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逃げられないなら向かってみましょう

 爆音と振動が落ち着いてすぐ、そこここで暗いという声があちらこちらから聞こえていた。

 砂塵が巻き上がって暗くなっているのか?

 砂塵が晴れて見えるのは…

「アレ、きのこ雲じゃねぇか?!町田見えるか?」

「何とか見える!マジかよ!?原爆かよ!?」

 町田と木村の叫ぶ声が聞こえてきた。

「規模のデカい爆発があれば、きのこ雲ぐらいできる。」

 蓮さんがパーティーのメンバーを落ち着かせるためそう声をかける。

「放射能とかは大丈夫なのか?」

「こっちの世界で核なんて無いだろうし、そこは安心して良いんじゃいか?」

 そんな心配をしているのはボクら転移者たけで、他の人々は単純に助かったことを喜んでいる。

「この爆発なら外の魔物たちもひとたまりもないんじゃないか?」

 確かにもう周囲に魔物の気配は無く、静まり返っている。

「よく対策が間に合いましたね。」

「ああ、ギリギリだったな。バカみたいな量の魔力が動いてたから慌ててみんなを集めたんだが、ギリギリだったな。お前の慌てようを見れば広範囲の魔法かスキルみたいだったからな。それより、お前、アイツらに近づいたのか?」

「うん。」

「何でそんな馬鹿なことをしたんだ?」

「分かんないけど、どうしても彼女らに会わないといけない気がしたんだ。」

「彼女らって、何か話したのか!?」

「いや、盗み聞きしただけですけど。彼女らは元日本人の転生者だったんです。」

「もしかして、アイツらは『魔王』なのか?」

「それは分からないけど、話の通じる相手な筈です。彼女らと対話をしないと。ボクら日本人なら何とか聞いてもらえる筈です!」

「もう彼女でもないかも知れないがな。」

 木村がそう言う。

 気配を探ってみると、大きな力の反応は一つしか感じられない。

 『エルダーゴブリン』は『貪るモノ』の女の子を道連れに自爆したってことなのか。

「ボクが話にいってみます。」

「待てよ。話ができるようなヤツかどうかも分からないだろう。」

「それでも行きます。ボクが使った『魔力反響感知』でこの場所はバレてるんだ。こっちから行かなきゃ向こうから来る。話ができるのはボクら日本人じゃないとダメだと思う。」

「こっちの世界の人間と会わせん方が良いのは確かだろう。」

 木村がそう言ってくれる。

「コイツが行ってくれりゃ、逃げる隙もできるだろ。俺はまだ死にたくないしな。」

「わたしが優くんと一緒に行く。あなた達はここに居る人たちを守って。」

 陽菜はそう言ってくれた。

「蓮さん。行ってきます。」



 砦は障壁を張った部分だけ城壁が残っており、その他の部分は崩れ落ちてただの瓦礫の山になっていた。

 ボクと陽菜2人で崩れ落ちた砦から、『蛙の女王』の方に向かって歩き出した。

「陽菜さんは何で一緒に来てくれたの?」

 後を歩く陽菜に話しかけながら歩いている。

「優くんと一緒にいたいから。」

 不謹慎だけど、多分、少し嬉しい顔をしていたと思う。

 陽菜を危ない目に合わせるのは避けたいと思っていたのに、付いてきてくれたのが嬉しかったのだ。

「陽菜さん。ありがとう。」

 そう言いながら陽菜にいつものとおり強化付与をかけてゆく。

 あの爆発から遠ざかっていた『蛙の女王』はこちらに向かって近づいてきていた。

「来たね。」

 もう『蛙の女王』は目の前に迫っていた。

 『蛙の女王』は戦闘態勢を取っていないボクらを見て、いきなり攻撃するような素振りは見せなかった。

「ごめんなさい。さっき、会話を盗み聞きしてたんだ。あなた達はボクらとおなじ日本人だったんでしょ?」

「さっき、近くにあった妙な気配はキミだったのか。魔力を飛ばしてこっちを探ってたのも?」

「うん。同じ日本人なら、話ができるんじゃないかと思ったんだ。魔物の身体だからって、元々人間だったんだし、協力できることがあるんじゃないかな。」

 後から付いてきていた陽菜が横に並んだ。

 その瞬間、高速の水弾が陽菜を襲う気配を感じる。

 陽菜はその水弾をなんとか躱すことができたみたいだ。

「何をするんだ!」

 話しかけたボクはもう『蛙の女王』の眼中には無かった。

「お前かぁぁぁ!このクソ女ぁ!」

 水弾とともに舌の打撃が陽菜を襲う。

 水弾を食らった陽菜は軽く後方に飛ばされていた。

「お前がぁ!リーコの封印を解いたのかぁ?!」

 陽菜は無言で剣を構え直している。

「何のことを言ってるんだよ!」

 ボクが『蛙の女王』に向かって声を上げる。

「黙ってんじゃねぇ!お前がやったんだろ!」

 再び水弾を放とうとした『蛙の女王』の腕を目掛けて仕込杖を振ってみるも、軽くいなされ蹴り飛ばされる。

 5メートルほど間合いを取っていた陽菜の足元まで転がっていく。

 ボクは地面に這いつくばったまま、『蛙の女王』に話しかける。

「何か誤解をしてるよ!ボクらはこの街に来てから何もしてないし、キミたちのことはついさっきまで知らなかったんだよ。」

「可哀想にな。お前はこのクソ女に騙されてたんだよ。」

 『蛙の女王』はまるで昔から陽菜を知っていたかのように話してくる。

「ボクらはここに来たのも初めてだし、こっちの世界に来てからずっと一緒だったんだ。キミたちの事を知っている訳ないよ。」

「何とか言えよこのクソアマぁ!」

 『蛙の女王』は展開した水弾とともに陽菜に向かって突っ込んでゆく。

 陽菜は水弾を躱しきれていないだけでなく、飛ぶ水弾を追うように突っ込んできた『蛙の女王』の蹴りをまともに受け、更に後方に吹き飛ぶ。

 転がる陽菜に追いついた『蛙の女王』は倒れた陽菜を蹴り転がした。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
こちらもご覧ください。


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