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魔石を売ってみよう

 ええ、甘かったです。

 薬草採取2日目から、依頼は3件取って2件をこなすのが精一杯。

 しかも、少量、小口の依頼も多く、1日銀貨4~5枚程度にしかならないし。

 少ない日は銀貨3枚。

 武器の手入れなんてしたら、もう即赤字です。

 冒険者なんて、リスクが高い割には設けも少ないし、うまみがないです。

 レベル上げのほうも、4日目に野犬が出ただけなので上がってません。

 何とか昨日ぐらいから 魔力のコントロールができはじめてきたので、 魔石を1日2つ作れるようになりましたが、まだ、魔石の買取依頼がきていないので、ジリ貧で10日が過ぎてしまいました。

 あと、こころが薬を調合するのに必要な容器や綺麗な水なども買う必要があったのも、財政を圧迫している原因のひとつですが、こちらも必要経費なんで、ケチるわけにはいかなかったので、仕方がありません。

 魔石の買取依頼がくるまでなんとか頑張ってみます。



「ねぇねぇ、陽菜。生活費は大丈夫?」

「約束の2週間はなんとかなりそうですけど。」

 力なく陽菜が答える。

「ちょっと儲かりそうな依頼に手をだしてみる?」

「すみません。私の剣もメンテナンスにお金がかかってしまって。すみません。」

 美羽の武器はハンマーなので、柄が折れない限り、特にメンテナンスは必要ないが、剣ってやつはそうはいかない。

 メンテナンスしなければ、ただの鉄の棒だ。

 まぁ、切れなくても充分殺傷能力はありそうだけど。

 一人だけ出費がかさむので、陽菜が気にしているのだ。

「ごめん、陽菜。気にしないでよ。」

「ごめん。こころも道具代かかる。」

 あれ、こころは一人称自分の名前なんだ。

 お、美羽が少し驚いてる。

「傷薬売る?」

 止血剤などの傷薬なら、普通の薬屋で買い取ってくれるが、ボクらのパーティーに回復役はこころしかいないので、ここで薬を売ってしまうわけにはいかない。

「そうね、もう少し困ったらお願いするわ。みんな、ごめん。とりあえず、冒険者ギルドに行こう。」

 美羽は一旦、話を切り上げた。


 冒険者ギルドに着くと、目ざとくベンがボクらに声をかける。

「嬢ちゃんら、レベルはどのぐらいになってる?」

「10ぐらいですけど。」

「なら、いけるかな?魔物討伐の依頼がきててな。」

「魔物討伐ですか。それって危険なんじゃないですか?私たちのパーティーだと戦闘職が少ないので、あんまり向いてないと思うんですけど。」

「まぁ、そうなんだが。ウォーターリーパーという魔物が西のレッドウィッチで大繁殖しててな。一体一体は弱いからたいしたことないんだが、いかんせん数が多くてな。1匹辺り銅貨2枚しかないが、数がいるからそれなりに稼げると思うし、結構困ってるんだわ。」

「どんな魔物なんですか?」

「足の無いかえるにヒレみたいなのが生えてる。子犬ぐらいの大きさだな。これぐらい。」

 ベンは子犬というか、猫ぐらいの大きさを手で作る。

 この国には猫がいないので、子犬ということになるんだろうけど。

「それぐらいなら、大丈夫なんじゃない?」

「頼めるか?」

 強さよりも数が要るんだろうな。

 陽菜に目配せしてみると、頷いてくれる。

「依頼は何日かかかるものなんですか?」

「ああそうだな。前の時は2週間ぐらいかかったな。」

「じゃあ、泊りがけになるんですよね。宿は確保できてるんですか?」

「あ、いや。ケチりたいのもいるから、宿は自分でとることになってる。」

「他にもパーティーがいっぱい来るんですよね。泊まれないとなると困りますよ。女の子ばっかりなんですから。」

「そんなこと言われてもなぁ。」

「ベンさんよ。依頼主はどうせ、レッドウィッチ女男爵なんだろ?あの婆さんなら女の子だし、泊めてくれるんじゃないか?使用人の小屋とか納屋なら。」

 三十代ぐらいの別の受付の男が助け舟を出してくれる。

 しかし、婆さんだから女男爵か。

 なんだか滑稽だな。

「女性でも爵位を継げるんですね。」

 陽菜が代わりに聞いてくれる。

「いや。跡継ぎが無かったんで、当代限りで許可が出たんだ。養子を必死で探してるフリはしてるみたいだが、田舎だし、領地も小さくて金も無いみたいだし、土地も痩せてて漁業しかないから、碌でもないのしか近寄ってこなくて意固地になって断ってるのさ。」

 悪く言ってるようだが、悪意が感じられない。

 むしろ、好きなのかな?

「そのレッドウィッチ女男爵が亡くなったらその後はどうなるんですか?」

「王国に召し上げだな。そのうえで、接してる貴族の報奨でどこかに下賜されるんだろうよ。」

 まあ、そんなもんか。

 どうやら随分な変わり者みたいだな。

「どうして女男爵が魔物退治を頼むんですか?」

「そりゃ、産業が漁業しか無いからな。漁ができなきゃ死活問題だ。長く続けば皆が食うに困る。」

「ベンはレッドウィッチの方の出身だから、気になって仕方ないのよ。ベンのためにも、依頼を受けてやってくれねぇか?」

 さっき口を出してきた男がまた口を挟んでくる。

「うるせーな。ジョン。」

 なるほど、それでか。

「冒険者ギルドと王国とは仲が良くなかったんじゃないですか?」

「そんなこと気にするなら、依頼なんてしてこねぇよ。婆さんなら大丈夫だろ。効くかは分からんが一応、紹介状は書いてやる。受けるか?」

 ここまで聞き出して断るのも気が引けるだろ。

 受けてやらない理由も無いしな。

 陽菜が振り返ると、みんな賛成の顔をしている。

「その依頼、受けます。」


 今回の依頼は、1匹あたり銅貨1枚と格安だが、数が稼げるとのことだ。

 ただ、後払いなのが少しキツいんだけどな。

「あの、魔石の依頼は?」

 気になったので、聞いてみる。

「おう、忘れてた。10個で金貨4枚だ。ずいぶん買いたたかれたが、質が良かったら直接買うって言ってたぞ。」

 商人ギルドはゴブリンクラスなら金貨1枚で流通させているが、量を買うとかなり値引いてくれるらしい。

 まぁ、そんなに安い訳でもないんだろうし、レベルが上がってステータスが上がれば、増産も見込めるし、継続的に買ってくれる客が付くのはありがたい。

「それでいい。」

「構わないんだな。」

「うん、また買ってくれる方が嬉しい。」

 鞄の中から魔石を出してベンに渡す。

「あれ?11個あるぞ。」

「失敗作はオマケ。ボクらは使わないし。」

 失敗作を渡したのは、成功率が高いことを示しておけば、また声をかけてくれる可能性が高くなると思ったからだ。

「ちょっと待ってな。」

 ベンが店の奥からお金を取ってきた。

 多分、店の奥に金庫でもあるんだろう。

 金貨4枚とは言っていたが、実際に貰ったのは、銀貨48枚で細かい方が使いやすいと気を使ってくれたのだろう。

 ボクにお金を渡したあと、陽菜が話しかける。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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