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王都を発つ準備をしておこう

 手早く着替えてと思ったものの、それなりの服は着るのもそれなりに面倒で、ボクが陽菜を手伝う。

 裾と袖口だけにレースのついたドレスっぽいワンピースなんだけど、背中は紐で留めるようになっているので、独りでは着れないのだ。

 紐を結ぶときに背中を触ってしまうことになるので、かなりドキドキしてしまった。

 ボクのほうは立て襟のついたシャツみたいなのを着ている。

 洋服屋で選んでいるときに聞いたのだが、この世界の人たち、特にパンティアでは自分たちの育んできた文化を大切にして、使徒であるボクたちの文化に飲み込まれすぎないようにしているらしい。

 まぁ、その辺りは王朝を中心として、使徒に傾倒しないようにという意味合いもあるみたいだけど。


 着替えた後、宿の受付に聞いた、近くの鍛冶屋に陽菜の剣をメンテナンスに出すために出かける。

 ボクの仕込み杖は刃が付いていない、尖った鉄の棒なので特にメンテナンスは必要ない。

 3番目の城壁近くの鍛冶屋で武器や防具を専門的に扱っていて、様々な種類の剣やフルプレートの鎧も飾ってあるようなところである。

 意外と鈍器が多いのは、フルプレートを着込む騎士を相手にすることを想定しているからだろうか。

 カレンとは違ってパンティアは南側に友好関係の深いもののガルディア帝国、北東部にノヴェルというバイキングのような民族がいたり、南東部の半島にはメルクと呼ばれる人々が住んでいたりと、国境を接している国が多いのだ。

 メルクの人々はカレンにも交易のため訪れていたため、見たことがあるが、インドの人のように浅黒くて鼻が高い人種である。

 確か香辛料や薬などが特産だったと思う。

 武器強化の付与魔術で強化はするものの、やはりそれなりに剣というものは傷むので、こまめにメンテナンスに出す必要がある。

 また、折れたりもする可能性も無いことはないだろう。

「陽菜さん、予備の剣でも買っておいた方が良くない?」

「予備の剣?」

「折れたりする可能性もあるし、細剣術のスキルも覚えたんだよね。」

「そうね。せっかくだから、予備として買ってみようか?」

「うん。それが良いよ。」

 普通のレイピアだと刺突専用のものが多いんたけど、魔物、特に魔獣を相手にするんなら、それだけだと心許ない。

 何とか若干幅があり、斬ることもできる物を見つけ出して買った。

 無口な主人にショートソードを預け、いったん宿に戻ると、王城からの使いが待っていた。

 王城には明後日の夕方から会食に招かれることになり、明後日の昼過ぎに迎えにきてくれるらしい。

 その会食の場には近隣の貴族なども同席するという。

 明後日なら、洋服のほうも間に合うな。


 また、宿の受付に夕食を摂れる場所を聞く。

 3番目の城壁内で一番料理が豪華なのは今泊まっている宿らしいのだが、東の端にある宿だと少し高台になっており、景色がきれいなのだという。

 宿から使いを出してもらい、その宿の夕食の予約をしてもらった、。

 日が暮れる前に教えてもらった宿に着き、案内された場所はテラスのようになっており下の城壁が一望できる場所だったらしい。

 ボクには見えないから分からないけど、陽菜はうれしそうに声を上げていたので、いい景色なんだろう。

 料理は骨付きの豚肉を柔らかくなるまで茹でたものや、豆の少ないソーセージの入った煮込み料理などが出てきた。

 デザートに果物も付いている。

「何か、はじめてだね。こういうの。」

「うん。」

 この世界に来てから、ずっと貧乏暮らしだったし、2人になってしばらくしてからお金がある程度貯まってきたけど、レベル上げに必死だったから、こんなゆっくり、贅沢に暮らしたことなかったもんな。

 いい雰囲気にはなっていると思う。

 陽菜がどんな表情をしているのか分からないのが残念だけど。



 翌日は、得にすることもなく宿でゆっくり過ごしていた。

 特に変わったこともなかったけど、洋服店の使いの人が宿に来て、予定通り洋服の直しができるので、明日に最終の調整とともに着付けもしてくれると言伝があった。

 昨日、受付の人に聞いたとおり、ここのご飯は美味しかった。


 王城に登る当日、朝から洋服店に向かう。

 洋服店では、陽菜から今日着る服を試着し、細かいところの調整を済ませ、宿に戻ると王城からの迎えの馬車が着いていた。

 その足で王城に向かうことになった。

 馬車の窓からの景色は見えないけど、陽菜の説明によると3番目の城壁の内側から貴族街になっており、豪邸が立ち並んでいるらしい。

 中世らしく非常にきれいな街並みで歩いている人は少なく、たまに見えるお店は豪華できらびやかなものばかり置いているらしい。

 王城もそれは中世的で豪華絢爛だということだ。

 王城に入り気配を探ると、なかなか使えそうな人間ばかりが警備にあたっている。

 そりゃ当然か。

 魔法を使える人間もかなりの数がいる。

 物々しい警備に囲まれながら、王子に謁見する。

 陽菜はあまり警戒していないみたいだけど、鎧の音があまりしないから、警戒させないよう洋服で警備してるせいかな?

 月並みな訪問に対する感謝の言葉が述べられたあと、ダイニングで会食が始まる。

 多分、豪華な謁見の間みたいなところなんだろうけど、魔術的な障壁みたいなのが張り巡らされているので、部屋の様子は全く分からないので印象に残るようなことはあまりなかった。

 料理は豚の丸焼きがメインで出ており、その他の料理は豪華だけどやたらと香草を使ったものが多くてあまり好きな味付けじゃなかったのが残念だった。

 会食には貴族たちが参加していたんだけど、社交界的な雰囲気でもないので、ボクはあまり会話はしなかったけど、陽菜はやたらと話しかけられていた。

 そういや、王族もその力を保つために、使徒を迎え入れてたんだっけ。

 後ろ盾も無い陽菜は絶好のカモに見えてたんだろうけど、王子が食いついてからは他の貴族は離れていったので、後半からは一方的に王子が陽菜に話しかけてるだけだったな。

 そもそも、義理を通すために顔見せするためだけの用事だったので、その他は特に印象に残ることはなかったな。



 早めに用事も片付いたんで出発を早めることにした。

 登城の翌日はジャンさんのところに予定を伝えてから宿でゆっくり過ごすことにした。

 出発の日は朝からジャンさんのところに向かうと、そのまま応接に通される。

「もう出発ですか。慌ただしい滞在でしたね。」

「いや、ボクらとしては随分とゆっくりしたような気もするんですけどね。」

「もう、荷の準備はできていますよ。」

「ありがとうございます。」

「あ、洋服はどういたいましょう。お二人とも長身ですので、洋服店ではお直し代がかかるので安くなってしまいますよ。それなら、同じくらいで買い取りさせてもらいましょうか?」

 ん?

 そう言えば、こちらに来た時より背が伸びたような気がするけど…

「陽菜さん。ボクってだいぶ背が伸びた?」

「だいぶどころじゃないかな。もう、わたしも抜かされそう。わたしも伸びたんだけど。」

 あれ?

 そんなに伸びたのか?

「え?」

 陽菜さんは170cm近くあったと思うんだけど。

 こっちに来てから1年ぐらいしか経ってないのに、30cm近く伸びたの?

 我ながら第二次性徴期、成長し過ぎじゃない?

 そういや、今までの服って、小さくなる前に駄目になってたし、見えなかったから全然気にしてなかったよ。

「そんなに急に背が伸びられたんですか。もしかしたら、まだ伸びるのかも知れませんね。」

「ああ、すみません。洋服の買い取りはここでお願いします。」



 ジャンさんのところで塩タラと交換した毛織物を載せたリヤカーを引きながら、また旅が始まった。

 今回の目的地、ハルグラトまであと2週間だ。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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