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一息ついて休暇しましょう

「もう、あら方片付いたな。」

 蓮さんが戻ってきた。

「本当に助かりました。蓮さんたちが来てくれなかったら、耐え切れなかったと思います。」

「それは分からんが、優はよく頑張ったよ。パーティーの奴らも休ませないといけないからな。また、後でな。」

 この砦の周囲の魔物は、陽菜と蓮さんたちによって殲滅されていた。

 労いのために何か食べるものでもあれば良いけど、街にあった食べ物は街の人たちが教会に運び入れているため何も残っていない。

 なんて思っていたが、どこからかいい匂いが漂ってくる。

「おう、坊主。そろそろ熊が煮えるぜ。」

「どこから熊なんて…」

「他の魔物と一緒に逃げてきてたんだよ。魔獣は食えねぇが、魔獣化してないただの熊なら食えるからな。血抜きもイマイチだし、死にたてだからなそんなに美味いもんじゃねぇが、腹は膨れるぜ。」

「新鮮な方が美味しいと思ってた。」

「まぁ、素人はそう思うわな。」

 気が付けばもう、終わってたってところか。

 周囲の警戒やまだ若干残る魔物に対応するため、まだ付与を受けに来る人がいるので気が付かなかったのだ。

「やっと、こっちも片付いたよ。優くんも休憩しようか。」

 陽菜が食べ物らしいものを手に持ってこちらに近づいてきた。

「もう、終わったんだよね?」

「うん。周囲の警戒とかがあるから、しばらくは付与してもらう人がいてたけど、もう大丈夫だよ。途中からはニコライさんがきっちりと仕切ってくれていたからね。」

 そうか。

 何でも自分で頑張ろうとしてたけど、ニコライが支えてくれてたのか。

「さすがに疲れたよ。精神的にだけど。魔石の操作はものすごく神経を使うから。」

 陽菜が持ってきてくれたそれを口にする。

 器なんて無いので、水筒に使っている革袋に入れてくれていた。

 肉とふやけたパンしか入っていないその汁は、獣臭いし、味は薄くて美味いと言えるものではないとは思うけど、温かい食べ物はホッとさせてくれるものだった。

「焼いた肉もあるけど、持ってくる?」

「自分で取りに行くよ。」



 一緒に戦ってくれた人たちを見ておきたかった、上から目線かも知れないけど、労をねぎらってあげたかったのもあって、人が集まる、火に近づいていく。

「ああ、使徒様!」

「貴方のおかげで何とか生き残ることが出来ました。」

 そこここから感謝の声が聞こえる。

「『様』は付けないでください。ユウで結構ですから。」

「本当にありがとうございました。」

 何故か火の横に通される。

 何か言わないといけない雰囲気だな。

 みんなボクの言葉を待ってるみたいだな。

 少し頑張ってみようか。

「ボクらも生き残るために必死でした。ボクらの力だけでは助けるどころか生き残ることもできませんでした。こうしてボクも含めてみんなが生き残れているのは、皆さんのおかげです。この砦に向かってくるたくさんの魔物。恐ろしかったと思います。矢面に立たなくても慣れない作業でみんなを支えてくれた人もいます。すべての人の協力があったから生き残れました。皆さん、ありがとうございました。」

 そう言って頭を下げると、歓声に包まれた。

 人々が感謝の言葉とともに代わる代わるボクの背中を叩いてくる。

 こうやって褒められるのも嬉しいものだな。

 その後、ゴムのように固い肉をもらって、再び城壁のところに戻る。

 肉は手で掴んでだけど。

「陽菜さんも食べた?」

「多分、もう少し経った方が汁も美味しいと思うから待ってるの。」

 まぁ、そうだよな。

 ボクが食べたときはまだまだ固かったもんな。

「少し外の様子を見てくるよ。」

「うん。」

 ボクは再び城壁の足場に戻る。

 魔石は残り11個となっていた。

 使いかけの魔石を握り『魔力反響感知』を起動する。

 周囲の魔物はほぼ殲滅できており、離れた場所に居る魔物もこちらに向かってくる様子はない。

「優!どうだ、周りの様子は?」

 蓮さんの声が足元から聞こえてくる。

「他の場所の魔物もこちらに向かってくる様子はないみたいだし、もう大丈夫だと思います。」

「そうか。やったな。」

「ええ、蓮さんたちの助けがなかったら今頃どうなってたか分かりません。ありがとうございました。」

「元々は帝国側でも魔物の大発生の予兆があって、それを調べに、起これば止めるために来ていたからな。」

「そうなんですか。」

「この街もそうなんだが、帝国側でも同じように大発生が起こる場所があってな。どこもこの街ほどの規模じゃないがな。」

「その原因って分かっていたりするんですか?」

「ああ。帝国との境にある魔境に魔力溜まりとでもいうような魔力が濃い場所があってな。その動きが十年程度の周期で活発化したときに魔物が大発生する。大発生と言っても多くて例年2〜300体程度らしいがな。」

「そっちは大丈夫なんですか?」

「俺達が先に間引いておいたから、しばらくは大丈夫だろう。」

 ふと気が付くと陽菜さんは町田と斉田の二人と話をしている。

 というか言い寄られている?

「ああ、あの子も随分と綺麗になったからな。まぁ、話するぐらいは多目に見てやってくれ。」

 そういや、こっちの世界に1年以上経っている。

 ボクだってもう高校生になっていてもおかしくない年だし、陽菜だって17歳、高校二年生だし、この世界じゃ普通に女性と意識されるような年齢になっているもんな。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
こちらもご覧ください。


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