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王城に登る準備をしてみよう

 早速ジャンさんに紹介された宿に向かっている。

「商談は早かったみたいだけど、どうだったの?」

「うーん。適正価格ね。いきなり適正価格を提示されたわ。困ることもなかったけど、面白みのない商談だったよ。」

「まぁ、それがあの人のやり方なんだろうね。無駄な時間をかけないってのもあるのかもね。取り扱う品目も多いし、それを決めるのも即決だもんね。スピード重視かな。」

「ただ、この世界じゃ異端よ。」

「そのメリットを充分活かしてるから繁盛してるんじゃないかな?」

 王城に登るための準備を必要があるので魔石の代金は現金で受け取り、塩タラは何というのか分からないが、厚手と薄手の羊毛の生地に替えることにした。

 また、王都出立まで有料で荷物とリヤカーを預かってくれることになった。

 そして、ジャンさんに書いてもらった紹介状にある宿に向かう。

 その宿は3番目の城壁のすぐ外側にある。

 3番目の城壁までは、貴族が住む区画になっており、平民は出入りできないようになっている。

 その中で最も城壁に近いこの宿は王都外から来る下級貴族や貴族としての身分は無いが、それなりに財力のある商人などが利用する場所であるらしい。

 宿代もそれに合わせて金貨が飛んでしまうような高級宿だ。

「建物もおしゃれだけど内装もすごいよ。この格好じゃ場違いだよ。」

 陽菜が宿の雰囲気に尻込みをしているようだ。

 内装や細かな調度品がどんなものかは見えないので把握できないが、騒々しい雰囲気は無く従業員たちの立ち振舞が洗練されているように見える。

 泊まるにしても、王城に登るにしてもそれなりのドレスコードはある。

 旅では荷物も限られるため、服は最低限のものしか持っていない。

 王都に着いてから準備をしようとは思っていたため、準備だけで数日かかると思っていたが、ジャンさんのおかげで随分と早く準備ができそうだ。

「紹介状があるから先にチェックインだけ済ませて、洋服を買いに行こうよ。」

「うん。」

 陽菜がフロントのような所へ行き、話を始める。

 いくら紹介状があっても、今は旅の装いのままだし、ボクら自身に信用があるわけでもないから、一旦一週間分を先払いしておく。

 一週間分で金貨20枚ってどんなスイートだよ。

 普段泊まっている宿の10倍以上だよ。

 少し引いちゃったけど、必要経費だから仕方ない。

 支払いを済ませると、部屋に案内される。

 現代みたいにベルボーイ(だったっけ?)はいるようで、案内と同時に荷物は彼らが運んでくれた。



 荷物を置き、防具を外して外出の準備をしていると、陽菜が話しかけてきた。

「良かったよ、優くん。」

「えっ?何が?」

「気付いてない?今日はジャンさんと積極的に交渉してくれたよね。」

「ごめん。陽菜さんの段取りを狂わせちゃったかな?」

「ううん。そうじゃなくて。」

 ふと、自分の行動を振り返ってみる。

 目が見えなくなってからは、ほとんどのことを陽菜に任せっきりにしていたと思う。

 見えなくて、状況が全くわからなかったのもあるけど、何をするにも自信が無かったのもある。

 『魔力反響感知』のスキルを手にしてから、ギリギリ通常の生活をできるぐらいにはなった。

 それが、自信を少しずつ取り戻せているんだと思う。

「うん。人と話せるようになってきたかな。」

 これも、すべて陽菜のおかげだ。

 こうなることを見越して、陽菜はボクに視覚を取り戻させようとしてくれてたのかな?

「陽菜さんのおかげだな。本当に、本当にありがとう。」

 なんだか、後に退いていた自分自身がやっとスタートラインまで戻ってこれたような気がする。

 もう、陽菜には頭が上がらないな。

 やっとここまでこれたんだ。

 もうひと頑張りで、視覚を取り戻すことができるような気がする。

 今まで支えてくれてきた陽菜に応えていかないと。



 外出の準備を終えて、これまたジャンさんに紹介状を書いてもらった洋服店に向かう。

 これまた、訝しげな顔で見られたが、ジャンさんからの紹介状のおかげで店員が横についてくれるみたいだ。

「優くんのはわたしが選んであげるから。」

 洋服もシルエットしか見えないので、ここは陽菜に任せっきりでも仕方ないだろう。

 ひとまず、泊まっているホテルやその周辺で浮かないための服装もしなくてはならないが、一から仕立てをするような時間が無いので、仕方なく古着を選ぶことになるけど。

 普段着の古着とはいっても、これまた金貨が数枚飛ぶようなものしか置いていない。

 まぁ、それぐらいのものでないと、あのホテルのドレスコードに合わないんだろうな。


 男物はことごとくタイツみたいなのしかない。

 ここは我慢して着るしかないか。

 王城に来ていくのは、刺繍の効いた短いスパッツのようなものに、やっぱりタイツだ。

 タイツは嫌だと思っていたが、最近目が見えないこともあり、そこまで嫌で無くなってきたのもあって、選ばれたものを素直に着ることにする。

 下に履くタイツは太ももまでの長さのもので十分らしいのだが、ずれたりすると動きにくそうなのでできるかぎり薄手の上まであるものを選んだ。

 陽菜は袖にヒラヒラの付いたワンピースで、ヒラヒラを除けば意外と普通かも知れない。

 ただ、色と細かな生地の見た目が分からないので、なんとなくの印象でしかないけど。

 王城用のワンピースは更にヒラヒラが強化されたうえに、生地には金糸や銀糸で刺繍が張り巡らされている。

 一体作るのにどのぐらいかかるんだろう。

 普段着用を数着、王城用の晴れ着を1着ずつで、金貨が30枚ほどになったけど、まだ陽菜さんのアクセサリーを買わないといけないんだよなぁ。

 でも、女の子が何も無しと言う訳にはいかないしなぁ。

 こっちの魔石の買取価格が高くて助かったよ。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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