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少しずつ自信を取り戻してゆこう

 実は、次の行き先は全く聞いていなかった。

 陽菜にお任せになっているものあり、陽菜が何か考えているのもあって、何か聞きづらいきがしているのもあった。

 どうしようか考えながら部屋に戻ると、部屋に入るなり陽菜はボクに向かって言った。

「次の目的地は、私が決めたよ。」

「どこなの?」

「ブリューニ島のリリーラムっていう村に、ドルバーっていう古城があってね。」

「古城って、古い城のことで良いの?」

「うん。今回はそこのアンデッド退治です。」

 アンデット退治となると、通常は僧侶や神官がメインとなるのが通常ではある。

「もしかして聖属性付与をあてにしてるの?」

「そう。聖属性付与があれば、アンデッドも楽に倒せるよ、きっと。」

「いや、でもまだ試したこともないし。」

「絶対大丈夫だから。」

「絶対って?」

「ちゃんと、図書館で読んだ本にも書いてあったから。聖属性を付与した剣だと、肉体も精神体も難なく断ち切れるらしいの。鎧を着こんだアンデッド以外は、余裕だね。」

 まだ、アンデットとは戦ったことがないため、どれほど効果があるか分からない。

 しかし、陽菜の勢いに圧されてつい返事をしてしまったのだ。



 新年をケアールドで迎え、食料や装備を整えてから、徒歩でリリーラムへ向かう。

 ケアールドではたまにしか雪は降らないが、北部のリリーラムではもう少しすれば雪が降る。

 そのため、雪の降る前までに依頼を終わらせて戻ってくる予定だ。

 リリーラムまでは通常徒歩で、5日ほどかかるらしい。

 そうは言っても、目の見えないボクが現代日本のようにきれいに整備されていない街道を歩くため、2日近くは余分にかかると思っていた。

 3日目の今日は悪路のため思ったほど進めず、森を抜ける道の中で野宿することになってしまったのだ。

 街道脇で野宿をしていると、野宿の火に釣られて出てくるものがあった。

「優くん!盗賊!」

 盗賊だ。

 陽菜の叫び声に近い声で跳ね起きる。

「優くん。どのぐらいいるか確認しないと。感覚強化を。」

 基本的に、盗賊といっても、無差別に人を殺すわけではないと、前に冒険者ギルドの受付のベンから教わっていた。

 ただ、女連れの場合は一概に大丈夫とも言えないらしい。

 特に二人連れの場合、何としてでも連れ合いを守ろうとする場合が多いため、男は優先的に狙われて殺されるとのことだった。

 なるほどとは思ったが、まさに、ボクらはそれにあたっている。

「いや、ここは交戦前提で。」

 怖くなり、言いながら『手順化』のスキルで陽菜に戦闘用の強化をかけてしまっていた。

 ボクに向かって風を切る音が幾つも聞こえており、そのうち一つがボクの方に命中する。

 思わず、傷を押さえて片膝をついてしまう。

 銃とは違い、放物線の軌道なので屈んでも躱せる気はしないが、狙いは多少つけにくいだろうか。

 そう言いながら、ボクも片目を瞑り焚き火に土を被せていく。

「今日の月は?」

「新月だよ。」

 何とか、陽菜だけなら逃がせられるかも知れない。

 自分が殺されるのが怖くて、陽菜を戦闘できるように強化はしてしまったが、最後ぐらいはカッコつけて死にたいな。

 しかし、今は打開策が見えない。

 時間が欲しい。

「陽菜さん。隙を見つけたら逃げて。それに陽菜さんに人殺しはしてほしくない。」

「なら、何で優くんは杖なんて握ってるの。」

 この杖は、ケアールドに戻ってから買った仕込み杖で、ステレオタイプな魔法使いの持つような大きな物だ。

 日本みたいに仕込み刀ではなく、太い鉄の針が仕込まれているものだ。

 針の長さは20センチも無いぐらいだが、杖自体がそれなりの長さがある。

 目が見えない今は、攻撃力よりもリーチが欲しかったのだ。

「足止めぐらいならできるから。」

 陽菜がボクに近づくと、矢での攻撃が止んだ。

 やはり、陽菜は無傷で手に入れたいらしい。

 まだ盗賊たちは、まだ『ステータス鑑定』の範囲内には入ってはいない。

「馬鹿なこと言わないで。二人で生き残るの。」

 無茶なオーダーだな。

「目を瞑ってて。」

 見が見えなくなってから、やや音には敏感になっているような気がする。

 四方を包囲されているわけではなく、街道の上下と東側の森から複数の足音が聞こえる。

 押さえて音を減らしてはいるものの、駆けていゆため、金属の重そうな籠もった音でが響いている。

 鎧までしっかり装備している者も5人は超えているだろうか?

 気配を感じてから少し時間が経った。

 装備の音が聞こえない方の森なら何とか逃げ延びれるか?

「陽菜さん。逃げるなら向こうに。」

 小声で森の方を指さした。

 陽菜が首を縦に振る気配を感じ、腰を上げると、陽菜もそれに従っているようだ。

「ついていくから、先に行って。段差とかあったら教えて。」

 そう言って、陽菜を先に歩かせる。

 足音を殺しながら、森の中に踏み入っていくが、枝や枯れ葉の音は消しきれない。

 盗賊たちの足音はどんどん近づいてくる。

 遅れるボクを陽菜は手を引くために、横に付く。

「何処かで迎え討つよ。」

「駄目だ。逃げないと!」

 陽菜がそう言うのをボクは否定する。

 しかし、まだ無策のままだ。

 焦りと言うことを聞いてくれない陽菜のお陰でパニックに近くなっている。

 ボクが足を引っ張っているため、もうそこまで追ってが迫ってきている。

 その時、前方に不意に気配がする。

「誰かいるっ。」

 陽菜に声をかけると同時に、向こうはボクらを見咎めてきた。

「誰だ!」

 20から30代の男の声だった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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