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魔境に入る準備を進めていこう

 パンティアの王都を出てから13日目にようやくハルグラトの街にたどり着いた。

 ハルグラトの近くは魔物が多く、そのためか行儀の悪い盗賊が多く出ると聞いていたけど、運良く盗賊には会わなかった。

 その代わり、ゴブリンは山ほど出てきたけど。

 『魔力反響感知』を使った即席レーダーは予想通りゴブリンたちを寄せ集めるから、寝れない日も結構あった。

 その度に昼寝しながら進んでた割にはなかなか早く着けたと思う。

 ハルグラトは小高い丘の上に城があり、その丘の麓を流れる川沿いに街がある。

 そのため、街には城壁はない。

 ちなみに、魔物が攻めてきた場合でも、市民は城には入れてくれないらしく、丘の中腹にある教会が避難場所になるということで、教会だというのにお城みたいに壁が張り巡らされているということだ。

 しかし、『魔力反響感知』のおかげで日常生活には困らなくなったけど、街の雰囲気や大まかな地形が分からないので、やはり不便だ。


 陽菜がカレンの王立図書館で読んだ本によると、不定期に魔物の大量発生で街が襲われるということがあるらしい。

 あと、獣型の魔物が多く発生するらしく、魔獣の革が特産品になっているとのことだ。

 魔獣の革を使ったローブは鎧に比べれば軽くて丈夫なうえ、魔法耐性があるので騎士や兵士に人気があるけど、カレンで見た時は凄い値段が付いていた。

 凶暴な魔獣を皮をあまり傷つけずに仕留めるのが難しいのも高い理由のひとつだと思ってるんだけど。



 休む前に王都から運んできた荷の売却を済まさないといけないので、先ずはジャンさんが紹介してくれた商会に向かう。

「ふふっ。」

 上機嫌で交渉を終えた陽菜が店から出てくる。

「毛織物も品薄みたいだったし、ラブニアで買ったボタンもなかなか良かったよ。」

 パンティアに渡った港町、ラブニアでは貝殻から作ったボタンが特産品で、近隣の子どもたち旅人の装いをしているボクらに群がるようにしてボタンを売りつけにきていたのだ。

 それを大量に買っていたのだが、なるほど、内陸のハルグラトでは手に入らない高級品として売れたと言う訳だ。

 内陸のこの辺りでは、当然の事ながら貝殻が手に入らないので、鹿の角や木でできたものがよく使われているが、やはり光沢のある貝殻のボタンが一番人気なのだ。

 嵩張らないから、買ったのも忘れてた。

 陽菜のジョブ『商人』のスキル『相場』がレベルアップして、離れた街の相場まで知ることができるようになった成果でもあるんだよね。

「これで良い宿に泊まれるかな?」

 そもそも片田舎のこの街にそんな良い宿があるのか分からないんだけど、水を差さなくてもいいだろうから、黙っておこう。



 取引をした商人から聞いたこの街で一番良いという宿に着く。

「まだ日が暮れる前なのに意外と人がいるんだね。」

「一攫千金を夢見たり、武名を上げるために魔物狩りに来る人間が集まってくるから、宿が充実してるんだって。」

 なるほど。

 二人で受付に向かい部屋をとる。

 通された部屋はそれなりの広さがあり、ベッドにかかるシーツも清潔そうだ。

「2、3日はゆっくりしてから出ようね。」

「うん。でも、2、3日で足りるのかな?」

「ゆっくりするのがだよ。」

 2週間近くリヤカー引きっぱなしの生活だったので、ゆっくり休めるのはありがたい。

 それに溜まった魔核を魔石に変える作業もしないといけないし。

 王都からの道すがら、38個の魔核が手に入っていた。

 それだけでなく、リヤカーごと荷を売った商人に魔核の買い取りを依頼しておいた。

 この辺りではゴブリン程度の魔核では値がつかないらしいが、魔石の半分をこの辺りの値段、銀貨6枚、つまり2個で金貨1枚で売るなら買い集めてくれるということだった。

 需要が少なく値がつきにくいものの、品薄状態ではあるので、是非受けて欲しいと頼まれた。

 王都の4分の1程度の買取価格になるものの、魔力量が上がって一晩で20個以上は作れるようになったうえ、魔核が銅貨1枚で5個という値段で売ってくれるということなんでボロ儲けなのは間違いない。

 どうやら、魔力量はレベルアップに伴うステータス上昇だけじゃなく、魔力を使い切って回復する時にも上昇するみたいなので、ちょうどいい訓練にもなるし。

 ただ、今まで戦闘とかで使い切ったことはまだないけど。

 魔力の消費の少ない付与魔術師なのに何でこんなに魔力量があるのかもよく分からないな。



 1日目は宿から出ず、食事や宿泊に来る客からの情報収集に努めてみた。

 意外と魔獣を狩りにきている人は多く、常時30人前後はいるみたいだ。

 予想通り、粗野なタイプの人が多いみたいで、やたらと陽菜に絡む奴が多いので、夕食時間になる前に切り上げた。

 宿のおばさんがこの街は色街が小さいから、女の子を見るとやたらと絡んでくるって言ってたけど、その通りだった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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