1章 第1話
「ここはーーー」
私は今、見たこともないような場所で突っ立っていた。
地面は土ではなく、黒く固めた物やレンガの様なのが敷き詰められて何処までも続いている。
建物も木造が基本のはずが、此処にはガラスや鉄、綺麗に磨かれた石の様な物で出来た四角柱や円柱の塔が、所狭しと建ち並んでいる。
辺りには人々が忙しなく歩いており、まるで川の流れの様に思えた。
その人々は皆、異様な服を着込んでいる。私自身も見慣れない黒い服を着ていた。
「私は何故、この様な場所に...それにこの格好は...」
現実では有り得ない事態に頭が追いつかない。
しかし、なんとか現状を理解しなければと思考を巡らせている時、後ろから笑っている様な声で話しかけられた。
「お前、突然止まったと思ったら急に頰をつねってどうしたんだ?」
私は驚き後ろを振り向くと、其処には2人の全く同じ黒い服を着た12〜14歳位の男がいた。
一人は自分より少し背が高く、メガネをかけている。
もう一人は自分と同じ位の身長で、どうやらこの男が私に話しかけてきたらしい。
「...あなた達はどちら様でしょうか?」
私は警戒と疑念が混じった声で尋ねた。
「お前、勉強ばっかしてるからとうとう頭がおかしくなったのか...
まあ、いつかそうなるんじゃないかとは思ってた」
と、冗談めかして笑いながら私の肩に手を乗せてきた。
もう一人の背が高い方も今のやりとりが面白かったらしく、顔を俯かせて笑っている。
私の肩に手を乗せた男が、揶揄うように話してきた。
「それでは自己紹介をさせていただきます。私は、駿河高校2年3組の山村創太と申します。この隣にいる男が同じ2年3組の東岡駿で御座います。我々のことは、創太、駿とお呼びください。大川望さま。」
そこにもう一人のメガネを掛けた男、駿が
「そのくらいにしておけよ。望が困惑してるだろ。」
と、笑っていた状態からなんとか立て直し創太を止めに入った。
今の会話に一つ聞き捨てならない事があった。それは名前である。私の名前は大川望なんて名前ではないのだ。
しかし、この状況下で私は一つの仮定を立てた。
そう、この世界は、自分の夢の中ではないだろうかと。
それならば、このとんでもない世界も、自分の名前が違うのも一応ではあるが納得がいく。
そこまで考察したところで、駿が少し慌てた様に、
「ヤバい!もうすぐ始業のチャイムが鳴るぞ!
早く行かないと間に合わなくなる!」
と、言いながら走るようにと急かしてくる。
創太もその言葉に焦りを感じた様だ。
「駿、望!走るぞ!!」
言うが早いか創太は走り出していた。
それに続き駿も創太を追いかける様にして走る。
私も此処で、私自身の事を知っているのであろう二人から情報を得るためにも、二人の後を追いかけた。