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魔石を売れるか交渉してみよう

「普通は騙された人間が帰ってこない限り発覚しないものだからね。逃げ帰ってこれた時点で君たちの勝ちだよ。」

 勝ち負けじゃないだろ。

「あと、報酬は経済制裁措置の場合は出せないな。罰金で済ますのであれば、迷惑料を上乗せして報酬を払うことになるが、セレス村は金に困っての行為だろうから、期待はしないでくれ。」

 世知辛いな。

 慰労金とか迷惑料とかあると思ってたけど、甘かったな。

「わかりました。経済制裁措置はいつごろ向こうに伝わるんですか?」

 やっぱり、交渉ごとは女性陣では一番年下だけど、陽菜が一番だな。

「今朝に冒険者ギルドから馬を出しているから、今日中には伝わる。明日からは普通に出歩いても大丈夫だろう。」

 今日一日は大人しくしてた方がいいってことか。

「はい。ところで、話が変わるんですけど、魔石を作ることができたんですが、今日は買取の依頼とかありましたか?」

「まさか、魔核から魔石を作ったのか?昨日言ってたもんな。」

 おっちゃんが身を乗り出して聞いてくる。

「ほう、誰かが魔力操作のスキルを持っているのかい?」

「ボクです。スキルはありません。」

 二人とも不思議そうな顔をしている。

「優くん、君はスキルも無いのに、魔力を操作して魔核から魔石を作ったっていうのかい?」

 木田がまじめな顔できいてくる。

 珍しいことなんだ。

「ええ。陽菜ちゃん、見せてあげて。」

 陽菜が懐から魔石を取り出す。

「ちょっと俺に見せてくれ。」

 そういって、おっちゃんが手を出すので陽菜が魔石を渡す。

「こりゃ、本物だな。」

「優くん。今、ここでできるかい?」

「今はちょっと。昨日は気を失いましたし、不安ですね。」

「なるほど、スキルでの魔力操作じゃないから、細かい調整ができないのかも知れないな。」

 どうやら、ボクの言うことを信じてくれたらしい。

「この大きさの魔核だと、二束三文で商人ギルドか魔術師ギルドに買い叩かれるが、魔石となると銀貨10枚近くになるんじゃないかな。いや、依頼で出てれば金貨一枚を少し切るぐらいかな。」

 陽菜の見立てとそう変わらない。

 持っている魔核の数にも限りはあるし、一日一つしか作れないから、がっぽがっぽとはいかないが、それなりに儲かるな。

 まだ、魔核は40個以上残っていることを考えると、しばらくは宿代に困ることもないな。

「何に使う?」

 興味を持っているのか、こころが聞く。

「多いのは魔力ランプだな。これ一つで一月分ぐらいになる。」

 そういえば、王城のランプは電灯みたいなのだったよな。

 それの事か。

 ってか、金貨1枚で1か月だったら、王室全体でランプ用の魔石代だけでいくらかかるんだ?

 まぁ、大量購入するから、多少は安くなるんだろうけど。

「まぁ、 魔石ランプはかなり明るいし長く保つから、同じ明るさだと燃料代だけで比べれば脂代の倍もいかないかな。汚れないし、臭いもしないし、補充も要らないことを考えると充分にメリットがあるもんだよ。ランプ自体は驚くほど高いけどな。」

 明かりのコストって高いんだな。

 もとの世界ではあんまり気にして無かったな。

 宿の獣脂ランプも部屋に一つしかついてなかったし、暗かったもんな。

 そりゃ、日が暮れたら寝るわ。

 みんな、同じことを思っていたみたいで、改めてびっくりしている。

 現代日本人からは考えられないことだもんな。

「他にも魔道具とかの動力源になったりもするから、それなりに需要はあるが、魔石は商人ギルドがほとんどの流通を牛耳ってやがって、大量購入させられるのが多いんだよ。少なくても売れるんなら、それなりに依頼がくるかもしれんな。ちょっと欲しそうなヤツに声をかけてみてやるよ。」

「ただ、ベンも言ってたように、魔石は基本的に商人ギルドを通じて流通しているから、魔石を作れるのがばれると商人ギルドから圧力をかけられるだろうから、気をつけたほうがいい。」

「うん。」

 ってか、受付のおっちゃんの名前がやっと分かったな。

 『ベン』ってありふれた名前だな。

「使い終わった魔石を融通してもらったりとかはできますか?」

 ガスボンベみたいに充填するだけなら、いちいち魔物を狩りにいかなくても良くなるだろうから、提案してみる。

「魔石は魔力を使い果たすと、砂みたいに崩れて無くなるんだよ。」

「そうだったんですか。」

「おう、それじゃ、俺は窓口に戻るわ。またきなよ。」

「はい。」

 陽菜の返事を聞いて、ベンは笑顔で部屋を出て行った。

「それじゃ、また、困ったことがあったらおいで。」

 木田に部屋から追い出されたボクらは、まっすぐ宿に戻ることにした。



 冒険者ギルドの事務所を出てから、広場で話をしていた。

「どうする?昨日と同じところにする?それとも、もっと高いところにする?」

「これ以上の贅沢はまだ無理ですよ。」

「まぁ、何とか我慢できるぐらいだったし、昨日と同じところで良いか。」

「連泊安くならない?」

 こころが聞いてくる。

「安くはなりますけど、今後の方針が決まってからでないと。」

「薬草集めないと役に立てない。しばらく近くで集めたい。」

 たしかに。

 薬草使いのこころは、薬草がなければ、何の役にも立たないもんな。

 昨日の件もあって。うまくいけば、攻撃にも使えたりするだろうし、準備さえ整えれば、回復だけじゃなくて貴重な戦力にもなりそうだ。

「そうですね。2週間とかそのぐらいで考えましょうか。」

「あと瓶や箱も要る。」

 そりゃそうだな。

 薬にしたり、乾燥させたりしたものを持ち歩かないといけないもんな。

「街の薬屋がどうしてるか、後で見に行こう。きっと参考になるわよ。」

 お、美羽から建設的な意見だ。

 いや、バカにしてないって。

 ボクも含めてみんなが頷いた。

「とりあえず、明日から2週間。こころさんの備蓄を増やす。それから、本格的にレベル上げをする。それで良いですか?」

 ボクの言葉に全員が頷く。

「では、まずは買い物に行きますか。」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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