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『灰製造人ギルド』の本部に行ってみよう

「先にベイシアに付与魔法の事を説明しててくれて助かったよ。」

 アレンがボクに向かって言う。

「次の作戦に必要な情報は先に伝えておいた方が良いでしょう?」

「ああ。的確だったよ。君の想定の陣形はこんなところで良かったのかな?」

 紙に跡が残りボクが触って分かるように凹凸が付けられた地図かテーブルに広げられており、アレンがボクの手を取って説明する。

 そこに描かれたものは、円に近い陣形を部隊単位でなはく個人単位で記したものであった。

「いや、もう少し内部の密集を避けて、矢印に近い形が良いと思います。付与魔法の効果が切れてからと言うより、切れた人が出ないように絶えず動き続けながら交代する必要があると思います。陣形を崩さず移動するのは訓練されていない人には難しいと思います。街を攻略するためには、進みながらボクとの距離を保つ必要があるんで、進むたびに矢印の軸から付与をした人員を中央から左右に押し出していき、末に来れば矢印の軸から再び吸収して最前線に押し出す。これの繰り返しです。その流れに負傷者も入れていく。」

 ボクは爪でその陣形を修正するように引っ掻いて示す。

「付与魔法が切れた都度戻るのなら、時間もかかるし敵に背を見せることにもなるか。」

「ボクを車に載せて引きながら進んで貰いたいですね。後ろ向きで両手も空けないといけませんから。」

「これじゃ、強敵が出た場合の対応が難しいんじゃないかい?」

「陽菜さん、アレンさん、ベイシアさんは掃討戦に参加せずに待機して、強敵が出ればボクらだけで戦います。長時間の戦闘はパーティーでないとできませんから。」

「あと、どんな魔物が発生しているか詳しく教えてくれませんか?」

「スケルトンとレイスが若干と、あとはレヴァナントが多数を占めている。」

「レヴァナント?」

「歩く死体のこと。」

 陽菜が教えてくれる。

 この世界に来た当初は、魔物なんて興味がほとんどなかったんだけど、ボクの目の件で国立図書館に通っている間に、かなり知識を蓄えていた。

死霊術師ネクロマンサーのいる兆候は?」

 死霊術師は死体を使役する。

 もし、死霊術師がいるのであれば、魔物の群れではなく、相手は人間以上の知能を持ったものであるということだ。

「その可能性も探ってはみてるんだけど、今のところは不明かな。」

「何かを狙っているとか、何か彼らが目的を持っているような様子は見られますか?」

「いや、ほとんど街から出ないということ以外は全く何も分かっていないというのが正直なところかな?」

「数が増えているということは?」

「元々、200体近くが急に現れたんだが、数は変わっていないようだ。」

「彼らが現れてからどのぐらい経ちますか?」

「たしか、2年ぐらいになるかな。」

 結局、よく分からないということが分かっただけか。

「今日は馬車を用意している。今日中に山小屋に戻って明日の日中に準備を整えて夜になったら作戦を開始したい。良いかな?」

「ボクは構いませんよ。陽菜さんは?」

「ええ、私も大丈夫です。」

 しまった。

 陽菜さん、本当は身体を綺麗にしたり、ゆっくりしたかったんじゃないだろうか。

 言ってしまってから気が付いても遅かった。

「じゃぁ、行こうか。ベイシアは2人と一緒に馬車で戻ってきてくれ。ボクは先に馬で戻るよ。」

 慌ただしくアレンさんは部屋から出て、ボクらも続いて馬車の荷台に乗って出発する。


 狭いし揺れる。

 初めての馬車の旅は快適からほど遠いものだった。

 天蓋もない、浅い木の箱のような荷車に荷物と一緒に押し込められる。

 陽菜とも身体がくっつきあって、温かさが伝わってきて、ドキドキしてしまう。

 2・3時間の行程だったろうか。

 散々、文句を言っていたものの、ボクは寝てしまっていた。

 陽菜とベイシアさんはずっと世間話をしていたようだ。

 『灰製造人ギルド』の拠点の一つ、『山小屋』に着くと、また豆のスープと傷みかけのパンをごちそうになった。

 作戦会議は明日することになったらしく、少し早目の時間ではあるが、大部屋で雑魚寝することになった。


 夜分、陽菜にお願いして、トイレの場所まで案内をお願いする。

 トイレとはいっても、小ならその辺でいつもなら済ますし、大といっても空いてる部屋でポットを使うだけなのだが。

「陽菜さん、どう思う?」

「何が?」

「こっちのアンデッドはさっきも言ってたみたいに、死霊術師ネクロマンサーとかが影にいそうじゃないかな?」

「ステータス鑑定で判別できるんじゃないかな?」

「ああ、そうか。」

「あと、『灰製造人ギルド』のことも、信用して良かったか心配なんでしょ?」

「うん。とりあえず、今回のことが終わったら、一旦、距離を置いてみよう。とりあえず、今回のことは街を魔物から取り戻すことが目的だし、悪いことでもないと思う。」

 思うというより、思い込もうというところなんだけど。

「うん、終わったら、一旦、ケアールドに戻ろ。」

「あと、ここに来る前に、身体を綺麗にしたりとか、ゆっくりしたかったよね。ごめんね。」

「えっ…。臭かった?」

 しまった…

 ちょっと言葉が悪かったかも。

 そんな積りじゃなかったのに。

「いや、そんなんじゃないけど、そんな気の使い方も出来てなかったなぁって。」

「やっぱり臭かった?」

「うう。そんなこと無かったよ。」

 日本人だし、今は冬だし。

 荷馬車で陽菜の匂いにドキドキしてしまったことを思い出してしまう。

「ちょっと、優くん、何考えてるのよ?」

 慌てて表情を隠してみるが、遅かったようだ。

「陽菜さんの匂い、嫌いじゃないよ。」

 しまった、何を言ってるんだよ、ボクは…

 それって、匂いがあったって言ってるようにとられないかな?

 いや、そういう問題でもないか。

「ちょっ…」

 何だかお互いに意識してしまって、沈黙してしまう。

 今日はそのままお互い黙ったまま、大部屋に戻って寝てしまった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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