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出発準備をしてみよう

かゆいー!」

 美羽の声で目が覚める。

 痒い!

 痒い!痒い!痒い!

 一体、何だこれは?

 とりあえず、体中を掻きむしる。

「このベッド、硬くて臭いだけでも散々なのに、ダニまででるなんて!」

「本当です!臭すぎるのと、痒いので、全く寝れませんでした!宿代を無駄にしちゃいました!」

 普段なら美羽の悪口を嗜める陽菜も一緒になって文句を言っている。

 ボクも同じ気持ちだ。

 冗談抜きで、体中が痒くて、体中に赤いプツプツが一杯だぜ。

 そうだよな、街の状況、衛生観念を考えたら当然注意しないといけなかったよな。

 クソッ!最悪な寝覚めだ。

「とりあえず、出ましょう!」

 陽菜の言葉に促され、いそいそと身支度を整えて、宿を後にした。


「しかし、散々な目にあったわね。」

 美羽が身体を掻きながら悪態をつく。

「すみません。私が宿代をケチったばっかりに。」

 朝食を食べられる場所を探しながら、話をしている。

 ん?

 こころはあんまり身体を掻いてないな?

「こころさん、大丈夫?」

「ベッド、使ってない。」

 ボクとこころだと片言同士みたいだな。

 もう少し慣れてきたら、陽菜となら、会話らしい会話ができると思う。

 ベッド使ってないって、どういうこと?

「そう言えば、こころは臭いから嫌だって、板の上で寝てたもんね。それでか。」

 そうだったんだ。

「あー、歯磨きしたいし、洗顔も化粧もしたい。」

「結局、昨日は買い出しにも行ってませんでしたからね。」

 そうだ。

 ちょっとだけ、稽古をしてから、日が暮れる前に日用品の買い出しをしようと言っていたけど、結局、ボクのせいで行けなくなったんだよな。

 先に謝った方がいいよね。

「ごめん。」

「あー、気にしなくても良いよ。私らも疲れてそのまま寝ちゃったし。着替えも欲しいなぁ。下着だけでもいいから。」

 着替えの服は嵩張るし、こっちの世界じゃ高いし、みんな手作りだから、時間もかかるんで、暫くは我慢するということになった。

 年頃の女の子には、辛いだろうな。

「しかし、異世界って、もっと楽しい所だと思ってた。まだ二日目だけど、生活するのすらしんどいかも。」

「生活感。」

「生々しいというか、普通にリアルだよね。」

「しかも、いろいろと不便だしねぇ。気が滅入っちゃう。」

「大変。」

「遥人の所に行けてたら、違ってたんだよね…」

 陽菜から漏れた弱音が女子全員に伝染していく。

 遥人の所は騎士と一緒に冒険するらしいから、ボクらみたいに困って無いだろうな。

 それに、蓮の所だと、訓練は厳しいだろうけど、兵士と同じ扱いだろうから、裕福ではなくとも、多少は気楽だろうし。

 それに比べて、ボクらって、数日後の生活すら心配だもんな。

 生き抜いていけるのかな?

 気を抜いたら野垂れ死にが待っている、か。

 んー。

 誰が死んでやるか。

 巨乳と美女を目の前にして、童貞のまま死んでたまるか!

 ボクが引っ張ってやる!

 ついでに誰か惚れてくれ!

「筋力強化!筋力強化!筋力強化!」

 三人に筋力強化の魔法をかける。

 精神力強化の魔法もあるけど、自分にはかけられないから、効き目が分からないし。

 心には直接効かなくても、身体の調子が上がれば、少しでもマシになるんじゃない?

「身体からでも元気出してこ。」

 三人に笑顔を向ける。

 話すのは苦手だけれど、表情が乏しい訳じゃないぞ。

「そうだよね。一番年下の優くんに励まされてちゃいけないよね。」

 いや、励まされてよ。

「あー、もう、湿っぽいのは終わり。みんなもう行こ。」

「ありがと。」

「さー、ダラダラしてたら、夜までにセイルの村に着けないぞ!」

「早くスキル使いたい。」

 こころはまだ薬草ってのに触ってないから、スキルが一度も発動していない。

 だから、昨日は除け者みたいになってたのが、やっぱり悔しかったみたいだ。

 昨日、冒険者ギルドの受付のおっちゃんに教えてもらったとおり、旅の準備をしていく。

 まず、鞄だが、革の鞄は高い。

 そりゃ、目玉が飛び出るほど。

 ブランドバッグでもないのに、通貨価値を考えると、そんな値段だ。

 それに、リュックが無い。

 だが、さすが冒険者のいる街だ。

 冒険者用の鞄というものが売っていたが、麻袋に革の紐がついており、底の部分にを通して肩にかけれるようになっている物だった。

「登山用リュックがほしーよー。」

「この世界だと、特注しかないよね。だとしたら、時間もお金もすごいかかるよね。」

 必要な物を揃えていくうち、どんどん軍資金が減っていくが、生き延びるための必要経費だから、仕方無い。

 冒険者ギルドのおっちゃんがケチったら駄目なものとかも、色々と教えてくれたのもありがたい。

 しかも、陽菜は『相場』スキルが大活躍し、どんどん値切るだけでなく、テキパキと買い物を進めていく。

「値切って買うなんて、生まれて初めてだけど、思ってたより上手くいって良かった。」

「え?そうなの?すごく手馴れた感じだったよ。」

「陽菜エラい。」

 お、こころも褒めてる。

 あの表情だと、心の中ではべた褒めの筈だ。

 ボクには分かるぞ、こころ。

 下着もそれなりに買えたのも大きかったのかも。

 店員がボクにも売りつけようとしてたけど。

 ん?そう言えば何でボクがついていってたんだよ?

 こころは少し恥ずかしそうだったが、二人が平気なのを見て、すぐに慣れたみたいだった。

 危機感なさ過ぎじゃないか?

 いや、そこは、ボクに警戒していないと、善意に理解しておこう。

 ボクもちゃんと男物を2着買ってもらった。

 男物の下着は、トランクスというか、半ズボンみたいなのしかなかったけど。

 ちょっと裾を切って、トランクスみたいにしとくかな?

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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