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復興の話し合いをしましょう

 蓮さんたちを見送ってから、ボクらは領主たちと渡り合うための話し合いを進めている。

 パンティア王国の使徒である如月遥人の思考パターンを想定しながら話の進め方を考えていくのがメインになるが、被災者の援助というものが、こちらの国の人たちにはあまり理解できないようだった。

 大筋としては、一時的に復興財団のようなものを設立して領主が独占できないようにすることが目的だ。 

 市街地の開発や復興後の運営は領主がしなければならないとは考えているので、今回協力してくれた貧民街の人たちを優遇させることで、多少の口出しは認めるような形に持っていきたいということでまとまってきていた。

 優遇とはいっても、正規の市民と同じ待遇を求めるといったところだけど。

 社会構造が大きく変わることとなるが、前回の魔物の大発生では貧困層は全滅し、似たような状況が発生していることを考えると、統治自体にそこまで大きな問題はないと考えられる。

 また、街が灰燼に帰しており、すべての住民が路頭に投げ出されたうえ、貯蓄した財産を使用することすら出来ない状況になっているのを考えると、街の住人たちも受け入れざるを得ないと思うのだ。

 まぁ、その中で領主自体は何の被害もない状況で復興にかかる負担を減らすことが出来る方法と感じてもらえれば乗ってくれるのではないだろうか。





 そうこうしている間に、領主の騎士団がこちらにたどり着いてきた。

「貴様ら、この魔物たちは?」

 馬上から先頭の騎士が横柄なものの言い方でボクらに声を掛けてくる。

「ここに避難してきたボクらで倒したんです。ボクはカレン王国の使徒の優といいます。こちらが陽菜です。」

「カレン王国の使徒だと?それが何でこんなところに居るんだ?」

「まぁ、先日、王子にも謁見してご説明しておりますが、使徒として魔物を倒す実力をつけるため、魔境の近くで修行することにしたからです。」

「なに?王子にだと?」

「はい。何とかこれだけの魔物を倒すことが出来たんですが、これだけの魔物の素材があれば、街の復興の一助にもなるかと思いまして、領主様とお話をさせていただきたいのです。」

 ほとんどは魔石になるが、今は言わなくてもいい。

「これだけの魔物をお前らだけで倒しただと?」

「ああ、さすがは使徒だ。坊主らはすごかったぜ。」

 ニコライが横からフォローしてくれる。

「まぁ、そのような黒い瞳に黒髪の風体なぞ、使徒しかおらんだろう。お前が使徒であることは信じてやろう。だが、領主様にいきなり謁見など、身の程を考えろ。」

 まぁ、一応、男爵とはいえ、爵位持ちだもんな。

 とはいえ、ここで蔑ろにすると後々面倒なことになる。

「恐らく、もうしばらくすればパンティアの使徒が到着するでしょう。既に魔物の侵攻が終わっていますから、すぐにでも復興にかかる話し合いが始まると思います。今回はボクらが魔物を討伐してしまったことにより、領主様側は何もしていないことになってしまっています。今後、復興に関して領主様の側で主導しなければ問題が生じると思っております。街全体の復興を考えてみても…」

「何を偉そうな事を言っている。お前らがこの騒ぎを裏で糸を引いていたんじゃないのか!」

「おい。坊主は優しいし、お前らと違って頭も回るから、こんな言い方をしてるが、要はお前らの領主に恥をかかせたくないから話をさせろと言ってるんだ。これだけの魔物を倒す力もある、王族筋に顔も知られてる坊主らを敵に回す積もりか?理解できたなら、早く領主に取次をしろ。」

「貴様!何様の積もりだ!」

 騎士は意気込んでみるものの、周りに転がる魔物の死骸とボクの顔を見比べている。

「そんな言い方は…」

「こいつら相手に時間の無駄だ。さっさとしなけりゃ、領主の方が可哀想だ。それに早くしなけりゃパンティアの使徒と姫さんが来るんだろ。その場で坊主にやり込まれて情けない姿をさらしゃ、今後の復興してからも揉める原因になるからな。」

「まぁ、そいつらを敵に回して良いことなどあるまいて。儂らは一旦戻って領主様に判断してもらうのがよかろうて。」

 騎士の一段の最年長らしき初老の男が先頭の男を諌める。

 初老の男は鎧を着けておらず、体つきも細い。

 いわゆる文官なんだろう。

 この不毛なやり取りに嫌気が差し始めていたところなので、非常に有り難い。

「ここで不毛なやり取りをして時間を浪費するほど、領主様が不利になっていくだけです。」

 邪魔するのなら排除する方向で考えないといけなくなるが、そうするとボクらが動くことになるので、面倒なだけだ。

「ほれ、一旦戻って領主様の判断を仰ごうじゃないか。その前に先に何を話すのか儂に聞かせてくれるか?」

「ええ、結構ですよ。」

 馬から降りてきた文官を迎えて、ボクは今回の計画を掻い摘んで説明する。

 その説明の間、恐ろしいことに気がついた。

 騎士団の中に体調が悪そうな人が何人か見受けられたのだ。

 その中で体調が悪そうな人に声を掛けてみる。

「大丈夫ですか?ご気分がすぐれませんか?」

「ああ、なぜか分からんが急に体調が悪くなってな。少し吐き気とめまいがする。」

「無理はしないでくださいね。」

 やはり、ボクらと一緒にいた人たちを復興に参加させないといけないな。

 それに、陽菜にも聞きたいことがたくさん出てきた。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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