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美羽からの依頼を受けてみましょう

「ああ、最近、南方貿易でゴムが輸入できるようになったからな。」

「良かった。ゴムがネックだとは思ってたんですよ。」

「工業機器と蒸気船をメインに考えていたから、その発想はなかったな。」

「そうですよね。出力の大きいものなら、燃料じゃないとコストが合わないですけど。しかも燃料と水を積まなくて良いなら、機構も相当簡略化できますよね?」

「恐らく魔石ボイラーは既存の技術だけで実現できる。まぁ、湯を沸かすだけだからな。燃費は度外視するとして、開発のネックは道具の開発だな。まだ螺子を切るための工具も開発できていないんだ。」

 ボルトやナットがなければメンテナンス可能な機械が作れない。

「それに幾つか条件をのんでくれるのなら、開発の融資も検討します。」

「君が融資までしてくれるのか?」

「で、その条件は?」

「ちょ、ちょっと待って、優くん!」

 陽菜が話を遮ってくる。

「勝手に話を進めてるけど、美羽の依頼を受ける気なの?それに融資まで。」

「うん。今の時点でかなりの投資をしてしまってるのを考えると、蒸気機関の開発が頓挫すると思うんだ。」

「まぁ、確かにそうだけど。」

「うまく蒸気船や蒸気機関の開発にこぎつければ、莫大な利益を生み出すだけじゃなくて、流通量が底上げされることによって、国全体の産業が活性化される。それに農業機械の開発にまで及べば言わずもがなだよね。」

「そこは大切だと思うんだけど…」

「それで、その技術を持つのがここだけじゃ発展が難しい。だから、パンティアから技術を教わりたい人を連れてこようと思ってるんだ。」

「パンティアから鍛冶師を連れてきて、教えろってことだな。」

「ええ。」

「構わん。」

「何十人単位でも?」

「いや、寧ろ有り難い。実際に蒸気機関車の開発や作成に入れば、圧倒的に人手が足りなくなるのがネックだと思ってたところなんだ。まぁ、技術は見て盗め方式になるがな。」

「じゃあ、そっちは大丈夫ですね。」

「ああ。」



「優くん。本当に美羽の依頼を受けるの?」

「うん。蒸気機関の発明はこの世界で産業革命を起こすためには必須だから。それはひいては一般市民の富の蓄積につながると思うんだ。」

「そうなると、前に会った『灰製造人ギルド』みたいなのが台頭するんじゃない?」

「ああ、それで気になってたことがあって。その『灰製造人ギルド』の活動もそれなりに人の耳に入っているとは思うんだけど、カレンの王室は何の対策もしてないよね。」

「そうなのかな?確かにカレンには何の干渉もしてないけど。」

 ちなみにパンティアはルース教の教えを重視して近代化を避けるようになっている。

 システムの目的の一つは生命の精神的なエネルギーを集約することで、大量殺戮兵器の開発をさせないことが必要になる。

 そのため、伝統主義的な教えを混ぜ込んでいる。

 本来は武器類に限るというものなのだが、教会の指導は生活に使用するもの全般に及んでいる。

「それに王室は商人ギルド側に立ってるように見えるんだけど、対立する職人ギルドを抑えようともせず、スキルを持つ使徒を職人ギルド側に向けて放逐してるんだよね。」

「それが?」

「海外との交易や貨幣流通はそれとなく振興してて、それなりの成果を収めてる。一番大きいのは農村部がパンティアと比べて豊かなんだよね。」

 何が言いたいのか分からないという顔だ。

「王室がコントロールしてるんじゃないかと思ってるんだ。もしかしたら、『灰製造人ギルド』も王室が関わってたりするのかも。」

「何それ?自作自演?」

「うん、社会の成熟を早めようとしてるように見えるんだ。」

「王族の転生者は初代だけだし、教会とはちゃんと付き合いをしてたと思うんだけど。」

「それを確かめるついでに、乗ってやろうかと思っててさ。まぁ、どっちにしろ儲かるし、市民の生活は良くなる話だし。」

「バイクが欲しいだけでしょ?」

「だけ(・・)は言い過ぎだけど…。鉄に関する基礎的な術開発を促進できるだけじゃなく、魔石を応用する技術も必要だと思うんだ。石炭や石油が無いこの世界だから、魔力も貴重なエネルギーとして考えていかないといけないってのもあるし。」

「石炭も無いこっちの世界で蒸気船やSLを動かすの?」

 この世界自体が地球と比べて非常に非常に新しく、動植物も基本的にどこか(大半は地球からだけど)から持ち込まれたものが多い。

 それは陽菜の先代から行われていることで、若い惑星をテラフォーミングしているという表現が正しいのだと思う。

「燃やすのは石炭じゃなくても良いし。幸いカレンには泥炭地もあるからしばらくは燃料に困らないけど、後々、植林計画と木炭工房を建設しようと思う。石炭や石油が無いから電気が普及するまでは蒸気機関を中心にしないといけないし。少しでも早く普及させるべきだと思うんだ。それに、財団から出資して利権を得ることができれば他の国へ拡げたりもできるからね。」

「まぁ、ちゃんと考えての答えなんだよね。」

「うん。どうも美羽さんとは合わない?」

「合わないというか、苦手なんだよね。」

「そっか。陽菜がついてくるのが嫌なら美羽さんと2人で行こうか?」

「私も行く。」

「ごめんね。しばらくの辛抱だから。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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