表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/101

新しいスキルを使ってみよう

「こころさん、ここから海岸に向かって、依頼の薬草は見える?」

「砂浜にハマアサガオ、向こうの岩にスナービス。近くにヤクシソウもあると思う。」

「ここで取れる薬草で、攻撃に使える物はできる?」

「ハマアサガオは、麻酔の効果。麻痺に使える。」

「それは液体?」

「ううん。煙。」

 突発的な戦闘には使えないか。

「回復は?」

「今は止血だけ。ヤクシソウは効果高い。」

 ボクに課せられたミッションは、一切の損害を与えずに、パーティーに勝利をもたらすこと。

 なら、慎重になりすぎてちょうど良いぐらいか。

 蟹相手に有効なのは美羽のハンマーのみ。

 陽菜のショートソードは牽制以外の役には立たない。

 こころはまだ材料不足で、戦力にはならない。

 あとは、ボクが持つ流木でしばらくの時間稼ぎができるだけ。

「こころさん。薬草の場所は分かる?」

「ヤクシソウは浜と岩場の間。砂浜の紫色の花はスナービス。」

「見えているところだけで二つだね。」

「うん。」

 作戦は決まった。

「砂浜で囲まれたら大変だから、ここで迎え討つよ。最初に頑張れば、あとが楽になる。」

 浜辺に降りる岩の裂け目の小道の入口で再び強化魔法をかけた陽菜と美羽を待機させる。

 陽菜が右、美羽が左だ。

 ボクは小道の右脇の岩の上に登り、大声をあげながら、持っていた流木で岩を叩く。

「ああー!わあー!うぉー!」

 ゾロゾロと蟹が辺りから這い出てくる。

 作戦どおり陽菜が足止めし、美羽がトドメをさしていく。

《レベルが6に上がりました。》

 まずは一匹。

 左手に現れた蟹を美羽はまた見事に一撃で仕留めていく。

 そして陽菜が足止めしている蟹に向ってまた美羽がハンマーを振る。

「優くん!剣を挟まれたら、持っていかれそう!次は筋力強化で!」

 岩の上に登ってきた蟹を流木のフルスイングで小道にはたき落とす。

 今度は陽菜が蟹の口に剣を突き入れている。

 有効だろうが、ハサミで防がれることも多いだろう。

「陽菜ちゃん。攻撃するときは、慎重にね!」

 陽菜はこちらを見ずに首だけ上下に振る。

 順調に蟹の死体が積み上がっていく。

 美羽の振るったハンマーが振り上げたハサミで軌道を変えられ、岩にぶつかる音が響く。

 ボクは飛び降りて助けようとするが、美羽が素早く距離をとるのが見えたため、岩の上に留まった。

 しかし、気が付けば、積み上がった蟹の死体が肩ほどまでの高さになっており、上から襲われるような形になってきた。

「強化はどう!」

「今切れたよ!」

 美羽が返してしきた。

 岩から飛び降り、二人に筋力強化をかける。

「二人とも下がって!陽菜さんの左側でボクが足止めする!」

 そう言いながら、陽菜の左手に並ぶ。

 岩を超えてきた蟹が眼前に迫ってきたので、流木で突いて距離をとる。

 陽菜が目の前の蟹の口から剣を引き抜いたあと、ボクの流木を挟んでいる蟹のハサミの根元を斬る。

 自由になった流木を高く振り上げ、目の間に振り下ろす。

 一発では倒れず、3発目でやっと殻が砕けて動かなくなった。

 ボクはまた、新たな蟹に向かい流木を振り回し、挟まれて力比べになる。

 一対一なら、向こうの攻撃も届かないので怖くは無いが、相手は群れだ。

 掴まれた流木ごと振り回そうとするが、踏ん張られる。

 引く力はさほどではないが、踏ん張りは強く、全く動かない。

《レベルが7に上がりました。》

《新たに『武器強化』、『防具強化』を覚えました。》

 大した活躍もしていないのに、レベルは上がるんだな。

 パーティーって便利だな。

 新たに覚えた魔法なら、強化対象が違うから重ねがけできるんじゃないか?

 そう思って、体を捻って陽菜に向き、武器強化の魔法をかけてみる。

「武器強化!思いっきりやってみて!」

 陽菜が力いっぱい剣を振り下ろすと、太いハサミの半ばまで剣が刺さった。

 気持ちよく両断とまではいかないか。

 しかし、これで陽菜も蟹を屠ることはできるようになっただろう。

 予想通りだったとはいえ、相当な戦力強化となるため、かなり嬉しい。

 美羽にもかけたいが、まだ蟹との棒引きの真っ最中だ。

 あらかた左翼の蟹を蹴散らした美羽が助けにきてくれた。

 気が付けば、20を超える蟹の死体が辺りに散らばっていた。

「はー。もう疲れたわ。でも、ここまでする必要あったの?」

「ボクらのパーティーじゃ、砂浜で囲まれたらすぐに全滅ですよ。」

「新しい『武器強化』が『筋力強化』と一緒に使えるのは、すごく良いです。でも、とりあえず、休憩しましょうか。」

 陽菜が間に入ってきた。

 いや、本当にウチのパーティーには必要なんだけどな。

 後でこころが申し訳なさそうにしている。

「薬草を集めないと、こころさんも活躍できませんから。」


 確か、蟹は魔物だってベンが言ってたはずだ。

 魔物なら魔核があるはず。

 そう思って、転がっている蟹の解体に取り掛かる。

 ゴブリンより遥かに忌避感は薄い。

 蟹を食べるときの要領で、尻側にナイフを差し込んで、殻をこじ開ける。

 開いた隙間から流木を差し込んで一気に殻をはがすと、中心辺りにに魔核が除いている。

 忌避感も薄いし、取り出しやすいときたもんだ。

 誰も手伝ってくれそうにないので、一人で必死に蟹から魔核を回収した。


 砂浜の中央部に群生しているハマアサガオの花を回収していく。

 ハマアサガオは実ではなく花の香りに薬効があり、リラックスや睡眠導入効果があるらしい。

 それで、そのエッセンスで作られたアロマキャンドルやオイルは高値で取引される。

 ただし、アロマ成分は蒸留して抽出する必要があるらしく、とりあえず、大量の花が必要になるらしい。

 花だから、あるだけとっても、また咲くから乱獲はそんなに気にしなくても良いらしい。

 4人でこころの籠に摘んだ花を放り込んでいく。一番底の籠に溢れるぐらい花を入れると、こころは花がつぶれるのも構わず、次の大きさの籠で押し込んでいく。

 必要なのは香り成分であるから、別に状態は気にしなくて良いらしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
こちらもご覧ください。


小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ