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久しぶりに遥人と話をしてみましょう

 文官の城に召喚して詳細を改めて話を聞きたいという申し出を受け、彼らに付いて行くため、準備のため、荷造りと予後の悪い者が居ないか見るため、少し時間をもらうことにした。

 荷造りといっても、既に纏まっているので、持ってくるだけだ。

 重傷者の様子を見て問題ないのを確認し、陽菜と二人になる。

「今から城に行くと、遥人さんと会う事になる。陽菜さんの知ってる事を教えて欲しい。ここを出てから改めて話を聞かせて欲しいけど。」

 陽菜が苦悩を滲ませた顔でこちらを見ている。

「遥人さんとはボクが話した方が良いと思うんだ。今はここの放射能汚染の可能性について教えて。」

 少しの驚きの困惑を宿したまま、俯いている。

「本気で隠す気は無かったよね。ボクは陽菜さんを信じてる。」

「ううん。覚悟はしてた。」

 その言葉を皮切りに、陽菜はポツポツと口を開き始めた。







 騎士たちに連れられて城に向かう。

 今まで遠目でしか見ていなかったが、改めて見ると、城自体の規模はさほどではないものの、城壁を含めるとかなりの広さがあり、兵舎と思われるものなど、複数の建物がある。

 その城壁は高く厚い。

 通常の魔物の大発生なら十分に乗り切れるだけの物だろう。

 鉄板で補強された頑強な城門は半分だけ開け放たれ、そこからたくさんの兵士が慌ただしくしているのが見える。

「斥候が帰ってきたぞ!」

 兵士たちの一部がボクらを迎えにくる。

「ブラゴ様。お帰りなさいませ。」

「イヴァノフ様と話がしたい。その間、彼らをどこか部屋に通しておけ。」

「いや、しかし今は…」

 城下がやけに騒がしいと思ってはいたが、その原因が向こうからやって来た。

 プチハーレムを引き連れて歩く遥人と目が合ったのだ。

 何気ない感じで遥人が近づいてくる。

 その集団に気が付いた騎士たちは一斉に馬から降り始める。

「イヴァノフ様。彼らはもしや?」

 リーダーの騎士が遥人に同行していた年長の男に声をかける。

「使徒様だ。先程到着されたのだが、すぐにでも外の様子を確認したいと。」

 騎士たちが一斉に膝をつく。

 確か、パンティアのパーティーには姫様が同行してると聞いたことがある。

 仕方ないので、ボクも一応、真似て膝を折る。

「今は非常時です。そのような儀礼は必要ありません。」

 プチハーレムの中から存在感のある女性が前に進み出てきた。

 姫は見覚えがある。

 本当に同行していたんだな。

「姫殿下、お久しぶりにお目にかかります。」

 ボクは周りに先んじて、姫様に声をかける。

 チリっと静電気のように弾ける魔力を感じる。

 遥人がこちらを見ている。

 この感覚は覚えがある。

 遥人がステータス鑑定を使ったんだろう。

「カレンの使徒、ユウとヒナでしたね。」

「はい、姫殿下が覚えていてくださり、光栄です。」

「ハルト。」

「久しぶりだね、優くん、陽菜さん。」

 姫様を差し置いて、遥人がリーダーなんだな。

「遥人さん、久しぶりです。」

「早速なんだけど、何があったのか聞かせてくれるかな?」

「ええ、ただ、ボクらだけで先にお話したいんですが。」

「まぁ、そうだろうね。アガタ姫、貴女からお願いしてくれるかな?」

「ええ。」





 さすがに、姫様の、王家の権力は絶大だ。

 まぁ、爵位の低い男爵が相手というのもあるし。

 ボクらは城の会議室のような場所に招き入れられた。

「まだアガタと顔合わせをしてないから、男爵が来そうな気がする。手短にいこう。」

 遥人が場を仕切る。


「まず聞くけど、優くん。君らがここに居続けてるってことは、アレは核じゃないって事?」

「着いたばかりと聞いたんですが、情報が早いですね。」

「恐ろしいぐらいの閃光と爆音だったらしいじゃない、そしてあの跡を見たら、そう思うだろ、普通は。何があったか教えてくれ。」

 ボクは手短に魔物の大発生から、3人の魔族の事を説明する。

「ふーん。アレは、君らの攻撃じゃないんだね。」

「ええ。鑑定で想像はついてたんじゃないですか?」

「へぇ、蓮さんたちも来てたんだ。」

 無視かよ。

「蓮さんたちは帝国の使徒ですから、怪しまれたり、国同士の争いの種になるのを避けたいってことなんで居たことは隠したいと言ってましたんで、内密に。」

「分かってるよ。まぁ、確かにそれだけのメンバーがいれば疑われちゃうだろうしね。この事態で帝国の彼らがいちゃ、拙いよね。」

 真っ先にボクらを疑ってたくせに。


「さて、話を戻すけど、放射能の汚染はあるのか?」

「さぁ?魔族のスキルで起こった爆発なんで、正確には分かりません。いわゆる核爆弾はウランとかプルトニウムとかが核分裂によって起こるもので、それが汚染の原因になります。今回は魔族のスキルで起こったものだから、そういう意味での汚染は無いと思ってるんですが。」

「でも、この城の兵士たちの体調不良は、放射能によるものなんじゃないの?」

「ボクの所に来た騎士たちも体調不良を訴えてる人が何人かいました。遥人さんの言うように、放射線の被曝による症状としか思えません。水爆や中性子爆弾みたいな核融合じゃないかと思ってるんです。」

「もし水爆なら、ビキニ環礁被爆事件と同じなんじゃない?あれも核の汚染があったよね。」

「水爆なら起爆のために核分裂を利用したからですわ。水素同位体を使用しますから、それなりの汚染はあるでしょうけど、ここにはそんな材料はありませんわ。」

 神官姿の菜月が口を挟んでくる。

「ああ、菜月は理系の大学に行ってたよね。」

「専門じゃありませんから、そこまでは詳しくないですけど。」

「ボクは、純粋に核融合だけが起こったと考えるのが順当だと思うんです。」

「それは爆発の時にはしっかりと放射能が出てるってこと?」

「多分。ただ、ボクらの所にいた人たちで症状が出てる人はいなかった。魔法障壁が放射線を防いでくれたと思ってるんです。」

「その魔法障壁は誰の物なんだい?」

「遥人さんには、鑑定があるからバレてると思いますが、爆発も魔法障壁もボクらじゃありません。魔法障壁の方は蓮さんたちのパーティーの木村さんのものです。」

「それで、この爆発を起こしたのは、魔族って言ってたよね。」

「あの爆発を起こしたのは、古くからいた魔物の主と呼ばれていた魔物でした。彼女らはボクらと同じ日本から来た転生者でした。」

「会ったのか?」

「3人いて、会話を盗み聞きしましたし、最後の一人は会って、言葉を交わしました。話合いにならず、最終的に陽菜さんが倒しましたけどね。」

「へぇ。陽菜さんがね。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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