パーティーを編成してみよう
全体の雰囲気から推測するに、爽やかイケメン、如月遥人を中心としたパーティーとツッコミイケメン、藤堂蓮を中心としたパーティーが作られそうだ。
ということは、どちらにも誘われなかったら、余り物パーティーになるということか。
生理的にハルトは受け付けないから、蓮さんのパーティーに入れないかな?
「戦士のハルトと剣士のレンが中心となるのが良いかも知れませんね。」
リムルがリーダーを指定してくる。
ただ、勇者となるのが、『戦士』と『剣士』のジョブを授けられた者しかいないため、当然といえば当然だろうが。
「俺のところは、男だけでいい。」
蓮が言うと、ハルトを除いた全員が集まる。
ハルトを除くと男は5人。
ここから選択していくことになる。
残った男は、ボク以外に「斉田 瑛太:盗賊」、「木村 達也:魔法使い 」、「町田 大輝:僧侶」である。
「まず、回復系は欲しいな。」
「オレだな。」
脳筋ゴリラ町田が一抜けする。
こんな脳筋で回復魔法が使えるのか?
「次に魔法使いは欲しいな。」
「まぁ、盗賊のオレは確定っしょ。」
チャラ男が名乗りを上げる。
「こんな役に立つか分からんガキより、使えるぞ。」
三十路木村がボクのことをディスりながら、前に出る。
「確かに魔法使いとかは必須だろ。」
斉田が後押しする。
「そうだな。魔法使いの方が後々になってから必要になりそうだしな。」
脳筋ゴリラのくせに、いらないことを言いやがって。
蓮さんは多少はボクのことを気遣ってくれる素振りを見せてくれるが、他のメンバーの中ではもう魔法使いで枠を埋めたと思っているようだ。
爽やかイケメンの方を見ると、そこでは女の戦いが始まっていた。
「精霊使いは回復もできるんだよねー。なら、私と菜月ちゃんは確定だよねー。」
アホっぽいしゃべり方ながら、ズケズケと主張しているのは、狩人の牧田栞だ。
栞と目が合うと、ボクのことをディスり始める。
「そっちのなよなよしたのも要らないし。付与魔法師なんて、何の役に立つか分からないじゃん。」
「いや、でも、優くんも補助役だけど、役に立つと思うよ。」
「えー。付与魔法なんて、絶対役に立たないよ。直接戦闘なんてしないでしょ。連れてっても意味無いよ。」
「私、遥人くんと一緒がいい。」
気の弱そうなこころが頑張って主張している。
そういや、こころは遥人のことをチラチラ見ていた気がする。
いや、こころだけじゃないけど。
「優くん、一緒にパーティー組まない?」
桜田陽菜が助け舟を出してくれるが、商人と付与魔法師のパーティーなんて、先が見えないな。
「もう、こっちで良いよ。」
竹田美羽も遥人のパーティーを諦めたようだ。
「生産系ジョブだし、カレン王国に行けば、多少は大事にしてくれるでしょ。こころも諦めてこっちに来れば。」
「仕方ないのかな。」
「あの子人畜無害そうだし。」
ポツリとこころに美羽が呟く。
聞こえてるって。
確かにヘタレなのは否定できないけど、人畜無害って何だよ。
意外とすんなりと、パーティー編成が決まっていく。
「優はそれで良いのか?」
「う、うん。」
ツッコミイケメンの方がボクに気を使ってくれているのが意外だった。
本当はそっちに入りたいけど、この流れは覆りそうにないので、そう言うしかなかった。
というか、言えなかった。
男一人の女三人でハーレムっぽい構成にはなっているが、ボクの味方はいなさそうだ。
こちらのパーティーは、「竹田 美羽:鍛冶師」、「松田 陽菜:商人」、「こころ:薬草師」、そしてボク「梅田 優:付与魔法師」に決まった。
前衛無しの生産職中心の戦闘力皆無のパーティーだ。
※
もしかしたら、陽菜ちゃんが味方になってくれるかも知れない。
長身でちょっとぽっちゃりした彼女は落ち着いてて気も利くし、優しそうだ。
溢れる母性に相応しく、胸のところまで溢れかえっているが、人のよさそうな見た目である。
いや、可愛くないと言っているわけじゃない。
断じて。
ただ、美羽、芽衣、菜月の三人は相当な美形で、失礼ながらつい比べてしまう。
ごめんなさい。
「パーティー編成は決まったようですね。」
リムルがまとめにかかる。
不本意だが、まず覆ることは無さそうなので、諦めるしかない。
「この後の予定ですが、各国の要人とともに会食を終えた後、それぞれの国から連れて帰るパーティーが指名されることになります。」
「被ったりした場合はどうなるんだ?」
蓮がそう聞く。
「その場合は、話し合いにより、決める事になります。心配しなくとも、今回はすんなりと決まりそうな気がします。」
「何故だ?」
「それぞれのお国柄がありますから。会えばすぐに分かりますよ。会食までは、自由時間です。リーダーの決定やパーティーでの役割分担等を決めておくと良いかも知れませんね。」
結局、リムルにはぐらかされて終わった。
遥人と蓮のパーティーはリーダーは既に決まったも同然だが、ウチのパーティーはこれから話し合いだ。
広い食堂で、三つのパーティーに分かれてそれぞれ話をし始める。
「それで、リーダーなんだけど。」
美羽が仕切り始める。
「戦闘ジョブはゼロ。唯一の男は最低年齢だし。誰がリーダーでも変わらないんじゃない?」
気弱そうなこころはまず無理だろうし、一番年下のボクも無いだろう。
陽菜ちゃんがリーダーになったとして、こころと美羽を御するのは難しそうな気がする。
「陽菜、アンタがリーダーになりなさいよ。」
全員が意外な顔で美羽を見る。
「えっ?わたし?」
「そう。アンタ。」
「わたしで良いのかな?」
「アンタたちも反対しないよね。」
そんな威圧的に言われてもな。
「竹田さんが向いてるような気がするけど?」
ボクが何とか勇気を振り絞って聞いてみる。
「面倒くさい。」
皆んなが同意してくれそうだったが、美羽の一言で覆り、押し切られる。
全員が唖然とした顔をしている。
「はい。これで決定。」
大丈夫なのか、ウチのパーティーは?
昼食の時間まですることも無く、解散した後はベッドに戻っていた。
外の景色も見てみたいと思っていたが、テンションはダダ下がりで、何もする気が無くなったからだ。
「優、ごめんな。」
蓮さんがベッドで三角座りしているボクを見つけて声をかけてくれる。
「俺達が頑張って、魔王を倒すから。お前達が戦わなくても済むように。」
何で蓮はボクに優しくしてくれるんだろうか。
「何で気を遣ってくれるの?」
「実は妹にそっくりなんだ。」
おい。
そこは嘘でも弟と言ってくれよ。
それとか『きょうだい』と言って誤魔化すとかあるだろ。
そろそろ泣くぞ。
更にテンションが下がっていくボクを見て、まずいと思ったのか、蓮さんは気まずそうにフェードアウトしていった。