所属する国をみてみよう
底まで落ちたテンションのまま、昼食時を迎え、遥人が迎えに来た。
他のメンバーは、周りの景色を見物したり、午前中から到着し始めていた他の国の行列を覗き見したりしてたようだ。
席に着く前に、食堂のテーブルの前に並ばせられる。
「見た?菜月、パンティア王国の王子とお姫様、二人とも超美系だったよね。」
栞が興奮気味に話しかけている。
「ガルディア帝国は何かムキムキばっかりでむさいよねぇ。あそこには行きたくないなぁ。ねぇ、菜月、芽衣。」
呼ばれた二人とも、仕方なく頷いている。
「何かカレン王国の王族はみんな感じ悪そうだったわよ。」
美羽がボクらに教えてくる。
まぁ、王子がボクらにそんなに関わってくることも無いだろうから、別にいいや。
「皆さん、静粛に。皆さま方がお世話になる各国の王族がお集まりになられました。」
リムルが話し始める。
「各国の王族と宰相がこの会食にお越しいただいております。くれぐれも失礼のないようにお願いします。」
この様子だと、前の転移者が何かやらかしたんだろうな。
今回のメンバーだと大丈夫そうだけど。
ボクらのパーティーは入り口から右側に、遥人のパーティーは中央に、蓮さんのパーティーは左側のテーブルに配置される。
まだ、着席は言われていないので、立ったままだ。
「それでは、入室していただきます。」
あー、なるほど。
栞が言ってたとおりのガチムチ集団がガルディア帝国なんだろう。
見た目で順当にいけば、ガルディア帝国が蓮のパーティーを欲しがりそうだ。
ボクらはカレン王国になるだろうから、自然とパンティア王国は遥人のパーティーになるんだろう。
リムルの言ってた通りの展開になりそうだ。
各王族は手に持つ紙とボクらを見比べながら、値踏みをしている。
「それでは各国の王族のご紹介をさせていただきます。」
「ちょっと待ってくれ。」
ガチムチ集団からチェインメイルの上から胸当て等の軽い鎧を着た男が歩み出てくる。
いわゆる、冒険者風の格好だな。
男達の前を睨める。
ボクの前で足を止める。
殴られた。
目の辺りに当たったため、チカチカする。
結構本気で殴りやがったな。
こどもの力とは随分と違うな。
吹っ飛ばされ、そんな事を思いながら、手も付いたが何とか踏ん張った。
追ってくる単調なヤクザキックを身体を捻って躱す。
女子の悲鳴だけでなく、男子の驚く声も聞こえる。
ただ、男の目はジッと値踏みするように俺の目を覗いてくる。
不意に蓮さんが割って入ってきた。
「何してんだ、テメエは。」
「蓮さん、下がって。」
何故かここで引いたら駄目な気がして、蓮さんを抑えて前に出る。
ガルディア帝国の陣営も男を止めに群がってくる。
「兄さんも止めてよ!」
「カール、こいつは良いな。」
「ロタール、お稚児さんでも欲しかったのか?」
何を盛り上がってやがる。
「ほう。陛下の仰る事も分かりますが、これは国家同士の話し合いですぞ。」
「兄さん、一体何の真似なんですか。」
「ちょっと性質を見てみたかっただけだ。」
「陛下、年齢から考えれば、育てがいはありそうですが、使徒はパーティーで引取が必要ですぞ。」
「ああ。残念だな。カレン向きのパーティーだからな。」
一体何だったんだ。
「済まなかったな。ユウとやら。リムルに回復をかけてもらえ。」
急に表情を緩めて馴れ馴れしく肩を抱き握手してきた。
「あの叔母様からあの様な野蛮な息子が産まれてくるとは思いませんでしたね。それも、気品も無いのに皇帝だとか。」
あの嫌味を言っているのは、カレン王国の姫様か。
美形ながら陰険そうだな。
そもそも、ボクを殴った男がガルディア帝国の皇帝陛下だったのか。
若いな。
まだ40歳にはなってなさそうだ。
気が付くと、チェインメイルの上から豪華な上着を羽織っている。
今更ながら、チェインメイルを見てみると、様々な意匠が施されたもので、羽織ったものと合わせると、身分の高さがよく分かる。
「ユウとやら、お前たちのパーティーは我がカレン王国で引き取ってやる。その方が暮らしやすいであろう。ただ、付与魔法師というのはどう扱えば良いのか分からぬがな。」
そうですか。
ボクは邪魔者ですか。
まだ、殴られて赤いが、そのうちパンダになりそうな傷痕も、リムルの回復魔法を受けると、痛みも赤みもすぐに引いた。
ほう、これが回復魔法か。
「それでは、改めて、各国の王族の紹介をさせていただきます。」
それぞれの王族の紹介がされていく。
通常は王子や姫が迎えに来るのが通例だったようだが、何故かガルディア帝国だけは、皇帝陛下直々に来ていたようだ。
ガルディア帝国は、長兄カールが宰相を努め、次男ロタールが若くして皇位を継いでいる。
そして、今日は末弟のルーディア皇子までお出ましだ。
あまり転生者に期待していないと聞いていたが、今回は何故か違ったらしい。