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飛翔魔法の魔法陣を使ってみよう

 姫はボクらが話した大筋どおりの復興財団の設立計画を男爵に説明する。

 簡単な説明しかしてないのに、スラスラと男爵に話をしてくれている。

 見た目だけじゃなくて、そうとう賢いんだな。

 男爵側は復興にあたっての、これまでの市街地の地図を基に都市計画の立案及び利権者仲裁を行うが、基本的には費用負担は行わない。

 そのため、大半の反対があれば男爵の意見は拒否できる。

 姫は気を利かせて、復興計画の立案や、必要になった場合の人馬機材の貸出しも条件に入れ込んでくれた。

 財団の寄付行為(財団の設立の決まりごとだと遥人が言ってた)というはまだ形にはなってはいないものの、大筋で反対は無かった。

 まぁ、ボクらが出資者なので、ちゃんと発言権はトップだし、男爵に金を出させない限り、大丈夫だとは思う。

 男爵もしばらくは現金の余裕も無いだろうし。



 王都まで、往きは飛翔魔法の魔法陣の使用も認めてくれた。

 小型の魔石を使うようになっていて、ひと一人ならだいたい30個から40個必要で、体重や荷物の量によって変わるらしい。

 一人あたり金貨70枚相当という破格のコストだが、片道二週間という時間の短縮なら、なんとか見合うだろう。

 それより、一月も物資が届かなければ、砦跡にいる人々は確実に全員が餓死していることだろう。

 二週間でも子どもたちの命は充分に危うい。

 子どもとはいっても、捨て子と娼婦の子どもしかいない。

 ニコライがいれば、ボクらの意を汲んで子どもたちを優先してくれるとは思うが、この世界は子どもには優しくない。

 苦境が続けば不満が溜まる。



 陽菜と2人で、城に造られた飛翔魔法陣の部屋に案内される。

 部屋といっても、広場に四方を石壁で囲まれただけのものだ。

 まぁ、飛ぶためのものだからな。

 魔法陣中央の祭壇のようなもの上部は漏斗のようになっていて、その穴に魔石を入れる。

 必要な量の魔石が投入されれば、この祭壇のようなものの中心にある宝玉が光るという。

 ジャラジャラと魔石を投入していく。

 もう数えるのも面倒だが、200個近くの魔石が吸い込まれていった。

 やっと、祭壇の宝玉が光る。

 魔法陣が魔力光で満たされると、光のチューブが空にあがる。

 次の瞬間、身体がチューブに吸い込まれてゆく。

 かなりのGが身体を襲う。

 Gに耐えるのが精一杯で、流れる景色はほぼ見えない。

 意識が朦朧としてきたところで、石床に叩き付けられた。

「陽菜さん、大丈夫?」

「うん。」

 ボクがクッションになってたのが良かったのか?

 久しぶりに陽菜と密着することになって、温かさと柔らかさに照れてしまう。

「誰かが来たぞ!」

 城の衛兵に囲まれる。

 その統一感のある鎧は王都の城の衛兵だろう。

「いたたたた。これが転移申請の書状です。」

 陽菜が退いてから立ち上がり、懐から取り出した2つ書簡を手近な衛兵に渡す。

 姫と男爵の連名でボクらの飛翔魔法陣の使用許可と、もう一通は姫から王家への親書で今後混乱が少ないようにと放射線の被曝症状が起こる事を書いたものだ。

 衛兵に簡素な部屋に通され、そこで手紙の検閲の結果を待つ。

「優くん、王都の魔石は少しだけ相場が下がってるけど、需要がすごく上がってる。」

「どうして?」

「もしかしたら、ジャンさんが優くんの作った魔石を売るために声をかけてくれてたのかも知れない。」

「魔核の方は?」

「流通量も価格も上がってるよ。」

「だとしたら、ジャンさんが買い集めてるんだろうね。」

 既に30分ぐらいは経っただろうか。

 早くしないと日が暮れてしまう。

 そうなると、一日無駄にしてしまうので、内心、かなり焦っていた。



 足音が部屋に近づいてくる音が聞えてくる。

 目の見えない間に得意となった聞き分けだが、嫌な予感しかしない。

「陽菜さん、かなりの数の武装した人間が来る。しかも、急ぎ足だ。」

 ボクと陽菜は身構える。

 勢いよく開かれた扉から現れたのは、この国の王子だった。

 続いてフルプレートの騎士が2人と武装した衛兵が4人後を追って入ってくる。

「ヒナさん!再び会える日を楽しみに待ってましたよ!」

 そういや、前に謁見した時に、陽菜に食いついてきてたよな。

「ヒナさん、少しお疲れのようですね。疲れを癒やすのも必要です。浴場を支えるように手配しますね。」

「あの、今は急ぎの用がありますから…」

「そうですか。残念です。」

「王子殿下。今回、ハルグラトで起こった魔物の大発生ですが、強大な魔物が現れまして、街が壊滅状態になったんです。その復興のために…」

「ユウくん、姉さんに会ったんですよね。」

「えっと、ええ。」

 人の話を聞けよ。

「元気そうでしたか?旅疲れは見えて無かった?あと、ハルトと姉さんの様子はどうでした?」

 何を言ってるんだコイツは?

「とりあえず、ハルトとどんな感じだったか、教えてください。」

「いや、街の復興の打ち合わせをしただけで、すぐにこちらに向かいましたので、その辺りの様子はよくわからないのです。」

「君は姉さんが心配じゃないのか?」

 何でボクが心配しないといけないんだよ。

 コイツ、ブラコンなのに陽菜に食いついてくるのかよ。

 返答に困っていると、遅れてきた老齢の男が助け舟を出してくれる。

「王子殿下、今回、彼らは壊滅的な打撃をうけたハルグラドの復興のために訪れております。人命がかかっておりますゆえ、お急ぎの様子です。」

「はい。一日遅れれば、それだけ飢えの被害も広がります。姫も少しでも早い復興を望んでおいででしょう。」

「うむ。これ以上は姉さんも困ることになるか。」

 大丈夫か、この王子。

 そう言えば、次男とか言ってたよな。

「貴方は?」

「侍従長のスラヴィ・カリブです。今回の話は既に宰相や大臣の耳に入れるよう手配しております。連絡だけつくようにしていただければ結構です。」

「城下の商人、ジャンさんの商会に向かいます。」

「ああ、彼のところか。他の部署からは好かれてないが、宮中ウチは懇意にさせてもらってる。平民出身の商人だが、無駄に浪費しようとするウチの人を嗜めてくらるから助かってるよ。」

 あの人の王家との繋がりって宮中ココだったのか。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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