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新しい自分の武器を試してみましょう

 美羽が迫るゴブリンの集団にハンマーを横薙にする。

 吹き飛ばされたゴブリンは集団の足を止める。

 その隙きをつくように、前に飛び出した美羽はハンマーを振るう。

 転倒している者の足を砕き、立ち上がろうとする者の横面を叩く。

 飛び掛かろうとしていた者には顔面を掬い上げ、左翼の者の足を砕き後続の敵の足を止める。

 既に30体が美羽によって倒され、森から伸びる橋は犇めき渋滞し始めた。

 橋からあぶれたゴブリンの中から川を渡ろうとしている者が出始めていたため、ボクは積んだ石を投げ始める。

 そう簡単には当たらないものの、2から3発に1発は命中しており、頭部に当たった者はそのまま沈み、そうでなくとも著しく進行が遅くなる。

 投石で12体を仕留めたところで、改めて美羽の状況を確認すると、隘路のため、今のところ囲まれはしていないが、屍を飛び越え飛び掛かる者も出始め、その荒い息遣いが聞こえそうなほど後退している。

 もう隘路は終わる。

 まだ、川にはゴブリンが見えるけど、もう美羽も限界に近づいている。

 ボクは再び仕込み杖を抜いて、討ち漏らしたゴブリンを待ち受けることにする。

 既にゴブリンたちは美羽の後にいるボクと陽菜には気付いていて、美羽を避けてボクらを狙おうとしている者もいた。

 そういった者を美羽は無理して追っている。

 それが、美羽の隙きにもなっている。

 このままじゃ、美羽が保たない。

「美羽さん!こっちに流れてくるのは任せて!」

 了解を目で合図を送ってくる。

 無理せず、美羽は攻撃を仕掛けてくるゴブリンに集中すると、ボクに向かってくるのが出始める。

 『スケールアップ』で強化した身体能力だと、仕込み杖で頭蓋骨も難なく貫通できる。

 3体ほど仕留めたところで、足元が狭くなるのが気にかかるようになり、突き刺してから、前方に放り投げるようにする。

 後に抜けようとするゴブリンに気を遣わなくなった美羽は少しだけ安定した感じがするものの、それも長くは続かないだろう。

 その様子を見ながら気を良くしてゴブリンを倒していたが、8体目で仕込み杖は折れてしまう。

「優くん。」

 後から掛けられた陽菜の声には、心配そうな雰囲気は感じられない。

「やってみる。」

 ボクはもう一度『スケールアップ』を重ねがけしてから、仕込み杖を捨てて拳を握る。

 何も考えずに身体が採った構えは腰を落とし深いものだった。

 気が付くと、軽いステップを踏んでいた。

 ボクが作られた理由の一つは、『スケールアップ』のスキルを開発すること。

 この『スケールアップ』は、陽菜では神に通用するような武具を作ることは難しいため、その身の力を直接強化するというのが目的だ。

 つまり、肉弾戦だ。

 ボクだって同じように使える筈だ。

 今日、陽菜と試しに使ってみることを話し合っていたのだ。

 幸いなのか、これを見越してなのかは分からないけど、ボクにはボクのベースになった加治屋かじや 優一ゆういちがしていた空手の記憶がある。


 行く。


 集団の真ん中に飛び込み、ゴブリンの顎を叩く。

 ジャブ、いや、『刻み突き』だ。

 最長の距離を最速で攻撃する。

 素手で肉体を拳で殴れば通常は拳を痛めるが、『スケールアップ』により手首や拳は護られている。

 手首や拳自体が護られているので、全体重と突進力を拳に込めることができた。

 拳を当てられたゴブリンは首をおかしな方向に向けながら後に飛んでゆく。

 構え直しながらゴブリンの武装を改めて見てみると、斧やショートソードが多い。

 兜を被っている者すらおり、最初に着いた集団より明らかに装備が良い。

 踏み込みながら正面のゴブリンの斧の腹を左手で受け流しながら、『逆突き』で胸当ての無い右肋骨の下を突き抜くと、ゴブリンは汚い臓器をぶち撒ける。

 『スケールアップ』による身体強化と組み合わせた空手。

 それは恐ろしい速度で不可能と思われるような間合いを一瞬で潰して相手を叩きのめすことができるものだった。

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 同じ世界を舞台としたもう一つの物語、『親父に巻き込まれて異世界に転移しましたが、何故か肉屋をやっています。』を同時に掲載しています。
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