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回復薬を作ってみよう

 幾つかこころの使う道具や材料を買って宿に戻ると、既に美羽と陽菜は部屋で寛いでいた。

「お帰り。こころさん。優くん。」

「ちょっと、身体でも綺麗にしてきたら。」

 美羽に促され、身体を拭く湯を貰ってくる。

 戻ってくると、ドアには鍵がかけられていた。

「ちょっと、入れてよ。」

「もう戻ってきたの?もう少し待っててよ。」

 美羽の声が聞こえてきた。

 しばらく待っていると、陽菜が扉を開けてくれた。

「ごめんね。新しく服を買ったから、試着してたの。」

 なら、仕方ないかと思いながら見回して見ると、装備を弄ったメンバーがいた。

 陽菜のチェインメイルは首元と腰あたりにスカーフみたいなものが巻かれており、身体のラインが浮き出て色っぽい。

 巨乳が強調されすぎだ。

 美羽はチェインメイルの上からレザーアーマーではなく、金属の胸当てを着けている。

 緋色に塗られた胸当てはビキニっぽくて良い。

 こころは丈夫そうな若草色のロングコートだ。

 いまはまだ良いけど、季節は春から初夏になりかけているものの、体を守るには暑くても我慢かな。

「どう?優?」

「皆んな可愛い。」

 それしか言えなかったが、失敗ではなかったようだ。

 本心だし。


 早めの夕食を宿でとることにする。

 今日は遅くまで明かりが必要なため、ランプの油を瓶ごともらい、その代金を先に渡しておいた。

 部屋に戻りこころが調剤道具を広げはじめると、みんなで取り囲む。

 回復薬が気になって仕方がないのだ。

「ねぇ、今ある材料でどれぐらい作れるの?」

「3本。」

「ねぇ、陽菜。回復薬ってどれぐらいするの?」

「すぐに傷が治る回復薬は金貨10枚は下らないと思う。深手の傷でも一命をとりとめることができるらしいから。確か、賞味期限もあったと思うんだけど。」

「1か月。変質と魔石の魔力が尽きる。」

「そりゃ、出回らないわよね。でも、戦時なら飛ぶように売れるんじゃない?」

「美羽の言うとおりだけど、そんな物騒なこと言わないでよ。」

「はーい。でも、優が魔石を作れるし、本格的に頑張れば儲かるんじゃない?」

「パーティー解散したら軍に雇ってもらう。でも上級覚えてから。」

「このうえに上級回復薬なんてあるんだ。」

「うん。効果がもっと高い。でも、錬金のスキルが要る。」

 具体的にどのぐらいの効果があるか分からないが、一命をとりとめるぐらいらしいから、普通の回復薬でも相当なものなのだろう。

 美羽も陽菜もこころもある程度レベルを上げれば今後生活には困らないだけのスキルを手に入れられる。

 みんな順調だけど、自分の未来だけが見えないな。

 その間にこころは新調した行李から薬草や薬品を取り出し、薬研で苔を潰してゆく。

「苔ですよね?」

 陽菜が聞く。

 確か、森の中の岩肌に生えていて、黒くて丸い実のようなものが成っていたものだ。

「トメント。すごく貴重。酸で成分を抽出する。」

 そう言って、細かく砕いた苔を少しだけ大きめの瓶に移してから、先程買った酢酸の液を注ぐ。

「優。魔石6個。」

「え?6個も使うの?」

 驚きながらも、素直に魔石を渡す。

「3つは材料。あとは保管。入れてないと劣化する。」

 なるほど、原価だけでも金貨数枚は必要というわけか。

 トメントと酢酸の溶液に魔石を入れると淡い光を出しながら魔石が溶けていく。

 みんなでこころの作業を覗いているが、普段とは違い、スキルを使う時はあまり人目が気にならないようで、黙々と作業を進めていく。

 ボクはその横で魔核を魔石に変えていく作業をしながら、こころの作業を見ていた。

 3つほど中瓶に分けて新たな薬品を作ってゆき、最終的に混ぜ合わせていく。

 混ぜる際に怪しい蒸気が出たりしており、なかなか見飽きない。

 いつの間にかかなりの時間が経っており、最後の鐘、多分午後9時だったと思うが、それが鳴ってからもまだ時間がかかっていた。

 時計は広場にしかないため、手元で時間は分からないが、深夜というぐらいの時間まではかけて、3本の回復薬は完成した。

「完成。」

「ようやく出来たわね。試してみたいけど、どうしたら良いか分からないし、高いものね。」

「美羽さん試すって、どうする積りだったの?」

「優を実験台にしようかと…」

「もう、止めてよ。」

「こころ。これって賞味期限過ぎたらどうなるの?」

「ただの栄養ドリンク。身体には良い。」

「陽菜。もしかして、賞味期限切れても売れない?」

「売れますけど、金貨1枚が良いところですね。魔石分だけでも赤字ですね。捨てるよりはマシってところですね。」

「そっかー。たくさん欲しいけど、リスキーよね。」

 少し気になっていたことを改めて聞いてみる。

「こころさん、この回復薬ってゲームとかみたいにすぐに傷が塞がったりするの?」

「うん。魔力を使って薬効を高めて、治癒力も上げてくれる。ただし、応急処置をしてから。傷が開いたままだったりすると、ダメ。深い傷ならかける方がいいときもある。」

 適当に飲むだけじゃダメってことか。

 聞いといて良かった。

「骨折とかには効くの?」

「効くみたい。」

「傷痕が残らなかったりする?」

「ううん。あくまで早く治るだけ。傷による。」

「さーて。もう夜も遅いから、さっさと寝るわよ。」

 そう言いながら美羽はランプを消すために立ち上がった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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