鎧を着込んだ男のが門番代わりに簡単な造りの見張り小屋にいるのが見える。

 ボクらの姿を見ると、2人ともすぐに下りてきた。

「冒険者ギルドで依頼を見て来た者です。」

「おお、やっと来てくれたか。」

 冒険者らしき男が応える。

 カレンにだけは冒険者ギルドが存在するが、いわゆる冒険者と行った人間は非常に少なく、そのほとんどは退役軍人と僅かな武芸者だけなのだ。

「ボクは優。それと陽菜と美羽です。」

「オレはトム。待ってたぜ。」

「早速、村長のところに向かいたいんですけど、あの家ですよね?」

「ああ。」

 単純だが唯一村で2階建ての家を指さしてみるが、当たりのようだ。

「人数が少ないから、寝ずの番が大変だつまたんだよ。これで少しは楽になる。助かるよ。」

「それじゃ、また後ほど、ローテーションの話をしましょう。」

「やっと寝ずの番も楽になるな。」

「ええ。お互いがんばりましょう。」

 そう言ってボクらはまっすぐ村長の家に向かった。



 唯一の2階建てとはいうものの、さほど周りの家と変わりない造りのその家のドアを叩くと、50代のふくよかな女性が現れる。

「冒険者ギルドからの依頼を見てきました。村長とお話したいのですが。」

「そうかい。いま、呼んでくるから、ここで待ってな。」

 別に2階にいるわけでもなく、ドアもない造りの部屋の奥から女性と同年代の男がこちらへ向かってくる。

「何で3人も来たんだ?」

 不機嫌な様子で村長らしき男はボクらに話しかけてくる。

「ギルドの依頼は確認していますが、ボクらはこの3人でパーティーを組んでいますので、減らすことはできないんです。」

 依頼では合計4人の冒険者の募集をしており、残りの枠は2人だったのである。

「報酬は2人分で大丈夫です。ギルドにも話を通してありますから、安心してください。」

「本当だろうな。」

「はい。これを確認してください。」

 懐から紙切れを取り出して手渡す。

「ギルドとの合意書で、ガードニーの責任者のサインもあります。」

「本物かどうかわからねぇよ。」

 報酬は期限不明なため、一人当たり金貨5枚と固定されている。

 死亡した場合でも、ギルドを通して遺族なりに支払いをしなければならないようになっているため、来た人数分の報酬は必ず出さないといけない。

 寒村でこれだけの報酬を用意するのはかなり大変なのだ。

 おや、村長の書類を見る目つきが怪しい。

「スージー、お前も確認してくれ。」

 先程の女性が村長の横に来て、書類を覗き込む。

「言ってることに嘘はないみたいだね。」

「はい。」

「なんでわざわざ報酬を減らしてまで依頼を受けるんだい?」

「早急にジョブをレベルアップさせる必要があるので、少しでもたくさんの魔物と戦う必要があるんです。それにこっちの美羽の武器はハンマーなんで、手入れもそんなに要りませんし、彼女は『鍛冶師』なんです。二人分の報酬がでればなんとか黒字にできますし、それで、報酬についてなんですが…」

「報酬は本当に2人分しか出さないぞ。」

 報酬の話は先払いで1人金貨1枚分を支払うことになっている。

 パンティアに比べて農村部でも豊かで、貨幣経済が浸透してるとはいえ、農村部で大量の現金を用意するのは一苦労だ。

 村としても負担が大きいので先に話すことにしたのだ。

「ええ、大丈夫です。ただ、少し相談したいことがありまして。」

「何だ?」

「もしも、ゴブリンを早く殲滅できたら、先に軍が着く前に報酬をいたたけますか?」

「はぁ!?」

 この村でゴブリンは計数不能、100体を軽く超える数が目撃されている。

 個々の強さはそうでもないものの、自らの死を恐れず、数の力を活かしてくる。

 死を恐れない集団ほど恐いものはない。

 前回のガードニー島の襲撃とは違い、武器の供給を受けてはいないため、大半が素手か棍棒と聞いている。

 脅威度は低く、ハンマーを得物としている美羽にとっては大量の敵でも体力の続く限り倒し続けられる。

 いや、しばらく戦闘をしていないようだから、身体を慣らす必要はあるだろうけど。

 それに、いざとなれば陽菜もいる。

 こちらの戦力には若い娘が2人もいるから、放っておいてもゴブリンたちは寄ってくるし、既に戦場も下見を済ませているので、少し準備をすれば、あとは体力の続く限り蹂躙するだけだ。

「まぁ、もしもの話ですけど。」

「そうなったら、その時点で報酬を払ってやるよ。」

「それから、寝泊まりする場所はどちらになりますか?」

「アンタらの寝る場所は、えっと、1部屋で良いのかい?」

 奥さんの方が答えてくれる。

 まぁ、そう思われても仕方ないかな。

「余裕があるのなら、2部屋いただきたいところなんですが。」

「まぁ、家はいっぱいだから貸せないけど、倉庫は広いから、好きに使いな。贅沢なものは出せないけど、飯だけはちゃんと3人分食わせてやるよ。」

「本当ですか!ありがとうございます。」

 今回の依頼では寝床と食事は依頼主持ちだったので、すんなり話が決まったのはありがたい。

 まぁ、お金も出さずに人が増えるのは、向こうとしてもお得なことだろうし。

「話がまとまったんなら、今来てる他の奴らと話をして、今夜からの見張りをどうするか決めてこい。」

「了解しました。」

「ああ、使うのは裏の倉庫になるけど、ちゃんと荷物はどけてあるよ。今は片方が部屋にいるはずだよ。」

「お名前は?」

「ケインって言ってたよ。」

「ありがとうございます。早速話をしてきます。」

 ボクらは荷物を置くのもあるから、早々に倉庫に向かった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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