戦闘デビューをしてみよう
結局、怪しくなさそうなものだと、朝食は串肉しか手に入らず、ボク、美羽、陽菜は食ったが、こころは朝から肉は無理というとこで、携行用に買ったパンを食べている。
「固い。味ない。パサパサ。」
結局、こころはパンもひと欠けぐらいしか食べなかった。
街から出て、セイルの村を目指す。
途中で『パリディウム』という薬草と『アガサ茸』というきのこを途中で採取しながらの旅になる。
森に入らないといけないため、魔物に遭遇する可能性が高いらしい。
まぁ、とりあえず戦ってレベル上げしないといけないし、それを狙っての森での探索も必要だろう。
この辺りの森では、ゴブリンが出るらしい。
ゴブリンは子供の背丈ぐらいの緑色した人型の魔物らしい。
一匹でいるなら、一般人でも退治できる程度のものなのだが、群れると脅威が増すため、一定数の群れが発見されると、通常は領主なりが退治に向かう。
高い税金を払っている民衆からすれば、当然だと思う。
では、なぜ、わざわざ、セイルの村でゴブリン討伐の依頼がでたのか。
兵士を動かすにも金がかかる。
そのため、ある程度の規模でなけれは兵士は派遣されない。
それともう一つ。
兵士たちを接待するための費用は現地持ちになるため、複数の村で負担ができなければ難しいのもある。
数は少ないが、生活に支障を来すレベルで、複数の村に跨がらないといった限られた場合だけ冒険者ギルドへ依頼が来るという訳だ。
だから、期限が短く、それなりの規模でそれなりの報酬の依頼しかないのだ。
まあ、武器の値段を考えると、買い揃えるより、依頼のほうが安くつかないと、依頼者にもメリットはないし。
ちなみに、野盗討伐はそれなりの報酬があり、依頼が出される頻度も高いが、報酬のとおり危険度が高い。
それに、人殺しを進んでしたくはないし。
とりあえず、レベル上げをして生産スキルを鍛えないと、生活に困るな。
城門を抜けて街道を進んでいく。
城門がある辺りは、かなりの人間や馬車の往来があり、混み合っている。
出入りは自由なようで、衛兵などの姿もない。
2時間ほど街道を進んでから、地図に従って森に入り、薬草探しから始める。
「薬草って、そんなに簡単に見つかる物なの?」
「地域と条件は分かる。あとは頑張って探す。」
「そうですね。とりあえず、頑張るしかないですよね。」
しばらくさまよっていると、少し離れた場所でガサガサと軽い物が落ち葉を踏む音がする。
「みんな、気をつけて。」
ボクが声を掛けるまでもなく、全員の顔が強張っている。
「美羽さん、筋力強化!陽菜ちゃん、防御強化!」
前衛の二人が武器を構える。
陽菜を防御強化にしているのは、『逆襲』という使徒としての固有スキルがあるからで、多分、ダメージを食らったら反撃が強くなる物かも知れないからだ。
言葉の感覚だけでの判断だから、本当はどうか分からないけど。
それよりも、動物も殺したことのない2人の気持ちの部分が心配だ。
木陰の影が見えた。
野犬だ!
冒険者ギルドのおっちゃんからは、ゴブリン討伐より、野犬に気を付けろと言われていた。
10匹を超えていたら、かなり危険らしい。
「防御強化!こころさん!ナイフを構えて!」
ボクもナイフを構える。
美羽と陽菜を左右前衛で前に展開し、ボクとこころが後に並ぶ。
「こころさんは、後を警戒。美羽さん、的が小さいんで、横なぎで。」
「分かってる。」
茶色い野犬が3匹、2人の前にで吠え立てている。
美羽は躊躇い無く、ハンマーを振り回す。
「ギャワン!」
首から肩にかけての部分にハンマーが当たり、飛ばされる。
いや、初めての実戦で、全力の一撃。
男前過ぎだろ。
陽菜の方は、野犬2匹と距離の取り合いをしている。
美羽が陽菜の方に向かおうとした時、背後から野犬が飛び出てきた。
隠れてやがったのかよ。
持っていたナイフを振り回して野犬に迫るが、低い体勢で力も入らない。
当たったが、毛皮は意外に固く傷はかなり浅い。
その野犬はボクの喉元をめがけて跳び上がる。
何とか左手でカードするものの、噛みつかれて、地に引かれる。
必死になって野犬の肩口にナイフを何度も突き立てる。
更に別の犬が迫って来ているのも見える。
「優!」
迫って来た犬は目の前ではじけ飛んだ。
美羽が助けに来てくれたのだ。
ボクは首元に何とか刺さったナイフで中を掻き回すように捻った。
ようやく、絶命してようやく噛み付いた顎が外れる。
陽菜の方は更に増えていた野犬を順調に斬っていってたみたいで、陽菜の足元に3匹転がっていた。
こころは、その場でへたり込んでいた。
《レベルが2に上がりました。》
戦闘中に天の声なんて聞こえても集中できん、邪魔なだけだな。
「優くん、怪我は大丈夫?」
左の袖は破け、血が染み出している。
かなり深く噛まれ、ぽっこり犬歯の形に穴が開いているものの、引き裂かれてないので、そこまでの怪我ではなく、出血もそれほどでもない。
狂犬病は少し怖いが、症状が出てそうな犬はいなかったと思うので、あとは運を天に任せるしかないだろう。
「ちょっと血が出てる。」
今は興奮して痛みが気にならないんだろうけど、後から痛むよな。
「ごめん。優。油断してた。私の責任よね。」
美羽がしおらしく言ってくる。
「大丈夫。」
近付いてきた陽菜がボクの袖をまくり、傷の様子を見てくれている。
「痛そうだね。とりあえず、包帯巻いておくね。」
「うん。」
うん、なんだろうね。
風呂に入ってないとか、もうどうでもいいよ。
やっぱり、女の子はいい匂いがするよな。
容姿だけでいえば、そうでもないけど、優しいし、巨乳だし、包容力がハンパ無いし。
女の子って、顔だけじゃないと思うのよ。