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装備を整えよう

 教えてもらったとおり、冒険者ギルドの『職安』こと職業紹介窓口に向かう。

 薄暗く猥雑な感じのする町並みの入り口近くに冒険者ギルドの建物がある。

 建物といっても、石造りの屋根だけがあり、屋根の下に受付が設けられている簡単なものである。

 その周辺の柱に板が立てかけられており、その板に依頼書みたいなのが無数に貼り付けられている。

 どうも、依頼書を読む係り、いや、小銭代わりに食料などを貰っているので、そういう商売をしているらしい男もいる。

 利用率はかなり高いため、かなり識字率が低いみたいだ。

 元々、そんなに識字率が高くないうえに、大工や石工、土木工事の斡旋を行っているのだから、当然か。

 その受付の右側には、金か銀で細工をする職人、左側には、武器や包丁などを研ぐ職人が店を開いている。

 屋根の中には商店らしきものがあるが、その前の道には、ござの上に様々なものを並べている人が犇めき合っている。

 もはや、布切れのようなものから、片方だけの靴など、何で売り物になっているのか分からない。

 あとは。何の材料でできているのか分からない、食べ物らしきものなど。

 アレは、絶対に口に入れたらダメなヤツだ。

「うっわー。アレ、食べれるの?」

「臭い。」

 確かにな。

 こころが零したように、風呂自体の文化が廃れているうえ、食うに困っていそうな人間ばかり集まっている。

 そのうえ、食べのものの痛んだ臭いや、尿の臭いが立ち込めている。

 貧民街か?

 それにしては、活気があるし。

 もしかして、この世界では、これが平民の普通なのかな?

 なら、慣れるしかないか。

 まだ、王国から貰った軍資金が多少はあるから、しばらくはマシなものは食えるかな。

 その辺に並んでいる、謎な物体は口にしたくないな。

 美羽もこころもこの喧騒に怯んでいるが、陽菜は頑張って受付に向かう。

 さすがに、放ったらかしにはできないし、冷たい男と思われるのも嫌だから、陽菜についていく。

「ん、嬢ちゃんら、見ない顔だな。」

 カウンターには、柄の悪い中年が二人いるだけだ。

「これ、木田哲夫さんに書いてもらいました。」

「おう、テツオさんからか。」

 識字率は低いが、さすがに冒険者ギルドの受付をするぐらいだから読めるか。

「そうだ、王室からはどのぐらい金を貰ってきた?」

「全員で金貨20枚です。」

「なら、装備を買っても足りるな。まずは、冒険者証の交付だ。武器を持ったり、買ったりするには、これが必要だ。 強盗や殺人をした者はこの国では、武器の所持が禁止されている。冒険者証に魔法で賞罰が出るから、これを見せて犯罪歴が無いことを証明する。あとは、魔物などを倒すと、討伐情報が冒険者証に記録されるようになっている。まぁ、確認はここじゃないとできないけどな。そんなこんなで、魔物の討伐とかをするなら冒険者証が必ず必要になる。」

 そう言って、一般的なカードサイズの金属板を見せてくる。

「こっちに来な。」

 カウンターの内側に入ると、何やら魔方陣らしきものが書かれたテーブルの前に案内される。

 そして、金属板をテーブルの中心に置いた。

「この空の冒険者証に指を当てて、魔力を通せばカードの登録ができる。」

 まずは、陽菜からだ。

 人差し指をテーブルに置かれたカードに当てる。

「魔力を通すってどうしたら良いんですか。」

「大丈夫だ、触れば勝手に動く。」

 うっすらと、テーブルの魔方陣が光ったような気がする。

「おう、もう登録完了だ。見てみな。」

 そういって、テーブルからカードを取って、陽菜に渡す。

「あ、名前とかが書かれてる。」

 全員の冒険者証を作るのに、そんなに時間はかからなかった。

「装備は、中古で俺が見繕ってやるよ。そんで良いな。」

「はい。」

 え、陽菜、勝手に決めるの?

「みんなも、最初はそれで良いよね。」

「仕方ないか。」

 美羽がそういうと、こころもしぶしぶ了解したようだ。

 奥から男が武器を見繕って出してくる。

 ショートソードが一本、工事現場においてあるような長い柄の金槌が一本、それにナイフが二本。

「リーダーの嬢ちゃんには、ショートソード。『商人』のジョブでも扱えるはずだ。そっちのべっぴんさんには、ハンマーだな。それと、残りの二人にはダガーだ。魔術師には不要かも知らんが生活にも必要だから、持っておけ。それに唯一の男の子だしな。杖が欲しけりゃ、その辺の木の枝でも拾ってろ。魔法を強化するような杖は、目玉が飛び出るほど高いし、今は必要ないだろう。」

 どれもかなり使い込まれた感がある。

「それと、防具だな。」

 また、奥に引っ込んでいくと、革の胴?を持ってきた。

 いや、胴というよりかは、服みたいなのだ。

 半そでのTシャツみたいなので、後ろに紐が付いていて、それで締めるみたいだ。

 一人では着れないな。

「これなら、全員着けられて、スキルの邪魔にもならんし。安い。中古だから全部、新品の半額ぐらいだな。それでも、全員分揃えれば、金貨10枚は超えるぞ。清算は後回しだがな。」

 これもまた、使い古されたやつで、たくさんの傷跡が付いているし、切れたところを補修したものもある。

 おっちゃんが言うことを信じると、新品で揃えれば、今の所持金では足らないということか。

「次は、地図だな。」

 奥の棚から取り出してきたのは、さほど綺麗ではない紙に、かなり簡単な地図が記載されたものだ。

 内容もえらく雑だ。

 木版印刷で作られた地図のうえに、町の名前などが手書きで記載されている。

 範囲としては、ブリューニ島の南半分ぐらいが書かれてあるものだ。

「これで、銀貨2枚ぐらいはするんだが、全くこの辺りのことを知らないだろうから、要るだろ。」

「ちょっと高くないですか?」

「これでも、良心的な方だぜ。」

 まぁ、魔物を討伐してレベルを上げる目的のボクたちからすると生命線だ。

「分かりました。」

 陽菜が諦めて返事をする。

 しかし、ボクらは王国から少しは金を貰ってきたから良かったものの、普通の人間が冒険者になるなんて、ハードルが高すぎるな。

 武芸者の武者修行みたいなのしかいないのかも知れないな。

 腕があっても山賊や海賊になっちゃうと、賞罰が付くから冒険者にはなれないだろうし。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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