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冒険者ギルドにいってみよう

 冒険者ギルドの建物は古い旧市街とでも言う場所に建っていた。

 その建物も二階建てから三階を増築しているのか、壁の色が違う。

 周りにはそんな建物ばかりだが、狭めの目抜き通りには身なりの良い人間が多い。

 場違い感は否めないが、勇気を振り絞って、冒険者ギルドの扉を開く。

 特に受付カウンターみたいな物はなく、デスクが並び、事務仕事に追われる女性たちが見える。

 若いが、育ちの良くなさそうな娘がこちらに向ってくる。

「すみません。冒険者ギルドに初めて来るのですが。」

 いかにも育ちの悪そうな娘が鬱陶しそうな表情で近づいてくる。

「仕事を探すなら、ここじゃなく、北街の方だよ。どこの田舎モンかは知らないけど。そんな恰好でこの辺をうろついていたら身ぐるみ剥がされるよ。さっさと向こうに行きな。」

 けんもほろろに追い出されそうになるところを、陽菜が食い下がる。

 しかし、一体どうなってるのか、全く分らん。

 この子も、黙って笑顔でいてくれれば、それなりに美人なのにな。

「昨晩、この街に来たばかりなんです。場所とかも詳しく教えてくれませんか。」

 奥から見兼ねた事務員の女性が近づいてきた。

「アン。こりゃ、使徒じゃないかい?」

「そうです。先ほど、この街に着いたところなんですが、王城から追い出されまして、ここなら何とかしてくれるかもと聞いたんです。」

「アン。テツオを呼んどいで。」

「へ?何でですか?」

「テツオも同じように使徒だったのさ。テツオも興味があるだろうしね。」

「ありがとうございます!本当に困っていたんです。」

「しかし、テツオのせいで、使徒の扱いも酷くなっちゃってるね。」

「テツオとおっしゃる方は、前に来られた使徒なんですよね。」

「ああ。詳しくは本人から聞きな。」

 応接セットに座るように手招きするので、それに従って座って待つことにする。

 10分ぐらいは経っただろうか。

 一人の男が奥から姿を見せる。

 日本なら、どこにでもいそうな、五十になるかどうかぐらいのおっちゃんだ。

 まさか、それは、スーツか?

 ネクタイは締めてはいないものの、シャツにジャケットだ。

 しかも、ズボンもちゃんとある。

 カレン王国の連中はこのスパッツみたいなのしか用意してくれていなかったからな。

「はじめまして。私は木田哲夫。君達の先輩だな。」

「はじめまして。私がカレン王国に来た使徒のパーティーのリーダーをしています、陽菜と申します。」

 陽菜は敢えて、下の名前だけを名乗る。

 こころが困ると思ってのことだ。

 本当に気が利く優しい子だ。

 陽菜をリーダーにしたのは正解かも知れないな。

「しかし、教会も王国も一体何をしてるんだ。全員女の子のパーティーなんて、危なくて仕方無いな。」

 わざとか?嫌がらせか?

 おっさん、喧嘩売ってんのか?

「ここは日本とは違う。女の子たちだけで外を歩けるほど、この国は治安が良い訳じゃない。」

 ボクの機嫌が悪くなってきたのに気付いたのか、陽菜がフォローを入れる。

「優くんは、男の子です。」

「あ、ロリ男の娘か。」

 とりあえず、一発殴る。

「冗談だよ。優くん。けど、君じゃ幼すぎる。この国では、いや、この世界じゃどこに行っても危険なのは本当だ。それに、この国に来たということは、皆んな、非戦闘職ばかりなんだろ?」

 つい、黙り込んでしまう。

「気休めになるか分からないけど、アドバイスはさせて貰うよ。」


 ボクたちから自己紹介をしたあと、木田から冒険者ギルドやこの国の各ギルドを中心とした勢力図を教えてもらう。

 20年ほど前までは、商人ギルドと魔術師ギルドしか存在していなかった。

 職人たちは商人ギルドの好きなようにされており、生活を守るため同職で結託し、同職ギルドを設立した。

 設立当初は、国からもそのは存在を認められず、弾圧対象となっていた。

 そこに、使徒たる転移者が横槍を入れたのだ。

 冒険者ギルドは犯罪歴の無い人間を見極める事ができることから、登録者への武器斡旋を行うことにより、一般市民、ひいては犯罪者への武器の流通を激減させるとともに、犯罪者でない者へ優先して仕事の斡旋を行うことにより、大きく治安維持に貢献した。

 その点では大きく王室へ貢献したのであるが、武器と防具については、護衛や魔物討伐の依頼をこなすため、適正価格での取引が必要であったが、商人ギルドとしては、犯罪者対策ということで武器類の価格を高騰させるといった手段をとっていたため、とひと悶着あり、同職ギルドから納入することとなったのだ。

 これが、これまで規制対象となっていた同職ギルドの地位向上とともに、商人ギルドの収益を奪うこととなったのだ。

 王室や商人ギルドは、大幅な治安向上という成果をもたらした冒険者ギルドを面と向かって非難することもできず、関係は最悪な状態らしい。

 元々、冒険者ギルドを創設したのは、前々回の転移者である、魔道具師であるケータという男だったのだが、武器を取り扱っていた豪商によって暗殺されたらしい。

 ケータと親交が有り、更に前の転移者でもある木田が仕方無く冒険者ギルドの面倒をみることになったとのことだ。

 取り敢えず、ボクらは商人ギルドと魔術師ギルドには近づかない方が良いってことはよく分かった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
こちらもご覧ください。


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