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後片付けをしましょう

「アンタたち、いつもこんな事してたの?」

 美羽に返り血や泥汚れがついているのは、何度か攻撃を受けて倒されたからなんだが、強化されていたため、ダメージらしきダメージは受けていない。

 ボクの方は転倒こそしていないものの、肉弾戦なので、返り血で汚れドロドロになっている。

「いや、これまでは陽菜が独りで戦ってたんだ。」

「えっ?陽菜が?」

「ずっと目が見えなかったから。」

「そ、そうだったよね。」

 美羽は微妙な表情をしている。

 周りを見渡すと夥しい屍が辺りを埋め尽くしている。

「それじゃ、魔核を集めよう。」

 腰に下げていたナイフを取り出し、美羽を促す。

 美羽が80体ぐらい、ボクが40体ぐらい倒している。

 これだけの魔核を魔石に変えて売ればひと財産だな。

 しかも、幾つかは魔核から既に魔石になるほど魔力が溜まっているものもあった。

 ゴブリンなんて十把一絡げのものと思っていたが、それなりに強い個体も混じっていたということか。

「美羽さん、最初から魔石になってるのがあったよ。強い個体とかいた?」

「必死すぎて分かんなかった。良い装備してるだけで十分手こずるし。」

「そっか。でも、今回はボクが倒し過ぎたかな?」

「冗談言わないでよ。」

「でも、カレンじゃ、そんなに強い魔物がいないから数をこなさないといけないし。」

「分かってるから。」

 ボクが言ったとおりカレンは魔物の数もそう多くないうえ、そこまで強い魔物もあまりいない。

 パンティアやガルディアは魔境に接しているため、そこから流れてくるし、直接魔境に向かえば魔物の数も強さも桁違いに上がる。

 ただ、そこまで移動するのに2か月、つまり往復4か月必要になる。

 その時間を考えれば、こちらで数をこなすほうが効率が良いし、今回はスピードが必要なのもある。

「まだその強化魔法に慣れてなかっただけだし。次は大丈夫だから。」

「じゃ、村に戻って報告だね。それと、死体の始末を手伝ってもらわなきゃ。」

「手伝う気なんて無いんじゃない?」

「まぁ、そうでも埋める場所を聞いたり、道具も借りなきゃいけないし。」

「そうだよねぇ。先に汚れを落としたかったんだけど、また汚れちゃうよね。」

 疲れからか、面倒くさそうだけと、このままゴブリンの死体を放っておけば、病気の蔓延や野犬や魔物の餌になるとか面倒が多い。

「埋めなくても、焼けば良いと思うよ。」

 陽菜がアドバイスしてくれる。

「そっか。」

「一体、今までどうしてたの?」

「坑道だと捨てる場所に困らなかったし、サイオールじゃ遺跡に放り込むだけだったし。パンティアの魔物の大発生の時は、毛皮を採ったりするから、みんなが片付けてくれてたし。」

「そっか。」

「優くん、私が報告ついでに油を貰ってくるよ。」

「じゃ、ボクは死体を集めて積んでおくから、美羽さんは森で薪を集めてくれる?」

「分かった。」



 ゴブリンの死体を農作業用のフォークで一箇所に積み終わってから、休憩していると、陽菜が村長とケインを連れてやってきた。

 美羽はまだ薪が足らなかったので、再び森に足を運んでいる。

「陽菜、油はあった?」

「信じてくれなくて、持って来れなかった。」

 陽菜の後から付いてきていた村長は唖然とした顔でボクと積み上げられたゴブリンの死体を交互に見ている。

「こ、これだけのゴブリンをお前たちだけで倒したのか?」

「ええ。」

 敢えて当然といった顔をすると、村長は気後れしているような表情を浮かべる。

「これで、128体です。上位個体もいますし、目撃されたゴブリンの群れは壊滅できたと思います。」

「地形を使って誘き寄せて殲滅か。あの女とお前だけでほとんど倒したってことか?」

 ケインが前に出てきた。

「いや、ボクは討ち漏らしを片付けただけで、ほとんどは美羽、あのハンマーを持った子が頑張りました。今は薪を拾いに行ってますけど。」

「そ、そうなのか。」

「まぁ、それより、今はこのゴブリンの死体を片付けないといけません。この数なんで穴を掘って埋めるのは現実的じゃないんで、焼きたいんです。油を頂けますか?」

「わ、分かった。すぐに届けさせる。」

「ちょっと待て。ゴブリンの巣はどうなった?」

 ケインが聞くのももっともで、繁殖力が高いため、巣に残る幼体まで確実に根絶させるというのがゴブリン退治の基本だ。

「大まかな場所は把握しています。明るいうちに戻るのは難しいんで、明日向かう予定です。それに、今の季節にこれを放っておくと大変なことになりますから。」

「ああ、そうだな。」

「それじゃ、ワシは油を手配する。」

「最低小樽1つ分ぐらい欲しいんですが、手に入りますか?」

 本当は大樽1つは欲しいところなんだけど、美羽に多めに薪を採ってもらっているところだし。

「まぁ、何とかなるか。」

 気が付くと、美羽が薪を抱えられるだけ抱えて橋を渡ってくるのが見えた。

 村長が油を誰かに持ってこさせるまでにかかる時間が一時間弱か。

 美羽に強化をかけて全力で走って戻ってくれば、少しだけ待たせるだけで済むかな?

「さっきは巣の後始末は明日にと思っていたんですけど、油が届くまでの時間があるんでやっぱり行ってきます。」

「俺も付いていこう。」

 ケインはそう言いながらボクを見る。

 断ると面倒だけど、付いてきてくれた方が村長も含めた説得は楽になりそうな気がする。

「ボクら速いですが、大丈夫ですか?」

「ああ。」

「美羽さん。少し休憩したら、ゴブリンの巣の掃除に行きましょうか。」

「えっ!?」

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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