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この世界の衣装を着てみよう

 食堂には大きなテーブルが3つ準備されており、王族とボクらが向かい合わせで座るようだ。

 神官達の案内で、テーブルにつくが、ボクらのパーティーの前には、カレン王国の面々が、遥人のパーティーの前にはパンティア王国の面々が、そして蓮のパーティーの前にはガルディア帝国の面々が座っている。

 ガルディア皇帝はもう、興味を失った表情をしており、他のメンバーが食事をしながら色々と話を聞いているようだ。

 ボクらに向かい合うように座っているのは、王位継承者のシャーロット姫とシャーロットの兄にあたるフィリップ王子とエゼルバルド宰相が座っており、その背後にハメリンという執事が控えている。

 カレン王国については、初代カレンより女王が王位を継承することとなっているらしい。

 お互い席に着いたところで宰相が話し始める。

「我がカレン連合王国、王位継承者シャーロット・カレン・ウィズガルド殿下より直接お言葉をお授けになる。」

 あれ?

 テーブルで王族と向かい合うようになってるってことは、ボクらと王族が対等っていう意味じゃないの?

 仕方なく、雰囲気に合わせて頭を下げてみる。

「使徒達よ貴殿らは我がカレン連合王国にてその身柄を引き受けることとなった。我がカレン王国は、大陸から離れたブリューニ島に位置しておる。そのため、直接魔王国からの侵略を受けることもない。もし、受けたとしても我がカレン王国艦隊が下らぬ魔物どもを駆逐するだけだ。お主らは市井に降り、技術者としてその手腕を発揮すると良い。」

 転移者の生産職については、特殊なスキルと、元の世界の知識により新技術の開発を行うことが多く、それにより国に貢献しろということらしい。

 まぁ、戦闘要員としては考えていないということだけど、何か歯切れが悪い。

 注意しとこう。

 陰険姫が言うには、カレン王国はそういった転移者の利用を続けてきた結果もあり、文化的に発達し、洗練されたところであるらしい。

 陰険姫はボクらに興味が無さそうにしているが、フィリップ王子は女子メンバーにしきりに話しかけている。

 というか、美羽に集中しており、ボクも含めて他のメンバーには話す機会も与えられず、黙々と食事を続けていた。


 隣のテーブルを見ると、パンティア王国は美男美女が揃っている。

 着ている服装からも、きらびやかながらも牧歌的な雰囲気が漂っている気がする。

 姫様から積極的に遥人に話しかけており、和やかな雰囲気に包まれている。

 パンティアを挟んだガルディア帝国と蓮のパーティーのテーブルを見てみると、既に皇帝はつまらなさそうに食事をしていた。

 とはいえ、こちらも皇帝以外の人間とは話が弾んでいるようだ。

 何でこんな目に合わないといけないのだ。



 全てのテーブルで食事が終わった頃を見計らって、リムルが次を促す。

「皆様、無事に各国へ向かうパーティーが決まったようですので、旅立つ準備をしてまいりましょう。」

 3つある会議室のような場所にそれぞれのパーティーが案内される。

 ボクらのパーティーは執事のハメリンさんが案内してくれる。

「それぞれの国で風俗が異なります故、各国で衣装などを準備させていただく習わしとなっております。」

 イギリスっぽい雰囲気だったから、メイドがいるかと期待してみたが、待っていたのは地味なワンピースを着込んだ侍女といわれるような女性たちであった。

 パーティー全員が侍女たちに体型を測られ、衣装を渡される。

 ここに蓮がいれば、盛大に突っ込んだだろう。

 ボクの手に渡されたのは、どう見ても、女性物のスカートたのだ。

 いや、アイルランドみたいに男性用スカートということも考えられるか?

 天然か?いや、わざとだろ。

 広げて見てみるが、可愛いデザインにしか見えないんだぞ。

 ここは勇気を振り絞って聞いてみるべきか。

「あの。これって女性物ですよね。」

「ええ。そうですが。」

 侍女は事も無げに答えてくれる。

「あの、ボク、男なんです。」

「え?」

 一瞬ポカンとしている。

 良いさ、もう少し成長するまでの我慢だよ。

 大事なことなので、もう一度言っておこう。

「ボク、男です。」

「それでいいんじゃない。似合いそうだし。」

 勝手に入ってきた美羽がからかってくる。

 しかし、着替えるの、早いな。

 黒いスカートの上から青のワンピースか、貫頭衣のようなものを合わせた服装である。

 何を着せても可愛いなこいつは。

「ねぇ、陽菜、ちょっと来てよ。」

 陽菜の方は水色である。

「似合いそうじゃない?」

「う、うん。」

 なに同意してんだよ。

「見たくない?」

「見たいかも。」

 ああ、陽菜、お前もか…

 っていうか、こころも呼んでやれよ。

 視線を感じ振り向くと、こころもこっちを覗き見している。

 何か期待した顔で。

「でも、梅田くん、嫌がってるし。」

 取り敢えず、それには激しく首を振っておく。


 何とか侍女さんが男物の服を探してきてくれていた。

 フード付きのチュニックにタイツか。

 しかも、何を思ってピンクなんだ。

 王子が着ていたのは、少しジャケットっぽくて良かったんだけどな。

 女子もそうだけど、この王族との服の差が激しいな。

 シャツもくれないってことは、平民扱いかな。

 確かに農夫とか、こんな感じだろうな。

 いや、平民が着るには過分な装飾のような気もする。

 しかし、サイズが合わなくてダブダブだな。

 がっかりしそうだが、一応、鏡を見てみるか。


 思ったより、ショックだった。

 完全にワンピースにレギンスを着けた少女にしか見えん。

「梅田くん、着替え終わった?」

 陽菜が覗きにきた。

「あ、可愛い。」

 陽菜がボクの姿を見て、そんな感想を漏らす。

 もう諦めた。


 再び、転移者全員が礼拝堂に集合し、最後のお別れになる。

 遥人の着ているチュニックはボクのとは異なり、脇にスリットが入っているだけでなく、造りが豪華で首から肩にかけては別の光沢のある生地で覆われており、いかにも中世の騎士といった感じがする。

 袖もあるし。

 女子はゆったりとしたワンピースだ。

 女子の服なら、カレン王国の方が可愛いかも。

 蓮達はシャツのようなトップスにパンツだ。

 蓮のは首元に飾りが付いているが、他のメンバーはシンプルなスタンドカラーだ。

「シャツってあったの。」

 近づいてきた蓮に聞いてみる。

「ああ。前の転移者が流行らせたそうだ。」

「でも、それも似合ってるぞ。」

 目を逸らして言うな。

「確かに似合ってるな。」

 チャラ男がからかってくる。

「女物しか無かったのか?」

 大輝は心配そうに聞いてくれるが、もう触れられたくないんだが、それでも一応言っておく。

「これは男物。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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