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敵に近付いてみよう

 横を陽菜が通り過ぎてゆく。

 ボクのことを少し見てから通り過ぎて行ったのは、ボクが目を瞑っていたので、寝ていると思ったからだろう。

 自分の体を魔力感知を使って観察しながら体の内部や漏れ出ている魔力をコントロールできないか試しているところだったのだ。

 自分を観察しながら武器強化の付与魔法を使ってみる。

 本当なら魔法を使う誰かを観察したいところだが、今は我慢しておく。

 自分で観察するとなるとやはり脳の器官の動きが把握できないが、なんとなくの動きは分かる。

 付与魔法の発動に合わせて一旦脳のあたりに魔力が流れてゆき、魔力の形というか、流れというべきものなのか分からないが何かの形に綺麗に整えられていく

 整えられた魔力はなにか色がついたような感じになるが、それが体を巡る魔力の流れに乗って手のひらから放出されて、武器に対して付与魔法が発現する。

 次は防具強化の魔法を使ってみる。

 防具強化の魔法は、一旦杖に魔力が流れそこから革鎧に対して魔力が放出されて付与魔法が発現した。

 そう言えば、魔法使いは杖を使うのが常になっているが、この魔力の流れを考えると杖に魔力を増幅させたりする機構が備わっていれば、放出する魔法の威力を上げたり、コントロールしやすくなる意味が理解できる。

 まぁ、付与魔法は定率で固定された効果しか出ないので、ボクには意味のないものなんだけど。

 さて、そろそろ本題に入ってゆこう。

 まずは、体から漏れ出る魔力と体を巡る魔力の関係性を探るか。

 左手に流れる魔力を魔核を作る時とは逆に流れないように意識してみる。

 どうイメージしたら良いのか分からないな。

 とりあえず、肘から先に魔力を流さないように意識してみる。

 引っ込むようなイメージで魔力を動かしてみるが、やや魔力の流れが遅くなったぐらいの効果しか出ない。

 ただ、魔力の流れが遅くなったことで、若干ながら垂れ流される魔力が減ったように感じられる。

 逆に体を流れる魔力の量を増やしてみると、体から漏れ出る魔力量が多くなっている。

 方向性としては、間違ってはいないということか。

 気を良くしたボクは更に魔力隠蔽の実験を進めていく。

 魔力が体を流れて循環するのであれば、その流れを止めることはできないだろうか?

 まずは、指先から魔力を流れないようにしてみる。

 指先から体の中心から流れる力を引っ張って行き届かないようにすることをイメージしてみた。

 意外とすんなりと指先に魔力が通わなくなった気がする。

 次に右手に流れる魔力の流れを指、手のひら、肘、肩まで順に逆上りながら魔力の流れを制限していく。

 これも成功した。

 意外とすんなりできるのも、魔核を魔石に変える作業の賜物なんだろう。

 丹田、脳、全身という魔力の流れを体の末端から順に制限していく。

 全身に流れる魔力を制限することはできたが、脳から丹田へと逆上ろうとしたところで躓いた。

 一旦、全身の魔力の流れを止めたところで、体から体外に流れ出る魔力の状態を確認する。

 この状態でほとんど体外へ魔力が流れ出ていないことが確認できた。

《『魔力操作』に必要な技能を習熟したため、『魔力操作』のスキルを登録し使用可能にします》

 不意に天の声が脳内に響くが、続けてまた天の声が聞こえてきた。

《『魔力隠蔽』に必要な技能を習熟したため、『魔力隠蔽』のスキルを登録し、使用可能にします》

 スキルってレベルアップで取得するだけだと思っていたんだけど、こうやって技能を習熟することで覚えることもあるわけか。

 そう言えば、前にジョブを持っていない人でもスキルを覚えることがあるって聞いたことがあるな。

 もしかすると、いろんなことに挑戦して技術を得れば、新たなスキルを覚えることができるってことなのか。

 となると、『魔力操作』に必要な、魔力を絞るという動作をしていなかったから、今までスキルを覚えられなかったということか。

 とりあえず、今の全身の魔力の流れを止めた状況を記憶しておき、『魔力隠蔽』のスキルを使ってみる。

 魔力は体外にほとんど流れ出ておらず、魔力を外に漏れ出ないようにした時と同じ効果があることが分かった。

 しかも、スキルでは細かい魔力の操作が必要ないので、非常に楽だ。

 改めてスキルってものの便利さを理解できた。

 もしかしたら、付与魔法も含めてスキルを使わなくても魔法って使えるんだろうか?

 もしそうなら、ボクでも攻撃魔法が使えるようになるということだ。

 外に出る準備をしていったものの、皆からも止められているし、非常に危険なことは変わりない。

 ただ、あの『貪るモノ』を含めた魔物たちは非常に気になるのだ。

 心の中の何かを掻き立てられるのだ。

 そしてそういった存在たちが争っている理由も知る必要があるように思われるのだ。

 そう思っているのは『魔力反響感知』で奴らを覗き見たボクだけなのだろうか?

 陽菜と蓮さんは同じように感じながらも危険度と天秤にかけた結果の判断したのだろうか?





 『魔力隠蔽』のスキルを発動したまま、こっそりと城門の方に向かう。

 城門から続く中庭部分には夥しい数の魔物の死体が積み上げられており、足を取られないよう気をつけながら歩く。

 『魔力隠蔽』のスキルを使ってはいるものの、足音や気配を消すことはできていないだろう。

 魔物の気配を避けながら、城門に向かう。

 ボクは魔物に気付かれず、城門までたどり着いたものの、近くにいたゴブリンの集団に見咎められてしまった。

 仕込み杖を抜き放ち、魔核を狙って突きかかる。

 上手く魔核を貫くことができたゴブリンはそのまま絶命する。

 失敗しても、十分なダメージを受けてうめき苦しんでいる。

 もうしばらくすれば夜が明け始める。

 時間をかけるのも惜しいので、トドメは刺さず、前に進むことにする。



 平原部分でも、離れていれば魔物たちはボクの存在に気付かないようで、城門を過ぎてからは魔物に気付かれず順調に進んでいる。

 通常は魔獣であれば、聴覚や嗅覚ですぐに見つかってしまうはずだが、みなボクを見過ごしているのだ。

 平時じゃなく、魔物たちも興奮状態で集中力が欠けているものあるんだと思う。

 かなり近づいたけど、あともう少しだけ進もう。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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