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新しい武器を画策してみよう

 借りた客室は良い部屋だったし、体を拭く湯も用意してくれ、至れり尽くせりだった。

 更に最終日には、転移者であるアンジェラ婆さんのおじいさんが作ったお風呂をいたたけるとのことだ。

 それを聞いたボクらのテンションは最高潮だった。

 ボクは普段通り魔石を2つ生成して、そのまま眠りについた。



 少し早めに出て、ぶらついている冒険者たちの集団に合流する。

 目的は、こころの新兵器開発に必要な材料を錬金術士に聞くためだ。

「錬金術師の方はいらっしゃいますか?」

 聞いて回ると、一人だけ錬金術師がいることが分かり、まだ宿に居るとのことで、聞いた宿に向かう。

 その男は宿の1階で遅い朝食を摂っていた。

「なに?たくさんの煙の出る物だって?ああ…」

 何か思い当たるものがあるようだった。

「教えてくれないの?」

「情報は俺らの命だぜ。というか、何を作ろうとしてるんだよ。」

「ちょっと教えてくれたって良いじゃない。」

 美羽の言葉を無視して、ボクらから何か巻き上げれるものがないか思案しているのか。

「しかし、そこのネーチャンの行李って特注か?良いなそれ。」

 錬金術師の男は、大きな革の鞄を下げている。

「前に作ったの、ケアールドの職人街にある。」

「へぇ、どんなのなんだ?」

「藤の籠を重ねて、仕切りがある。」

「ケアールドはあんまり行かねえからな。頼んで送ってもらったりできねぇかな?」

 まあ、錬金術師も似たような職種だから、興味はあるか。

 こころもペースを掴まれはじめている。

 ボクは下がってから陽菜を捕まえた。

「錬金術の方がコレを使うと思うんだよ。」

 そう言って、陽菜に幾つかの魔石を握らせた。

「さすが、優くん。わかったよ。」

 確か、魔石は錬金術でもよく使ううえ、需要の多いケアールドに集中する。

 ケアールドを根城にしていない冒険者にとっては、かなり貴重な物となる。

「すみません。お話を戻しますけど、煙の出る薬品なんですが、心当たりがあるんですよね。」

「まぁね。」

「と言うより、今、持ってますよね。」

「さっきも言ったとおり、情報は…」

「何を作るか教えてあげましょう。冒険者ならそれで充分に元が取れるはずですよ。武器を持っていない貴方にとってはね。」

 陽菜が不敵に笑う。

「それで、情報料はフィフティーフィフティー。いや、必要な薬品の情報は貴方以外からでも得られますし、釣り合わないと感じるのであれば、この話は無かったことにしましょうか?」

「お前らが作りたい物ってのは、武器になるってことなんだな。」

「さあ?情報は命なんでしょ。そんな簡単に教えるんですか?」



「さあ!野郎ども!作戦は頭に叩き込んだか!」

 夜が明け切らない時分からアンジェラ婆さんが屋敷の前に集まった冒険者たちを前に作戦の説明をしていた。

「それじゃ、行くよ!野郎ども!」

 100人前後の男たちが声を上げて応える。

 作戦は簡単だ。

 ウォーターリーパーは深夜から夜明け前に最も活動が活発になり、魚を喰い尽くしたあと、飢えたやつらは陸に上がってくる。

 それを海岸線を封鎖して、包囲して商店と家に囲まれた街の広場に追い込んで一網打尽にするのだ。

 バーレムから南北に伸びる海岸線に面して作られた街で、漁港を中心に商店が連なり、その中心に広場がある。

 ボクらは港の北側からウォーターリーパーを追い立てることになった。

 日の出とともに、ウォーターリーパー達は一斉に港を目指して移動を始める。

 既にアンジェラ婆さんのスキルにより、能力の強化がされていたが、重ねて全員に筋力強化と武器強化をかける。

 美羽と陽菜は自分の武器で、ボクとこころは農家で使うでかいフォークを借りて追い立てていく。

 刺してウォーターリーパーを仕留めることもできるが、専ら叩いて追い立てるためのものだ。

 美羽はリーチの長いハンマーを左手の位置を変えて自由に間合いを変化させながら恐ろしいスピードでウォーターリーパーを潰しながら進んでいく。

 陽菜は踊るように剣を振り回し、ウォーターリーパーを斬り裂いてゆく。

 猫ぐらいの大きさであるから、一撃で済むとはいえ、二人は恐ろしいスピードで駆逐していく。

 美羽と陽菜に恐れをなして、ウォーターリーパーの群れは内陸部に向かって逃走していく。

《レベルが8に上がりました。》

 ほとんど活躍していないボクのレベルも上がっていく。

 周囲の男たちは、その様子を驚いた顔で眺めている。

 公園が見え始めた頃には、二人の劇端数はゆうに100を超えていただろう。

 それでもまだ、1,000匹近いウォーターリーパーが公園に集結している。

 陸側の道は板で封鎖されており、ものすごい密度でビタンビタンと跳ねている。

「こころ、準備はできてる?」

 ハンマーを振りながら、美羽が声をかける。

「うん。」

 こころは、準備していた土瓶を群れの真ん中に放り投げる。

 鈍い音とともに土瓶が割れる。

 土瓶が落ちた辺りからざわめきたつ。

 海岸の岩に済むカラスガイに似たバーディスという貝から採れる強力な脂溶性の神経毒だ。

  脂溶性 ということは、皮膚から吸収されるということで、皮膚が薄い粘膜のようなウォーターリーパーにはよく効く。

 致死性のものではないが、即効性があり、激しい痛みと痺れで動けなくするのだ。

 まぁ、そんな致死性の毒でないので、公園に撒くようなことも許可されたのである。

 動けないウォーターリーパーが増えてきたところで、ボクは群れの中に入り込んで、フォークを突き立てていく。

 うまくいくと、一振りで3匹を刺し殺せる。

 陽菜も剣からフォークに持ち替えて ウォーターリーパーを潰していく。

 周りにいた冒険者たちも参加し始め、あっという間に片がついた。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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