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新たな敵を探ってみよう

「そういや、これまでの事とか聞きたいんだけど、良いかな。」

「ああ。カレンじゃ随分と苦労してたみたいだからな。」

 蓮さんにカレンに着いてからの事を話していた。

「ところで、あの子とはどこまで進んでるんだ?なんかお互い距離を掴み損ねてるというか、そんな感じに見えるんだが。」

「陽菜さんはボクに優しくしてくれてますけど、それはボクに対しての負い目みたいなものだと思うんです。陽菜さんの言うとおり視覚が戻ってから、考えていくべきだと思ってます。まずは陽菜さんを自由にしてあげないといけないと思ってます。」

「俺から見れば、純粋にお前を気に入っているだけのような気がするんだけどな。」

「そうだとしても、視覚を取り戻してゼロに戻ってからですね。このままだと陽菜さんに依存しきってしまいそうだから。」

「視覚が戻っても、その恩もあるし、そんなに変わらないんじゃないか?」

「そうかも知れませんが、自分なりのけじめも必要なんじゃないかと思ってるんです。」

「でも、あの子の方はお前のことを想ってくれてそうってところか?」

「少し自惚れが入るかも知れませんけど、少しは。でも、まだ子ども扱いな部分もありますけど。」

 まだ何か言いたそうだったけど、こっちもあんまり苦手な話題だったこともあって、会話が途切れる。

 これ以上、陽菜との事を聞かれるのも嫌だったので、無言で熊汁をすすった。





「坊や!来てくれ!街の様子がおかしい!」

 ニコライが慌てた様子でボクを呼ぶ。

 慌てて城壁の足場近くまで行くと、ニコライが駆け寄ってくる。

「ああ、帝国の使徒も一緒か。」

「一体どうしたんですか?」

「街で大規模な戦闘が始まった。」

「大規模な戦闘?」

「建物を吹き飛ばすような戦闘が街の中で行われてるんだ。」

「どういうこと?」

「詳しくは分からんが、大きな音とともに建物がいくつも潰れていっているんだ。」

ヌシが出てきた?」

「ああ、そうかも知れんが、一体何と戦ってるのか分からん。坊やの魔法で何が居るのか分かるか?」

「ええ、『魔力反響感知』と『ステータス鑑定』の組み合わせで確認はできます。」

「頼めるか?」

「ええ。」

 再び足場に登ると、下で陽菜がニコライから状況を聞いている声が聞こえた。

 残り10個となった魔石から一つをつかみ取り、右手に握り込む。

 調べるのは街だけで良い。

 魔力の放出範囲を最小限にして街を探る。

 5つの大きな反応がある。

 まずは近いものからにステータス鑑定をかける。

『カメリア:ヘケト:Lv.48』

 鑑定した瞬間、異常なまでの違和感を感じる。

 恐怖と憎悪が混じった感覚が鑑定の情報とともに流れ込んでくる。

 一体コレはどういう事なんだ?

 目を離せない感覚をそのまま、鑑定を続けてゆく。

『ヴァーニャ:貪るモノ:Lv.50』

『貪るモノ:(分体)』

『イヴァナ:エルダーゴブリン:Lv.46』

『貪るモノ:(分体)』

 レベル差があるためか、これ以上の情報は手に入らなかった。

 そのまま『魔力反響感知』を継続しながら動きを見てみると、エルダーゴブリンとゲルヘケトが貪るモノとやらを協力して攻撃しているように見受けられる。

 側の方に向かった魔物の様子を見てみると、数百の魔物たちは固まったまま動いていなかった。

 ここで魔石の魔力が切れそうだったので、『魔力反響感知』を解除する。





「どうだ?坊や。」

「名前持ちの魔物が3体、その分体が2体。『エルダーゴブリン』と『ヘケト』という魔物が『貪るモノ』というのを攻撃してる。分体といったのは、貪るモノの分体です。」

「何だその『貪るモノ』って?魔物の名前って感じでもねぇよな?」

「俺にも状況を教えてくれ!」

 ボクらの様子を見てか蓮さんたちも集まってきていた。



 蓮さんたちに改めて出現した魔物の説明をする。

 しかし、お互いに戦っている魔物たちは、何故戦っているのか?

 この世界ではレベル50が上限だ。

 カンストに近いレベルの化け物同士だ。

 衝突すればお互いに無事では済まないこたは分かってるだろう。 

 異なる種類の魔物同士で争うこともあれば、共闘までは行かないが争うことを避けることもあると聞いたことがある。

 なぜ、こいつらは戦っているのか。

 決着したあと、俺たちのほうに向かってくる可能性はあるのか?





「ちょっと良いですか?」

「んん?何だ?」

 蓮さんが興味深そうな視線をボクに向ける。

 何となく、言い出しそうなことを読まれている気がするな。

「提案なんですけど、優と陽菜さんで様子を見に行きたいと思っているんですけど。」

「私たち二人で?」

 陽菜が若干抗議めいた声で聞き返す。

 ここの守りが心配事なのもあるけど、何でボクらが出ないといけないのか。

 そんな気持ちが込められているような気がする。

「今、灯りを使って砦の外に出れば魔物たちを惹き寄せることになります。今日は新月です。この暗さの中で移動して、奴らの様子を確かめることができるのはボクしかできない。」

 今晩は新月だったか。

 確かにボクにとっては昼も夜も変わりない。

「俺もあの魔物は気になる。なんというか、不安を掻き立てられる気がするんだ。」

 いつの間にか他の人の治療を終えて戻ってきた町田が話に入ってきた。

「このままここで待ち構えるって手もあると思うけど?潰し合う前に近づけば、その全員から集中攻撃を受ける可能性もあるし。」

 陽菜が抗議の声を上げる。

 陽菜にしては珍しくボクの意見に反対してくる。

「レベル50近い魔物が5体もいるんでしょ?どう考えたって危ないよ。」

「陽菜さんが反対するって珍しいね。」

「魔王級の魔物の群れだよ。反対もするよ。ここにいる全員で戦ったとしても勝てるわけない。」

「まぁ、倒せるとは思っていないよ。でも、『貪るモノ』ってのを放っておいたら危ない気がする。もしかしたら、ヌシたちと共闘できるかも知れない。」

「無理だと思う。この世界の魔物は人間とは相容れないよ。」

「そうだな。この世界の魔物はまるで亡者か何かのように人間を目の敵にしている。まるで人間を滅ぼす事を目的にして生きているようだ。」

 蓮さんが陽菜にフォローを入れてくる。

 やっぱり、魔物とは共闘できないのか?

「数も減って弱ってきてから片付ければ良いさ。それまでは様子見だな。」

「うん。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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