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アンデッドを殲滅しよう

 作戦の開始と共に、荷車に乗るボクの左右に武器の柄を押し付けてくる。

 それに応えるように左右の手に押し付けられた武器に聖属性を付与していく。

「ボウズ!動かすぞ!」

 体制を崩さないよう、腰を落とす。

 三組ほど付与が出来たところで、荷車が引かれ始める。

 それと同時に先頭近くにいる者が大声を上げたり、鍋のようなものを叩いて音を出し始める。

 休む間もなく、左右の手に武器の柄が押し付けられ、聖属性の付与をし続けていく。

「すげぇ!アンデッドが面白いように斬れるぞ!」

「一撃だ!一撃で倒せるぞ!」

 先頭の方からそんな声が聞こえる。

 一時的にパーティーを組むことにしたアレンとベイシア、それと陽菜はボクの側からは離れず、周りを警戒している。

 アンデッドに対してほぼ一方的に攻めており、今のところは順調に作戦は進んでおり、もう聖属性の付与は一巡し終わっている筈だ。

 二巡目ぐらいになると、軽症のようだが、負傷者が出始めてはいたが、軽い手当を受けるとすぐに戦列に戻ってゆく。

 三巡目には、半分程度のアンデッドが駆逐されたようで、若干、戦闘音の密度が下がった気がする。

「来たな。」

 不意にアッシャーの呟きが聞こえた。

「向こうですよね?」

 ボクは気配の方に顔を向けて聞いてみる。

「せや。アレン。向こうの方角から、強い気配がする。」

「気配ですか?」

「その方角は空けて、周りの雑魚を遠ざけてくれるか?」

「分かりました。」

 ボクはパーティーメンバーに『手順』スキルで戦闘態勢を整えてゆく。 

「アッシャーさん。聖属性の付与は?」

 こちらに来る気配が無い。

「大丈夫や。」

 小さな足音が遠ざかってゆく。

 そういえば、彼の足音は普通にあると思うと、急に消えたりしていた気がする。

 離れた場所では、全く状況が把握できないし、周囲のメンバーへの聖属性付与もひっきりなしに来る。

 強力な魔力の高まりを感じ、身構えてしまう。

「強力な魔法が来る!」

「アレはヤバい!」

 アレンも陽菜も狼狽えた声を上げる。

「えっ?魔法が消えた?」

 魔力の塊や流れが不意に霧散したのを感じ、気の抜けた声を出してしまった。

「魔法を掻き消したのか?」



 何が起こったのか詳しくは分からなかったが、アレンや陽菜から聞いた話では、魔法を掻き消した後、接近戦に持ち込み、しばらく揉みあったあと、拘束してしまったとのことだ。

 首魁の魔物を拘束すると共に、レヴァナントは全て活動停止してしまい、既にそこまで数の残っていなかったレイスとスケルトンはあっという間に駆逐されてしまった。

「優の聖属性付与で一方的な戦闘になるとは思ってたが、拍子抜けだったな。」

 アレンは目の前の状況を整理しながら、思わず漏らした。

 実際、作戦が始まってからまだ3時間も経っていないだろう。



 アッシャーが捕らえた魔物は手と足に枷を填められ、頭からは麻袋をかけられて転がされているらしい。

「あれはなんて言う魔物なんですか?」

 アレンがアッシャーに聞いているのに耳を傾ける。

「種族はドウラグル。知性ある死者ってところやな。これは貰っていくで。」

「どうやって魔法を掻き消したんですか?」

「簡単な話や。ワシの外套は魔力を拡散する作用があるからな。魔力が集まってるところにこの外套を触れさせれば魔力が拡散するからな。まぁ、あんだけデカい魔法陣を作っとったから、一発やな。もっと起動の早い細かい魔法やったら、こっちがヤラれとったかも知らんけどな。」 

「それで、その魔物はどうするのですか?」

「持って帰るんや。ソレ以上は聞くなよ。」

「はい。」



「優くん、あの男、胡散臭いよ。」

 傍らにいた陽菜がボクに向かって話しかけてくる。

 同じようにアレンとアッシャーのやり取りを横目で見ていたようだ。

「確かに、魔物を連れて帰るなんて目的もわからないし。それよりも、『灰製造人ギルド』でVIP待遇だし。一体、何者なんだろう?」

 思った疑問をそのまま言葉にする。

「分からないけど、しかも、腕に覚えもありそうな事言ってたよね。」

「本当は人間じゃなかったりして。なんて、冗談だけど。けど、注意しとこうか。」

「うん。」


 今日は一旦『山小屋』に戻ることとなり、再び荷車に揺られて戻ってゆく。

 大部屋での雑魚寝と思ったが、ボクら二人に部屋が割り当てられることになった。

 今回の作戦での働きを考えると、雑魚寝では失礼だとジョンが言ったらしい。

 意外に疲れていたボクは粗末なベッドに横たわると、簡単に意識を手放してしまった。

 気が付くと既に日が出ており、忙しげに走り回る足音があちこちで聞こえていた。

 陽菜の気配を感じれなかったため、ベッドから抜けだして、一旦トイレに向かうことにする。

「優くん。起きてたの?」

 ボクの姿を見つけた陽菜が近寄ってきた。

「陽菜さん、おはよう。ボクだけ、ゆっくりしてごめん。」

「昨日はほとんど何もしなかったから、あまり疲れてないから大丈夫だよ。それよりも朝食が出来てるよ。」

 陽菜に手を引かれ、食堂にゆくと、人気はそこまで多くなかった。

「結構、ゆっくり寝ちゃってた?」

「うん。でも、昨日はあれだけ魔法を使ったんだから、仕方ないよ。」

 実の所、魔力も半分程度しか消費しておらず、戦闘自体ではそこまで疲れてはいない。

 ただ、人が多すぎて気疲れみたいなのが大半だ。

「あ、昨日は言うの忘れてたけど、昨日はレベルアップしてたよ。スキルは何も覚えなかったけど。」

「そうなの?直接戦ってなくても、経験値が手に入ったんだね。」

「そうみたい。」

「良かったね。きっと次のレベルアップだ何かスキルを覚えられるよ。」

 誰かがボクらの所に食器を置いてくれる音がした。

「もう、朝ごはんの準備ができたみたい。さぁ、食べよ。」

 硬いパンと木の器に入ったスープをボクに渡してくれる。

 今日はいんげんとは違う豆の匂いがする。

 それに今日は少しだけだが、肉が入っているようだ。

「優くん、これからのことなんだけど。何だか個々の人たちも、あの、アッシャーとかいう人もみんな胡散臭く見えちゃって。」

「まぁ、元々、この依頼だけっていう話だったし。一旦、ケアールドに戻ろうか。」

「うん。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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