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復興財団を設立しましょう

 定期便事業もしているということだったが、確かにヴィネフの言うとおり、主だった商品は豚肉で、塩漬け肉の他にベーコンやソーセージも取り扱っていた。

「ニコライ、あのヴィネフの商会の主人ってどんな奴か知ってるか?」

「最初に来てたが、詳しいことは何も知らん。」

「ここに来てたのか?」

「ああ。」

「どんな奴だった?」

「確か名前はユーキ。使徒のご先祖さんからもらった名前だってな。敏いし腕もそこそこは立つ。まぁ、使徒みたいな化物って感じじゃなくて、普通の人間の範囲でな。それに坊主みたいに黒目と黒髪だった。」

 そりゃ、先祖にいるんじゃなくて、ソイツそのものが日本から来たんじゃないか?

「何かスキルは使ってた?」

「そう言われれば、全くスキルは使って無かったな。強化中の嬢ちゃんみたいな馬鹿げたステータスでもなさそうだったし…」

 まぁ、剣術のように基本スキルだけなら、使用しているのか分からないだろうし。

「そういや、パンティアの使徒もソイツのことを気にしてたな。というか、絡んでたぞ。」

 気になるけど、こころさんが一緒にいるなら、何かを企んでいるとかじゃないんだろうな。

 害はないけど気にはかかる存在か。

 気には留めとこう。

「それより、財団設立の話だ。」

「その様子だと、魔石は売れたのか?」

「すぐに全部が売れるやけじゃないけど…」

「首尾は上々ってわけか?」

「ああ。」

「細かいことは男爵の城に向かいながら聞くぞ。」




「魔石の換金には時間がかかりますが、民需も増えてますから、大型も含めて売れる見通しがあります。」

「民需だと?」

「ええ。今まで王家や騎士団が魔石を採り、王家で使用するのがほとんどだったのですが、最近は回復薬や魔導ランプなども民間で使用されるようになってきていますので、魔石の需要が高まってきているんです。民需とはいっても、今はまだ貴族階級が主ですが。」

「うむ。」

「この街は魔物の毛皮などを主な交易品として取り扱っていました。魔物を倒せば当然、魔石が手に入る。これまでは供給が不安定で商品として流通していなかった魔石、まぁ、採れるのが魔石になる前の魔核が主だったのでなかなか使いづらいというのもありましまけど、需要が高まっている今後は販路さえ確保できれば売れるようになります。小さく高価で鮮度や品質が落ちない魔石は、遠くの場所へも容易に売れます。この街の新たな産業として成り立つようになるんです。」

 再び、男爵の城で遥人のパーティーも合流して復興計画の打ち合わせをすることになっていたのだ。

 ボクとニコライがスラム側の代表者として参加している。

 これまでの市民側の代表として、何人かの商人が参加する予定だったものの、体調不良ということでイリアンという男しか参加していなかった。

「金策ねぇ。なんとかして資産運用できないものかな?」

「ハルト殿、運用とはどういうことかね?」

 家令のイヴァノフが聞いてくる。

 家令の彼は、男爵家の組織運営や財産管理も行っているらしいので、聞いてくるのは当然だろう。

 執事とどう違うのかよくわからないけど、なんか大変そうだな。

「財団に蓄えられる財貨を融資や投資をすることによって、財貨を増やしたり維持したりすることだよ。」

 遥人が説明してくれる。

「どうやって増やすというのだ?」

「新たな事業を行う際に金を貸付けたりするんだ。」

 まぁ、現状の経済情勢からすると、貸付け一択なんだろうな。

「そりゃ、ただの金貸しじゃないか。」

 まぁ、そう言われるとは思ってたけど。

「とりあえず、現状、資産運用は難しそうだから、都市計画のうちのインフラ整備からいこうか。優くんもそこは力を入れたいだろ?」

「ええ。」

「主らの言う『インフラ』とはなんじゃ?」

「上下水道や道路などの都市の基盤のことでだ。」

「ええ、ボクらの言っているのは、その3つです。」

「上水道となると、水を街に引くということか?」

「ええ。」

「王都でも王城しか無いと聞くが。」

「街の発展を考えると、整備していた方が良いですから。」

「うむ。」

 よく考えたら、上下水道が完備された街がまだ存在してないんだ。

 最新設備を備えた都市になるってことか。

「ちょうどこの周辺は小高い丘と川と条件に恵まれていますから。」

「その辺りは主らに任せることにしよう。」

 次は、魔物狩りの産業化の話題だな。

 これまで、魔物の大発生は、封印された未唯とあとの二人から漏れ出る魔力で通常の環境より魔物がよく育つようになったことと、封印内に魔力が溜まり過ぎると、それが分体として漏れ出てて、それから逃げるために魔物たちが逃げ出すことにあった。

 ちなみに未唯の封印には地脈の力を利用する必要があり、地脈自体はあの地にいまでも息づいている。

 これまで程ではないものの、今後も他の土地に比べれば、魔物の発生は多くなる。

 未唯たちはもういないため、今後は定期的な大発生は起こらないが、定期的に間引く必要はあるだろう。

 そう考えると、間引きさえしていれば、純粋に街の発展を考えていけばいい。

 そして、魔物の間引きはそのまま産業にすればいい。

「都市計画の主要部分は男爵側でしてもらいます。」

「つまり、我らの計画通り上下水道や道路の費用はそちらで出してくれるという解釈で良いのかね?」

「概ねそうですが、出資者として意見は言わせていただきます。それと、都市外の街道などはそちらにお願いしたい。あと、城の行政機能の一部を街に移していただきたいと思ってますが、こちらで負担するのはあくまで仮設の建物までです。」

「うむ。」

「とりあえず、その条件で話を進めていきましょうか。」

「分かった。」

「それと、大発生で周囲の魔物が活発に活動している件なんですが、魔物狩りはボクらでさせてもらえませんか?」

「一体何故だ?」

「先程も説明しましたが、魔石も含めて魔物素材の調達はこの街の産業として根付かせていきたいんです。ニコライは魔物狩りのためこの街に出てきました。同じような魔物の狩人がこちらにいます。彼らに経験を積ませるとともに素材の確保もしていきたいんです。それと、今後の復興を支えるためには交易路の安全の確保も必要です。少しでも早く進めたいんです。」

「我らとしては特に問題ない。だが、どうやってそんな広い範囲をカバーする積もりだ。」

「これまで通り関や街の治安維持は城の兵士たちには警備は続けてもらいます。そのうえで、魔物を発見した場合、狼煙やその他の連絡手段を使ってボクらに連絡をしてもらう。そして、連絡を受けたボクらが魔物を狩りに行く。機動力を確保するため馬などの手配は必要になりますが。」

「うむ。魔物からの収入は減るだろうが、こちらとしても兵力が温存でき、兵のリスクを減らせるメリットもあるな。」

 本当に危惧しているのは、中性子線被曝によって、兵力が減退するだろうから、その補填も必要だと考えているからと、魔物の素材の確保をしたいからということの2点だ。

 何故、中性子線の被曝があるのかというと、あの爆発を起こした芽郁の『権能』だ。

 魔族にはジョブはなく、その代わり魔王クラスには『権能』を与えている。

 彼女の『権能』は『重力操作』だ。

 陽菜によると、ブラックホールは何でも吸い込むものだと思って作ったものらしい。

 まぁ、ボクもそう思っていたけど。

 そして、あの爆発の正体は、その能力を極めた極小ブラックホールの発生及び消滅によるものらしい。

 単純に言えばその消滅の際に、莫大なエネルギーと放射線を発するのだが、そのうちの中性子線というものは、物体を透過する能力が高いため、かなりの被曝被害が出ると考えられるのだ。

 ちなみにこの『権能』は、使いこなせるだけの能力、ステータスになるまで発現しないらしい。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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