異世界転移だ
10/2標準配色に戻し、タイトルを修正しました。
朦朧とした意識の中で、自分が神殿らしき場所にいることを認識した。
柱や神殿様式の建物が見えたからだ。
ここは?
そう疑問に思ったが、朦朧とする意識のなか、誰かに抱えられていることを認識したが、再びボクは意識を失った。
目を覚ますと、病院の大部屋のような場所だった。
ベッドが6台ある。
病院の大部屋みたいだな。
でも、ナースコールも無いし、スチールじゃなくて木でできたベッドが少しだけ豪華かも。
普段は布団だから、久しぶりのベッド歯少し嬉しいな。
ん?何でボク、ここにいるの?
慌てて記憶の糸を手繰るが、すぐには何も浮かばない。
怖いな。記憶がないなんて。
記憶喪失なんて、漫画の中のもんだと思ってたけど、実際になってみると怖い。
血の気が引いて、自分は真っ青な顔になっているだろう。
よく、漫画で「サーっ」という効果音が出るが、初めて納得できてしまった。
「おい。」
振り返ると、白い貫頭衣に白いパンツを履いた若い男が立っていた。
ハタチ前後かな?
茶髪に染め、やや長い髪をしている。
ちょっとホストっぽいな。
イケメンで年上だからって、偉そうにしやがって。
「は、はい。」
でも、口から出たのはそれだけだった。
偉そうだと思っていても、言えねえよ。
ボクより随分大きくて、強そうだし。
「お前、記憶は?」
何で、お前に、お前呼ばわりされないといけないんだよ。
「名前は言えるか?」
「梅本優。」
横から、これまた人の良さそうなイケメンが口を挟んできた。
「優くんだね。僕は如月遥人。そっちは藤堂蓮さん。宜しくね。」
「え、はい。」
「起きたのは、君で最後だよ。もうすぐ、状況説明をしてくれるみたい。行こうか。」
何だこの、馴れ馴れしいイケメンは。
ベッドから抜け出し、歩き出そうとした瞬間、ふらついてしまった。
すっとボクの脇の下に出が入り、支えてくれる。
やべー。
ちょっとドキドキしちゃったぜ。
女ならヤバかったかも。
「もう、大丈夫です。」
「さあ、行こうか。」
道中、白人としか思えない白衣のシスターとでもいう格好の女性とすれ違う。
どう考えても、異世界としか思えない。
来たか異世界。
自分が好きなのもあるが、お父さんと一緒にアニメを見ていたのもあるので、何となくイメージが湧く。
そういや、小説の方が推しで、先に原作を読んでいたから、良く説明を聞いていた気がする。
あれ?お父さんの顔が思い出せない。
「異世界か。」
つい、零れた呟きに、遥人が返す。
「どうも、そうみたいだね。もう、着くよ。」
礼拝堂に案内され、たくさん並ぶ椅子の一つに座る。
礼拝者用の椅子は100は超えていそうだ。
ボクらと同じような貫頭衣を着ているのが12人いる。
女子の貫頭衣は裾が長く、ワンピースのようにも見えるが、基本的なつくりは男子が着ているものとほぼ同じだ。
しかし、全員日本人か。
出来の悪いアニメみたいだな。
礼拝堂の奥の正面に、一際きらびやかな法衣を纏った銀髪の女性が見える。
美系、巨乳で文句のつけどころも無さそうだな。
その脇に中年の男女の実分の高そうな神官が左右に、更に簡素な法衣の神官が両脇に並んでおり、神官達と参拝者の座る椅子の間を隔てるように、白い鎧を着込んだ騎士が並んでいる。
凛としたよく通る声でよびかけてくる。
「皆様方、こちらの方まで。」
ん?
何で言葉が通じてるんだ?
日本語でないことは理解できているのに。
これが噂のご都合翻訳か。
それに、転移者全員がえらく従順だな。
反抗したりする人間がいる気配がないな。
もしかして、皆んな、異世界にワクテカか?
「私は神託の巫女、リムルと申します。神に選ばれし、十二人の使徒よ。」
とりあえず、巫女のお姉さんの話を聞いてみるか。
「新たな魔王の誕生が近づいていると、神託がありました。」
「ベタだな。」
藤堂の呟きが聞こえる。
この男、ツッコミキャラだったか。
「まさか、ステータスが出たりして。うわっ!」
脳筋っぽい男が突然、驚きの声をあげる。
まさか、出るのか?
慌ててボクも真似て、ステータスと念じてみる。
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名前:梅田 優
レベル:1
性別:男
ジョブ:なし
種族:人間
スキル:【固有スキル:献饌】
ステータス:
HP:28
MP:32
STR:15
VIT:15
DEX:15
AGI:25
MEN:15
LUK:15
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出た。
ステータスウィンドウが。
ボク以外の転移者も同じようにステータスを表示させているみたいで、皆、虚空を見つめている。
つまり、自分のステータスしか見れないって訳か。
もしかしたら、定番の鑑定スキルみたいなのを取れれば、他人のも見れるのかも。
しかし、この【固有スキル】って何だ。
これが、転移者用のチートスキルなのかな。
「皆様、ステータスについては、後ほど説明いたしますので、ご拝聴お願いします。」
巫女さんが止めてきた。
「神に選ばれた方々は、我々と異なり、この世界に来た際に神から特別な力を与えられます。」
チート能力だな。
巫女さんに言われて開いていたままのステータスウィンドウを確認する。
この【固有スキル:献饌】って何だ?
まず、漢字が読めない。
「それに加えて、神から示されたジョブであれば、他のジョブより大幅なステータスアップがされることになります。」
その説明の前に、ジョブとかその辺りの説明をしてくれよ。
その言い方なら、別のジョブも選べるということか。
「なぁ、巫女さんよ。そもそも、俺たちに選択権は無いんだろ。帰れるのか?報酬は?」
二名いるお付きの白い鎧を着た騎士が歩み出てくる。
「貴様!神託の巫女様に向かって、何たる口のききかたを!」
チャラ男は怯みもせず続ける。
「黙れや、そこのオッサン。アンタらには光栄かも知らねえが、俺たちにとっちゃ、関係もないのに勝手に拉致られて、命を懸けて戦えって言われてんだよ。奴隷と変わらんよな。この国じゃ、そんなことが横行してるのか?」
確かに、チャラ男の言うとおりだ。
帰れなければ、ずっとここにいる事になるし、ファンタジーに浮かれている場合では無いような気もしてきた。
「俺たちが初めてじゃないんだろ?」
「仰るとおりです。」
「前回に召喚された使徒様は何人かは健在にされておられます。」
何人かってことは、かなり死んでるってこと?
「それで、前の使徒は魔王を倒したのか?」
「はい。」
「と言うことは、魔王を倒しても帰れないって事なんだな。」
「遥か昔の言い伝えによりますと、元の世界に帰られた方もいらっしゃるようですが。」
「今は帰る方法も分からないってことだな。」
「はい。」
転移者達がざわつく。
チートで魔王を倒して、ハイさいならとはいかないのか。
「生存率は?」
お、ツッコミイケメン、聞きたいところ
を聞いてれるな。
「それについては、国の体制や魔王国の侵攻時期や場所によって異なりますので。」
誤魔化したな、いま。
「国の体制って何なんだよ。」
再びチャラ男が質問するが、爽やかイケメンがチャラ男を遮る。
「今からその辺りの説明をしてくれるみたいだから、落ち着いて聞こうよ。」
周りからの白い目に気付き、チャラ男が引いた。
「ジョブやレベルの説明と皆様のこれからの処遇についてご説明いたします。」