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魔石の使い方を教えてみよう

「そろそろ俺の時間だ。」

 不意に近くで蓮さんの声が聞こえた。

 近くにいるとは思わなかった。

「ああ、蓮さん、近くに居たんですね。今の聞いてもらえましたか?」

「ああ。」

「現状で言うと、この周囲の魔物をなんとか凌ぐことができれば、他の場所からは来ないと思います。それに、少ないながらもこの砦の周囲の魔物の一部も他の場所へ向かっているのもいます。」

「あと、300か。」

 これまでに陽菜が倒した魔物の数は70体程度か。

 砦の周囲の魔物の数はその3倍近くはいるということだ。

 蓮さんたちもいるとはいえ、あと今までの倍近くの時間の戦闘が見込まれる。

 そろそろ陽菜を本格的に休ませないといけないが、魔石の残りも心許なくなってきている。

 そう言えば、正確な数を把握していないな。



 懐の革袋に入れておいた魔石の数を数え始める。

 魔石の残りは29個だった。

「魔石がもう残り少ない。」

「何だって?」

 ニコライが心配そうな声を上げる。

「ちょっと待て。お前、魔石で魔力を回復してるのか!?」

 この声は町田さんか木村さんかどっちだったかな?

「えっと、町田さん?」

「木村だ。魔石で魔力を回復してるのか?」

「いや、回復じゃなくて魔石から取り出した魔力を使って付与魔術や魔力反響感知のスキルを使ってるんですけど。」

「マジか!?」

 こっちの声こそ町田さんか。

「そんな事ができるなんて初めて聞いたぞ。」

 なんとなく出来たから、みんな出来るものだと思ってた。

 街でみんなに魔石があるから大丈夫って言ったけど、みんな出来るって信じてたみたいなんだけど。

「俺ぁ、坊やがさらっとやってのけるから魔法使いならみんなできるんじゃないかと思ってたんだが。知り合いに魔法を使える人間もいないから知らなかったぜ。」

 ニコライだ。

「一体、どうやってるんだ?」

 木村が聞いてくる。

「えっと、魔石を作るときの反対で、魔石から魔力を引っ張って取り出すように…」

「いや、普通は魔石を作るのも難しいから。」

「確か魔石を作るには、魔力操作のスキルが要るんだったよな。」

 蓮さんも話に入ってくる。

「スキルは無いんですけど、頑張ってるうちにできるようになったんですよ。」

「まぁ、理屈上が可能なんだろうが。」

 木村はなんだか納得できていないようだ。

 こちらの世界ではジョブとスキルが重視されている。

 覚えることができないスキルに固執する人間はほとんどいないからだろう。

「そもそも、魔力回復薬で回復したほうが楽だし、早いんだがな。」

「そんなお金ありませんよ。」

 魔力を伴った回復薬の類は効果が非常に高いが、それ相応の値段である。

 体の方の回復薬でも金貨1枚からだし、魔力回復薬は一番グレードの低いものでも金貨3枚はする。

 そんな物を気兼ねなく使えるなんて、恵まれてるな。

「俺らは王室に面倒を見てもらってるからな。お前らも無駄遣いしないように見習えよ。それより、魔石のストックはどのぐらいあるんだ?」

「102個あった魔石が今は29個。」

「魔力回復薬があればもう少し保つか?」

「どれぐらい回復するか分からないけど、魔力が満タンなら、魔石30個分より多いぐらいかな?」

「木村さん、優に魔力回復薬を分けてくれるかな?」

「こっちも少なくなってきてる。少しだけならな。」

「木村さんの魔法で殲滅するか、戦線を維持するか、どちらが効率が良いかなんですけどね。蓮さんはどう思います?」

 木村の実力が分からないうえ、今まで攻撃魔法なんて使える人間がいない状況だったので、ボクではなんとも言えないところだ。

「魔法を使うほうが時間もかからないし砦に居る人間の負担も軽くはなるが、殲滅しきれないだろうからな。一定数までは魔法で減らしていって、そこから殲滅戦に移行するってところが現実的な策だな。木村さんはどのぐらい減らせられる?」

「そうだな、この砦からゆっくりと狙い撃ちできるからな、7〜80匹は焼き尽くせるだろ。」

 この乱戦になるとやはり攻撃魔法は頼りになるな。

「なら残りは200体強だな。」

「そこの盆地にはヌシといわれる強力な個体がいるらしいです。その個体が来る可能性も否定できないんで、魔力回復薬はとっておきたいんです。」

 ニコライから聞いた主たちが盆地から出てくるようなことがあれば、使徒たちで対応にあたらないといけないだろうし、戦闘で強化魔法バフ弱体化魔法デバフも必要になることを考えれば魔石から魔力を取り出して対応をするのは難しい。

「ああ、ゴブリンの王と蛙の女王だな。」

 ニコライが補足する。

「そんなのが居るのか。それが来るかどうかは分からないんだろ?とりあえず優と陽菜ちゃんには、引き続きここで砦に居る人と戦線を維持してくれ。木村さんは城壁から固定砲台に、斉田はここの人たちと連携して砦の警戒を、俺と町田で城壁外への遊撃を行う。」

「遊撃って、行き来はどうするんですか?」

 現在、この砦は城門以外の出入りはできないようになっている。

「ああ、『サルベージ』っていう魔法の効果が使える魔道具がある。」

「それって?」

「人や物をを手元に引き寄せることができる。木村さんに持たせておけば、状況を見ながら引き上げてもらえるからな。サルベージの魔道具の分ぐらいは俺たちも魔石のストックがあるから大丈夫だ。」

「了解です。」

「それじゃ、ちょっと行って来る。」

 蓮さんたちのパーティーはそれぞれの持ち場に散ってゆく。

「陽菜さん、本当に無理だけはしないでね。」

「うん。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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